[ショールーム探訪vol.3]秘密じゃないけど秘密基地【後編】/ABB「アプリケーション・センター東日本」
制御技術が真骨頂
「FlexPicker(フレックスピッカー)」などピッキング用のパラレルリンクロボット専用の制御ソフト「PickMaster(ピックマスター)」は、ピッキング作業で主役級の働きをするという。「エンジニアが本気で喜ぶような感覚的な調整、追い込みができる」(玉西事業部長)。複数台のロボットを最適に統合制御することもできる。 またリアルタイム調整は、ロボットを稼働させながら、プログラムのパラメーター編集ができ、ロボットの動きを調整できる。これが現場のエンジニアにとても喜ばれるという。 ちょっとこれ、やってみてほしいくらいですよ――。 手だれのセンター長が、随分と気軽に声をかけてくれる。『できる人って簡単に“やってみろ”とか言うなあ』と、口には出さないが心ひそかに思いながら見ていると、目の前で展開されたのはあまりに簡単に動きを微調整されるパラレルリンクロボットたちの姿。 不均等に流れてくる対象物のピッキングを、精度やスピードなどを目視で確認しながら調整できる。素人目にもなかなかすごい――というほど世の中のピッキング現場を見たわけではないが、調整のしやすさには驚かされる。競合となるソフトも他にはないとのこと。いや本当にマニアックで便利そうだ。 「実はこの制御技術こそ、ABBというロボットメーカーの真骨頂」とセンター長がつぶやく。自身もABBのロボット技術にほれ込み、長年手がけてきた経験からの言葉だろう。 当然ながら、ロボットがどういう仕様ならば制御技術が生かせるかも考え抜かれ、豊富な経験で蓄積した知見やノウハウをロボットの構造や制御技術、ソフトに落とし込んでいる。
産業用ロボットはそれ単体では使えない「半製品」と言われ、さまざまな周辺機器と組み合わせ、システムとして構築して初めて機能する。それゆえにロボットメーカーと最終顧客との距離は離れがちだ。しかしABBはシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)などと一緒に、その距離を縮めんとする。そのための場がAC東日本というわけだ。 ここではロボットの作り手側と使い手側の、泥臭くも美しい協業が展開されている。 [取材記者から] 素朴すぎるが、歩いて帰る道すがら「なるほどなぁ」としみじみ感じ入った。食品などサイズの小さい対象物のピッキングに本気で取り組み、悩む人はAC東日本に行ってみるといい。難しい課題ほど楽しんでくれそう――、そんなことを思わせてくれる場所だった。 (ロボットダイジェスト編集部 芳賀 崇) 施設概要 名称:アプリケーション・センター東日本 所在地:相模原市緑区西橋本5-4-30 SIC-2、2212号室 予約連絡先:042-4523-6590