2026.02.02
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私自身がワクワクする/安川電機 小川昌寛 社長

安川電機はロボットと人工知能(AI)を組み合わせた「AIロボティクス」に力を入れる。昨年12月の「2025国際ロボット展(iREX2025)」でもAIとロボットを組み合わせたシステムの展示に大きな面積を割いた。製造現場やオフィスの自動化の“一歩先の未来”を示すデモンストレーションで、小川昌寛社長自身もその展示を見て「ワクワクした」と話す。AIでロボットはどう変わるのか、AIロボティクスの最先端を走る安川電機の小川社長に展望を聞いた。

(聞き手 八角 秀:ロボットダイジェスト編集長

緩やかな回復の年に

――まずは今年の見通しについて教えてください。
 今年は緩やかな右肩上がりの一年になると考えています。ロボット事業は安定して堅調に推移する見込みです。産業用ロボットの大きなユーザーである自動車業界は設備投資を何年間も抑えてきましたから、そろそろ動き出すでしょう。ロボットの導入台数は「日本の自動車産業の元気さ」を示す一つの指標になると考えています。次世代自動車の方式はどうなるのか、関税はどうなるのか、こうしたことに影響され設備投資がしにくい状況が続きましたが、今後は設備投資に踏み切る企業が増えると期待しています。

――AIロボティクスが今大きな注目を浴びていますが、この影響は? 
 AIはロボットの普及を加速させる要素になると考えています。AIロボティクスの分野だけで見れば、今年、来年、再来年と高い成長率が続くでしょう。しかし、わが社単体で見ても業界全体で見ても、数年でロボット事業やロボット産業全体に大きな影響を及ぼすほどの数量になるわけではありません。協働ロボットも大きな話題になりましたが、いまだにロボット市場全体を大きく押し上げるほどの存在にはなっていません。AIロボティクスも同じで、新しい領域を開拓するロボットとして非常に重要なものではありますが、同時に「現実的な視点」も持っておくことが大切だと思います。

「NEXT」は新分野から

モートマンネクストの「気の利いた箱詰め」システム。軽くて割れやすいものは上に入れるなどAIが判断する

――昨年12月の国際ロボット展では、次世代産業用ロボット「MOTOMANNEXT(モートマンネクスト)」を多数展示して大きな注目を集めました。
 モートマンネクストはAIロボティクスを象徴する製品で、先ほど述べたようにすぐには産業用ロボット事業全体を押し上げる規模にはなりませんが、「今後マーケットを拡大する大きな切り口になる」と考え、力を入れています。自律的に動作できるAIロボットを開発したいとの思いは昔から持っており、私の長年の思いを形にしたものです。事業化に必要な要素や状況がそろったタイミングで2023年12月に発売しました。

――発売して2年がたち、手応えはいかがですか。
 ひと言で言えば「想定通り」ですね。モートマンネクストは新機軸の製品ですから、普及に時間がかかることは分かっていました。既存のロボットユーザーはAIロボティクスへの理解は早く、「何ができるのか」をいろいろと考えている企業も多いのですが、モートマンネクストが現場に浸透するまでにはどうしても時間がかかります。従来のロボットで自動化してきた実績がありますから、それは当たり前だと思います。そのため、まずは既存のロボットユーザーではなく、ロボットを使ったことがないユーザーに積極的にアプローチしています。

――ロボットを使い慣れた企業ではなく、あえてロボットに不慣れな層に提案しているのですね。
 AIは「従来できなかったことをできるようにするツール」ですから、これまでロボットを使ったことがない企業や業界との相性はとても良いです。提案する上では「モートマンネクストがどのようなモノか」ではなく、「モートマンネクストでできるコトはなにか」を伝えることが肝になると考えています。

――ロボットをあまり使ったことがない業界の反応はいかがですか。
 「モートマンネクストでどこまでできるか」を見極めてもらうための検証や実証には時間がかかりますが、納得してもらえる成果が出せれば、その後の導入はスムーズです。新しいユーザー企業や新規業界との付き合いが増えており、これは良いことです。国際ロボット展で披露したシステムも、こうした流れを加速させることを狙ったものです。

AIでこう変わる

会議室を掃除して研修用の備品を確認するロボット

――今回の国際ロボット展の展示で重視したことは?
  会場では「ロボットが進化しました」とはあえてアピールせず、「こんな事ができます」とだけアピールしました。重要なのは「モノよりコト」だからです。会場では品種・生産手順の異なる複数種類の製品の組み立てデモを行ったほか、製造現場ではなくオフィスでの作業を自動化するシステムも展示しました。どちらもAIとロボットが組み合わさった未来像を示すもので、私自身もあれを見てワクワクしました。長年ロボットに携わる中で、あれほどワクワクしたのは久しぶりです。これからも製造業はもちろんのこと、物流や小売、サービス業など多様な人がロボットも含めて現場作業を考えられるように「実現性のある提案」をしていきたいです。

――AIロボティクスや、現実世界を把握しながら適切な動作ができる「フィジカルAI」は、御社が掲げてきたコンセプト「i³ -Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」とも相性が良さそうですね。
 短い言葉で伝えることはとても難しいのですが、わが社が掲げてきたアイキューブメカトロニクスとAIロボティクスの取り組みには完全な一貫性があります。どちらも蓄積された「デジタルデータの湖」の中で「コト」が生み出され、われわれのロボットやモーションシステムが現実世界にそれを反映させる役割を担います。

双腕で柔軟物も器用に扱い梱包作業をするNHC10DE

――AIとヒューマノイド(ヒト型)ロボットの組み合わせを提案する企業も増えていますが、ヒト型ロボットは今後普及しますか?
 例えば10年後の2035年になれば、ヒト型ロボットが実用化されることは十分あると思います。AIロボティクスをより身近に感じてもらうには、ヒト型であることが一つの鍵になるかもしれません。しかし、昨今流行している二足歩行が必要か否かを問われれば、多くの人が「不要」と答えるでしょう。下半身は車輪でも良いと思いますが、「双腕で安全柵なしで使えるロボット」は普及が期待できます。国際ロボット展でも協働型で双腕タイプの「モートマンネクストNHC10DE」を発表しました。二足歩行のヒト型ロボットは見栄えがよくイベントでの集客力もありますので、まずはそちらにヒト型ロボットの認知度をけん引してもらい、最終的に現場では車輪で駆動するタイプに落ち着くと考えています。二足歩行ロボットが実用化し普及する時代がもし来るとしても、まだまだ先の未来になるでしょう。

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