生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.07.03

インタビュー

【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.3]BCPが新たな価値に/MUJIN 滝野一征CEO

独自の人工知能(AI)技術を駆使した自動化システムを提供するMUJIN(東京都江東区、滝野一征最高経営責任者<CEO>)。「今回の新型コロナウイルスをきっかけに、自動化に新たな価値が加わった」と滝野CEOは話す。人海戦術に頼ることが難しい中で、事業をいかに継続、拡大するか。ロボットを使った自動化システムを導入していたか否かで明暗が分かれた。今後、自動化市場はどうなるのか、ウェブインタビューで滝野CEOに聞いた。

増える引き合い

――まずは御社事業の現状について教えてください。
 今手掛けているのは、半年前や1年前に決まった案件です。打ち合わせや商談が遠隔になるなど多少の不便はありますが、事業に大きな影響はありません。

――新規の引き合いは?
 わが社は、工場の工作機械などを自動化する 「FA(ファクトリーオートメーション)」と、倉庫や物流センターを自動化する「物流」の2分野で展開しています。先が見通しにくい状況ですので、FAの引き合いは減少していますが、物流は大きく増えています。

MUJINが提案する物流向けシステム(写真は「2019国際ロボット展」)

――なぜですか?
 今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、トイレットペーパーが店舗の棚からなくなったのは記憶に新しいと思います。あれは物流が追い付かなかったことが原因で、他にも家にいる時間が増えたことで日用品の物流量は増え、またインターネット通販などの物流量も大幅に伸びています。これまでならアルバイトを増員して対応していた物流企業でも、コロナの懸念がある中で人の増員はなかなかできません。物流ニーズは膨れ上がっても、対応できる物流量はむしろ下がっている。そこで、人を増やさずに物流量を増やせる自動化が大きな注目を浴びています。実際に、コロナ騒動が始まる前にMUJINのロボットシステムを導入していた企業では、物流量の増加に対応できた事例がいくつもあります。

1.5倍の物量に対応

坂場商店が導入したMUJINのロボットシステム

――どんな事例がありますか。
 日用品を扱う物流倉庫では、コロナウイルスの影響で、トイレットペーパーや消毒液などの需要が増し、物流量が一気に増加しました。こうした製品を扱う大手物流企業だけでなく、中小企業でもMUJINのロボットが稼働し、コロナ禍での物流に貢献しています。例えば、社員数60人ほどの茨城県のホームセンター向け日用雑貨卸である坂場商店(水戸市、坂場辰之介社長)は、箱の積み下ろしロボットを導入していた結果、残業を抑制しながら平常時の1.5倍の物量をこなしています。

事前の商品登録が不要で、複数種類の混載にも対応(坂場商店の導入事例)

――同業他社が対応しきれない状況下ですから、自社の売り上げが確保できるのはもちろん、取引先からも喜ばれそうです。
 まさにその通りで、コロナ禍でも安定稼働が可能な企業として信頼感が高まったとの声をいただいています。コロナ禍の前から物流業界では人手不足が深刻で、必要な人手を集めるのに苦労していました。努力してようやく採用しても、コロナウイルスが感染拡大する中では満足に出勤できず、万が一感染者が出たら事業継続にも支障が出ます。そうなると、事業を安定して続けるには自動化しか道はありません。これまで、自動化のメリットは、生産性の向上や、省人化でした。そこに、BCP(事業継続計画)という新たな価値が加わったと考えています。自動化は、感染症の拡大など、有事の際に事業を継続する対策になります。消火用のスプリンクラーを「必要になる日が来るか分からないから設置しない」という経営者はいません。ロボットも同様に、事業リスクの管理の一環としての導入が増えそうです。

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