新製品が目白押し、鉄を切削加工できるロボットも登場/ファナック
ファナックは5月19日~21日の3日間、山梨県忍野村の本社で「第34回ファナック新商品発表展示会」を開催した。遠隔操作ロボットシステムや高速で24時間連続稼働が可能な棚置き型スカラロボットなど、新技術や新製品を多数展示した。中でも鉄系材料を加工できる切削加工用ロボットは大きな注目を集め、説明員に熱心に質問をする人が相次いだ。
従来比3.4倍の高い切削負荷に対応
特に注目を集めた展示の一つが、機械加工用のロボット「M-810」だ。これまでは切削加工向けに「M-800」を提案してきたが、M-800よりさらに高剛性のアームと、加工の反力を受けても動作軌跡を維持する独自技術で、従来比3.4倍の高い切削負荷への対応を可能にした。
ロボット切削はアルミ合金などの軽金属を加工するイメージが強いが、同ロボットなら鉄系材料も加工できる。会場では鋳鉄のミーリング加工のデモを披露し、話題を呼んだ。「工作機械ほどの剛性はないため高精度な仕上げ加工などはできないが、大型部品の粗加工ならコンパクトで費用対効果の高い加工システムを構築できる」とロボット研究開発統括本部長の安部健一郎常務執行役員は話す。
防水・防じん性の等級はIP67とどちらも非常に高く、切削油をかけながら加工するウェット加工にも対応する。動作範囲はM-800の1.3倍で、より大きい部品の加工にも活用できる。
ハンドリングロボットに食品仕様を追加
ロボットの需要が増える注目市場に狙いを定めた新製品も展示した。
その一つが食品産業向けで、小型ハンドリングロボット「LR Mate(メイト)/10-11A」と中型ハンドリングロボット「M-710/70-21D、50-26D」に「食品/クリーンルーム仕様」を追加した。
アームにはアメリカ食品医薬品局(FDA)の認証を受けた安全なエポキシ塗料を塗装し、手首フランジには衛生的なステンレス素材を使用した。全関節には万が一食品に混入しても害がない「NSF H1グレード」の食品機械用グリースを採用した。曲面を多用した外観で水滴がたまりにくいなど、形状にも工夫を凝らした。
「食品は需要がなくなることが絶対になく、人海戦術に頼ってきた作業も多いため潜在需要も大きい。食品産業の自動化は簡単ではないがそれを可能にする技術開発は進んでおり、ロボットの利活用が今後拡大する分野として期待は大きい」と安部常務執行役員は言う。
「高速・高デューティ棚置型スカラロボットSR-9iA-R」も会場で発表し、販売を開始した。これはコンベヤー間での小物部品の搬送を担うロボットだ。コンベヤーより高い場所に棚板を渡してロボットを設置し、棚板より下側にある部品を搬送する。通常の床置き型と比べて昇降軸の突き出しが少ないため、ハンド先端が揺れにくく、高速動作に向く。
同ロボットが適する用途の一つが、太陽光発電パネルの発電セルモジュールの搬送だ。会場では、次々に流れてくる発電セルモジュールを高速搬送し、その速度をアピールした。デモ時の搬送の1サイクルにかかる時間は0.765秒で、1分間に78個を搬送した。こうした高速動作を24時間持続でき、この処理能力は世界最高(同社調べ)という。
その他同社は工作機械用の制御装置や工作機械のメーカーでもあるため、工作機械の展示にもロボットを組み込み、ロボットによる自動化を積極的に提案した。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)