2026.06.01
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[エディターズノートvol.27] フィジカルAIって?

 人工知能(AI)技術の中でも特に最近、「フィジカルAI」に大きな注目が集まっている。「センサーなどで現実世界を認識し、それに合わせてロボットや自動車、各種機械を自律的に制御できるAI」といったような意味だ。

 記事を書く際に自分でもこの言葉を使うことはあるが、実はどうにもこの表現がふに落ちていなかった。否定するつもりはなく、嫌いな言葉でもない。むしろ好ましく思っているが、しっくりこない表現だった。  
 わが社は工作機械やロボットなどの「フィジカル(物理的な、物質的な)」な設備財を守備範囲にしている。そのため「フィジカルを伴わないAI」を前提としておらず、その対義語であり発展形である「フィジカルを伴うAI」にピンと来ていないのだ。

代表的な生成AIであるChatGTPで試しに生成してみた「生成AIのイメージ」

 フィジカルAIが注目を浴びる以前、2022年末から23年にかけて急速に話題になった生成AIは「入力されたプロンプト(命令文)に対応するデータを出力するAI」だった。「文章を書いて」と言えば文章を、「画像を作って」と言えば画像を生成してくれるが、全てコンピューター内だけで完結するものだ。
 その後の25年に米国NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・ファン最高経営責任者が「次に来るAI」としてフィジカルAIを紹介したことで、この言葉が一気に世界に広まった。

「『フィジカルAIのイメージ』のイラストを作って」との指示でChatGPTが生成したフィジカルAIのイメージ

 生成AIと比較するとフィジカルAIは、現実世界に物理的に直接影響を及ぼす点で大きく異なる。しかしロボット業界でも工作機械業界でも、物理的な作業をAIでいかにうまく遂行するかの研究は長年続けてきた。そう考えると、AI処理に適した画像処理装置(GPU)は搭載していなかったとしても「社会がその重要性に気が付くずっと前から、ロボットも含めたFA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)業界はフィジカルAIを研究してきた」と言えなくもない。

 私は最近、人に会った際に「フィジカルAIって何ですか?」とよく聞く。すると「私個人としてはこのようなものだと認識している」と各々さまざまな答えが返ってくる。それぞれが示唆に富み大変興味深いが、今のところ完全に統一された見解はなさそうだ。以前、勉強会である研究者に話を聞いた際も「明確な定義はまだないのではないか」とのことだった。

 取材をしていて常に思うが、設備財を扱うロボットやFA業界には真面目で誠実な人が多い。そのためAIを高度に使ったロボットや工作機械でも「これはフィジカルAIとはいえないのではないだろうか」と、この言葉を使うことをためらう人が多いだろう。
 しかしフィジカルAIは、AIエンジニア・ITエンジニアなど業界外の人たちがこちらの業界に興味を持つきっかけにもなり得る。乱用はよくないが業界の真面目さを考慮すると、まずは「先進的で自律的ならフィジカルAIといってしまおう」ぐらいの姿勢でもよいのかもしれない。

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