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2020.04.24

連載

[SIerを訪ねてvol.13]メカもロボットもお任せ【後編】/古賀機械製作所

古賀機械製作所(堺市美原区、古賀弘司社長)はもともと、自動車部品メーカー向けの専用機や自動機にロボットを組み込むことで、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としての歩みを始めた。古賀大輔専務は「専用機や自動機にうまくロボット組み込むことで、汎用性を持たせ、設計のスピードアップも図れる」と話す。ショールームや新工場などに見合う実績を作ったり、ベテランの技術を継承し若手を育成することなどが、今後の課題だ。

ロボットで開発の工数を削減

 専用機や自動機では、同じ製品を大量に加工し、搬送する。物をつかんで動かす部分は、基本的には変わることがない。自動車部品などの大量生産に向いた設備だが、時代とともに1種類当たりの生産量は減り、品種は増加。設備に汎用性が求められるようになった。
 さまざまな形や大きさの製品・部品を作る設備では、従来のようにメカニカルな機構だけで対象物を扱うのは難しい。そこで、プログラムを変更するだけでさまざまな物に対応できるロボットを設備に組み込んだのが、古賀機械製作所のSIerとしての始まりだ。

 古賀大輔専務は、「ロボットを使えば、従来のように複雑なメカ設計をする必要がないので、開発の工数を削減し、仕事の回転を早めることができる」と話す。設計費を低減できる分、トータルコストを低減できる場合もある。2018年度の売り上げは約6億5000万円で、ここ数年は増加を続けている。
 10年前は1000万円を超えるシステムの受注は少なかったが、今では2000~3000万円のシステムも多い。請け負う装置の規模が大きくなり、ロボットを複数台使う工程集約型のシステムを製作することも増えた。

技術者の育成急ぐ

 目下の課題は技術者の育成だ。18年から19年にかけてショールームを開設したり新工場を稼働させ、生産能力は向上したが、設計能力を向上させるのは容易ではない。現在ロボットを使った自動化システムに携わる設計者は5人いる。そのうち、特にロボット関連の案件を中心に担当するロボットチームのメンバーは3人で、30代が2人、20代が1人だ。

 古賀専務は「今後、20代、30代の若手がどれだけ技術を吸収できるかが課題」と語る。同社は医薬品を除くさまざまな業界向けのシステムを開発してきた実績があり、設計者も幅広い知識や経験を積んできた。
 「それこそ、製品そのものや作り方については顧客以上に詳しくなることもある」という。その知識やノウハウを若手に引き継ぐ。

 「今すぐ解決することはできないが、大きな課題だ。父である古賀社長も『10年やって入口かな』と常々語っている。それぐらい、本当の技術やノウハウを伝えるのは難しい」と古賀専務は話す。ロボットとさまざまなメカ的機構の両方を使いこなす現在の熟練設計者であっても、ロボットを使わないメカ設計ではまだ先人には及ばず、それほど奥が深いという。

  • 古賀専務は「今でも、メカの設計ノウハウがわが社の基礎を支えている」と話す

  • ロボットを組み込んだトランスファーラインも開発した

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