• インタビュー
2024.01.05
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【新春特別インタビュー】ロボット市場は次のステージへ 本気で未自動化領域に挑む/安川電機 小川昌寛社長

工程の変化を受け入れる

iREX2023で変種変量生産を模したデモを披露

――iREX2023では、実際の現場に近い事例を展示しました。

 下膳作業がその一つです。食事後のトレーは、皿が重なっていたり、食べ残しやティッシュが置かれているなど、物の配置も数も千差万別です。物を認識して仕分け、ごみは廃棄し、食器を食器洗浄機に効率的に並べるには、トレー上の状態によって工程を自律的に変化させられるロボットでなければできません。また、物が残っていると分かるとは、何が残っているのかが分かることです。つまり、食べ残しの情報を得られるため、フードロスの削減にも貢献できるわけです。

――つまり、工程の変化にティーチングレスで対応できると。

 プログラムの入力をティーチングと定義するなら、その通りです。もっとも、タスクを指示するためのコーチングや人工知能(AI)の学習もティーチングの一環とするなら、今後も何らかのティーチングが必要でしょう。展示会では技術的な部分をあえて強調していないのですが、自律的な適応にはビジョンセンサーやAIは不可欠です。デモを見た方には「こういう仕事ができるようになるんだな」と直感的に理解してもらいたい。どのように実現したかは、二の次なんです。展示会のスタッフにも、できるだけ技術用語を使わずに説明するように頑張ってもらいました。

初めの一歩を大切に

――確かに、ソリューション提案に力を入れる企業が目立ちます。

 従来の提案は、ソリューションというよりもアプリケーションに近かったように思います。お客さまが求める「こと」に応じてソリューションという「もの」を開発し提供する以上、ソリューションは現場の数だけあります。人の雇用で生産量を調整するのではなく、ソリューションで変える。それこそわが社が長年掲げてきたi3-Mechatoronics(アイキューブ・メカトロニクス)の概念です。しかし、実現する技術がなければ概念止まりです。ある程度環境の変化を許容できるモートマンネクストは、それを実現する可能性を持っており、ロボットの市場と技術を次のステージに押し進める第一歩になってほしいです。

――モートマンネクストを普及させるには。

 まず、既存のモートマンとモートマンネクストが競合するようなことがあってはいけません。それは、モートマンネクストをうまく使えていないということであり、自動化領域を拡大できていないということですから。お客さまにモートマンネクストを理解してもらい受け入れられるには、数年はかかるでしょう。最初は小さくても成功事例を積み重ねることが重要です。初めの一歩さえ踏み出せれば、あとは早いと思います。

 

(聞き手・八角 秀、写真・松川裕希)

 

おがわ・まさひろ

1987年九州芸術工科大学(現九州大学)工学部卒業、安川電機製作所(現安川電機)入社。2004年ロボティクスオートメーション事業企画部長、06年ロボット事業部ロボット工場開発部長、07年新規ロボット事業推進部長、09年新規ロボット事業統括部長、10年ロボット技術部長。10年米国安川米州統括。12年執行役員、16年ロボット事業部長、19年取締役、20年常務、22年代表取締役専務。23年3月より現職。1964年生まれの59歳。

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