【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.2]バーチャルと現実を連携/安川電機 小川昌寛 取締役常務執行役員
デジタルツインをさらに推し進める
――いくら経済の動きが鈍くても、技術開発は止めるわけにはいきません。
開発の大きな方向性は、バーチャルと現実との連携をいかに現場で実行するかです。昨年の国際ロボット展で披露した、実際の製造ラインをバーチャル空間に同期させたデジタルツイン(高度なシミュレーション)をさらに推し進め、そこに現場のサポートツールを付加するイメージです。しかし、こうした方向性は顧客の生産現場に根付いているであろう企業文化の変革をも意味するので、浸透にはそれなりに時間がかかるでしょう。
――具体的にはどのような形で製品化するのでしょうか。
まず、ACサーボモーターやロボットを一括制御できる「YRMコントローラ(仮称)」の開発を加速します。製造現場で発生する各種データをここに集約し、リアルタイム性や同期性を持たせることが可能です。では、それを使って何をするか。目標は、事前に全ての手順を決める「シーケンシャルな制御(連続制御)からの脱却」です。
――詳しくお願いします。
一般に、何かを作るためには、装置やロボットを買って、エンジニアが加工の順番を考えて、現場に並べます。特定の場所に固定された装置に材料が送られ、加工され、次の工程に送られ、製品ができる。これがシーケンシャルな制御の考え方です。ところが、量産ではなく多品種の変量生産となると話は変わってきます。設備の能力を最大限引き出すことと多品種に対応できる柔軟性とを両立させなければならないからです。だったら、設備の制御はシーケンシャルではなく自律分散型にして、能動的にさまざまな物を作らせる方が最終的に生産性は高くなる。要するに、設備がそれぞれ自分で考えて働くようになれば、作る物の品種や量に縛られることもなくなるわけです。
――理屈としては確かにそうですが、実現可能なんでしょうか。
次世代通信規格(5G)、モノのインターネット(IoT)、インダストリー4.0、クラウド、人工知能(AI)、デジタルツインなどのキーワードで表現されるさまざまな情報通信技術が発達すれば、個々の設備の自律性を高めるのは可能になります。そこで、それらの頭脳同士をコーディネートするYRMコントローラが重要になるわけです。これが無いと現場が無法地帯になるというか、生産管理ができませんからね。実際、多品種生産は設備稼働率を上げるのが難しいのですが、自律分散型に移行すれば、品種がたくさんあっても設備稼働率を最大化できるようになります。さらには協働ロボットの出現で、ロボットは安全柵から解放されました。今後は自走や移動の概念も見直されるでしょう。
――新型コロナ禍が終息した後の世界ではロボットの需要はどう変わりますか。
まず、「人手にだけ依存する生産形態にはリスクがある」との考え方が進むとみています。これまではロボットの導入は品質の観点で語られることが多かったのですが、事業継続計画(BCP)の意味でも、ロボットへの期待はじわじわ高まるでしょう。そうした期待に応えるのがわが社のミッションです。来年の国際ロボット展では面白いものをお見せできますよ。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角秀)
小川昌寛(おがわ・まさひろ)
1987年九州芸術工科大学(現九州大学)工学部卒、安川電機製作所(現安川電機)入社。2004年ロボティクスオートメーション事業企画部長、06年ロボット事業部ロボット工場開発部長、07年新規ロボット事業推進部長、09年新規ロボット事業統括部長、10年ロボット技術部長。10年米国安川米州統括。12年執行役員、16年ロボット事業部長、19年取締役、20年常務。1964年生まれの56歳。
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