[ショールーム探訪vol.3]秘密じゃないけど秘密基地【後編】/ABB「アプリケーション・センター東日本」
ロボットダイジェストの記者が、読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第3回は、ABB日本法人(東京都品川区、中島秀一郎社長)の「アプリケーション・センター東日本」(AC東日本)を訪れた。所在地は相模原市緑区の産業創造センター(SIC)内。ショールーム機能ももちろんあるが、それ以上にロボットのアプリケーション(応用技術)の開発拠点でもある。
食品向け、特に強い
AC東日本で扱う案件は食品分野向けが特に多い。ピッキング対象物はベルトコンベヤー上をバラバラの間隔で流れてくる。その位置と向きを画像センサーで認識し、制御装置がロボットをタイミングよく動かす。 実際にそれを見せてもらうと、高速のピッキング作業が展開された。第三者的な視点では、これだけでも十分におもしろく、感心させられる。だが、AC東日本の持ち味はここから。 不均等に流れてくる不定形の対象物(冷凍食品の唐揚げなどを思い浮かべてみれば、一つ一つの姿かたちが決して同じではないことがわかるだろう)を、実際に持ち上げることができるかは、テストしてみないと分からない。 そこでAC東日本でテストをするわけだが、口だけではないことは奥にある高価そうでしっかりした冷凍庫の存在からも分かる。その中には、最終顧客である食品メーカーの冷凍食品(ギョウザや唐揚げなどなど)がぎっしり詰まっている。 食品分野ではロボットの導入が遅れていると言われる。大きな理由の一つが、ピッキング対象物が不定形で軟らかい物が多く、ピッキングの難易度が高いことである。その難易度の高い食品関連の案件に、近年は年間100件近いペースで取り組み、知見やノウハウが蓄積できている。
とは言え、ロボットの先端に取り付ける機器(エンドエフェクター)やロボットハンドの爪を、最終顧客の要望やピッキング対象物に合わせて開発するのは、泥臭い作業だ。「どうすればうまくいくか」を延々と考え、思いついたアイデアを試す。ダメならまた考えての繰り返し――。 こうした話には聞き覚えがある。記者がよく取材に行く、製造現場で聞かれる泥臭さだ。同じような話を、スイスABBの日本法人のアプリケーション開発拠点でも聞けるとは!