工場のデジタルデータを製品設計に生かす/安川電機
安川電機は今年3月、埼玉県の入間事業所にある「安川ソリューションファクトリ」で新設ラインを稼働した。生産性を高めるためデジタルデータの活用に取り組んでおり、2018年の工場立ち上げ以来さまざまなデータを集めて分析してきた。新たにラインを設置するにあたり、それまでに収集したデータを生産工程の改善に生かした。渡辺賢司工場長は「現場の課題を製品設計に反映することで、より自動化に適した生産体制が構築できる」と語る。
工場内データを活用した新設ライン
安川電機は今年3月、入間事業所の安川ソリューションファクトリにサーボモーターとサーボアンプの生産ラインを新設した。工場内データに基づいて従来の課題を解決しており、生産性をさらに高めた。
安川ソリューションファクトリは小型のサーボモーターとサーボアンプを生産する工場で、18年から稼働している。工場をセル単位で自動化してデータ管理する「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」のコンセプトを実践しており、サーボモーターとサーボアンプの「Σ(シグマ)-7シリーズ」を量産してきた。
生産工程を徹底的に自動化し、膨大なデータを処理できる体制を構築した。ソフトウエア「YASKAWA Cockpit(安川コックピット、YCP)」で、装置の稼働状況を可視化して分析する。さらに生産実績や品質の管理などをする製造実行システム(MES)も採用し、生産状況をモニタリングしている。
新たに立ち上げたラインでは「YRM-Xコントローラ」で、設備のデータを一元管理できるようにした。渡辺工場長は「工場の知能化が進み、より細かいデータも取得できるようになった。これまで設備の自動化に取り組んできたが、データの分析結果を製品の設計にも生かすことで生産の最適化を図った」と語る。
自動化に適した製品設計を
ソリューションファクトリの1階でサーボモーターを、2階でサーボアンプを製造する。1階は「ステータ組立」「本体組立」「エンコーダー組立」などのエリアに分かれ、本体組立のエリアはさらに複数の作業ステーションで構成される。作業ステーション内で垂直多関節ロボットや自動化機器が稼働し、段取り替えも自動で行う。
2階には「基板実装」や「ユニット組立」などのエリアがあり、無人搬送車(AGV)も活用してサーボアンプを作る。
新設ラインではΣ-7と新機種「Σ-Xシリーズ」を混流生産できるように、1階の組み立て工程を工夫した。作業ステーション間をつなぐコンベヤー上を、部品やジグ(補助具)を載せたパレットが動く。このパレットの構造を、2つのシリーズに適用できるように設計変更した。
またサーボアンプの製造工程で発生していた不具合を、Σ-Xシリーズの設計変更で解決した。異なる素材の部品を組み合わせるかん合工程を自動化すると、スムーズにはめ込めないケースがあった。人手なら組み合わせる際に部品同士の角度や向きを調整できるが、一定の動きを繰り返す自動化設備ではそれが難しい。そこでカメラやセンサーで製造時のデータを取得し、不具合の原因を究明した。かん合時に部品が引っかかってしまう位置を特定でき、自動ではめ込みやすいような構造に設計した。
他にシーリング材のタンクを大型化し、補充の頻度を減らす工夫も加えた。渡辺工場長は「段取りや補充、突発的な機械の停止などで発生する、設備の非稼働時間を削減するように改良した。革新的に効率が良くなったわけではないが、データを設計に生かすことで従来の課題を確実に解決できた。新設ラインの稼働で生産性は2割ほど高まる」と話す。
同じ企業の記事
>>[注目製品PickUp!Vol.5]最小、最軽量の持ち運べる6軸ロボット【前編】/安川電機 「MotoMINI」
>>[注目製品PickUp!Vol.5]最小、最軽量の持ち運べる6軸ロボット【後編】/安川電機 「MotoMINI」
>>[特集FOOMA JAPAN]食の上流も自動化、最前線のエッセンスを会場で/安川電機
>>「人と機械の共生」で自動化/安川電機
>>棚置きロボを発売、省スペースで高密度配置可能に/安川電機
>>貿易摩擦と新型コロナで大幅な減収減益/安川電機
>>高精度、低振動の半導体ウエハー用ロボットを発売/安川電機
>>【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.2]バーチャルと現実を連携/安川電機 小川昌寛 取締役常務執行役員
>>協働ロボットの共同研究講座を開設/安川電機
>>研磨やダイカスト、食品向けの仕様を追加/安川電機
>>溶接ロボット「MOTOMAN-SPシリーズ」に高速作業タイプを追加/安川電機
>>欧州スロベニアに産業用ロボットの新工場が完成/安川電機
>>上腕部にケーブルを内蔵できる多用途向けロボットを発売/安川電機
>>水やほこりに強い協働ロボットを発売/安川電機
>>2021年2月期中間決算は減収減益、下半期の回復に期待/安川電機
>>パレタイズ用ロボット、4機種を発売/安川電機
>>防じん・防滴仕様や食品仕様の協働ロボなど発売/安川電機
>>小型ロボットのラインアップを強化/安川電機
>>オンラインイベントでスマート工場提案、2月末まで/安川電機
>>モーターをセンサーに、異常検知などが容易に/安川電機
>>小型塗装ロボをより使いやすく/安川電機
>>20年度は減収も増益を達成/安川電機
>>レーザー溶接パッケージを新たにラインアップ/安川電機
>>可搬2倍の協働ロボが登場!/安川電機
>>農業を産ロボで自動化! JA全農との取り組み加速/安川電機
>>ロボット売り上げ32%増、通期見通しも上方修正/安川電機
>>ロボットを直感操作、タブレット型ペンダントを協働型以外にも/安川電機
>>[国際ロボット展 特別リポートvol.20]自律して動くロボットが主役/安川電機
>>協働型に30kg可搬登場! パレタイズに使いやすく/安川電機
>>中間決算は売上収益、営業利益ともに過去最高/安川電機
>>熟練作業者の動き・力加減を直接ロボットに教え込む/安川電機
>>新社長に小川昌寛専務が昇格/安川電機
>>自動車塗装用のドア開閉ロボット発売、設備コストを削減/安川電機
>>マスク外し、新社長とともに入社式/安川電機
>>売上収益も利益も過去最高、2023年2月期決算/安川電機
>>新中期経営計画「Realize 25」を開始/安川電機
>>相手は常に顧客であり市場/安川電機 小川昌寛社長
>>強みをコンセプトの実践につなげる/安川電機 岡久学ロボット事業部長
>>[人事]岡久学ロボット事業部長がロボット工場長も兼任/安川電機
>>部品調達が正常化し、上半期は過去最高の業績/安川電機
>>[2023国際ロボット展リポートvol.7]次世代ロボット発売、メイン展示は具体性増す/安川電機
>>【新春特別インタビュー】ロボット市場は次のステージへ 本気で未自動化領域に挑む/安川電機 小川昌寛社長
>>i³-Mechatronicsを実現するコントローラーソリューションを展開/安川電機
>>キュウリの葉かき作業ロボット、本格導入へ/安川電機
>>桜の開花とともに82人が入社/安川電機
>>売上収益が過去最高、24年後半の動きに備える/安川電機
>>アステラス製薬と新たな細胞医療プラットフォームの構築に向けた覚書を締結/安川電機
>>ジェイテクト製PLCと直接接続できるコントローラーを発売/安川電機
>>通期見通しは下方修正、次世代ロボットは成長のエンジンになると確信/安川電機
>>FSW対応で切削にも使える高剛性ロボットを発売/安川電機
>>1t可搬のスカラロボット発売、EVバッテリーの組み付けに/安川電機
>>最先端を常にキャッチアップ、セル制御を新たな段階へ/安川電機 小川昌寛 社長
>>トヨタと共同でロボット溶接の新工法を開発/安川電機
>>25年2月期は受注伸びず減収減益、今期は反転増収へ/安川電機
>>高重量化・密集化に対応した自動車製造向けロボットを開発/安川電機
>>米国ウィスコンシン州に新拠点設立/安川電機
>>省スペース・ロングリーチの小型ロボットを発売/安川電機