[直前特集RTJ2026 vol.2] 協働やフィジカルAIに注力/ファナック
ファナック(F49)はロボットテクノロジージャパン(RTJ)で最大規模のブースを構え、人工知能(AI)技術の一種であるフィジカルAIや、協働ロボット「CRXシリーズ」の新たなアプリケーション(使い方)などを提案する。「昨年の国際ロボット展(iREX)で注目を集めた新製品や最新システムは勢ぞろいするが、この半年でさらに進化した展示もあるため、iREXに来場された方もそうでない方もぜひ会場でご覧いただければ」と山口賢治社長兼最高経営責任者(CEO)は話す。
CRXのアプリケーションが拡大
――6月11日からRTJが開催されます。人手不足を背景にロボットが注目を浴びていますが、実際の景況感はいかがでしょうか。
米国や中国が市場をけん引し、産業用ロボットの需要が伸びています。また中国などと比べれば規模はまだまだ小さいですが、インドも好調です。欧州は依然として低水準ですが、少しずつ回復が見えてきました。一方、国内向けはあまり活況とは言えませんが、いずれは需要が顕在化するとみています。国内では明るい話もあり、近年はさまざまな産業で「新たな自動化を追求する動き」が活発化しています。以前からロボットを導入してきた企業であっても、新たな使い方を開発してこれまで自動化してこなかった工程まで自動化しようとの取り組みが増えています。その際によく使われるのは協働ロボット「CRXシリーズ」です。安全柵なしで使えるため、スペースにあまり余裕がない日本の現場にとても適しています。
――協働ロボットのアプリケーションが拡大しているのですね。
はい。「こんな使い方ができるのか」と驚かされることもあります。自動化の新領域開拓に向けたお客さまの情熱に触発され、社内のエンジニアもモチベーションが高まっています。協働ロボットのアプリケーションは社内でも積極的に開発し、提案しています。例えばこの4月に東京都内で開催された造船関連の専門展「Sea Japan(シージャパン)2026」では、CRXを使った船体の塗膜除去システムを初めて披露しました。このシステムは船舶向けに特化しているためRTJでは展示しないかもしれませんが、CRXのアプリケーションは会場で数多くご紹介できればと思います。
――CRXは今回の御社ブースの見どころの一つですね。RTJでの展示についてもう少し詳しく教えてください。
顧客の困り事である人手不足を解消したいというのがファナックの一貫した姿勢で、展示会に出展する際のテーマでもあります。人手不足が特に深刻な分野の一つに、溶接があります。その分野に向けて、協働ロボット「CRX-3iA」を提案します。溶接したい箇所にマグネットベースで取り付けて使用でき、船舶のフレームと外板の溶接に最適です。直角になった内側の角を溶接するもので、溶接個所へのトーチのタッチあるいはレーザーセンサーで溶接位置を認識できます。人手不足が叫ばれる建設分野でも同様に大型構造物を溶接する工程がありますから、建設業界にもアピールしていきます。
――CRX-3iAは昨年のiREXで発表した製品ですが、その他にもRTJで展示するiREXでの新製品はありますか?
大型ロボット「R-2000」も展示します。累計35万台以上の出荷実績を誇るシリーズをフルモデルチェンジしたもので、従来は定期交換が必要だったバッテリーやグリス、ケーブルの交換を不要にしました。従来モデルではバッテリーは1年半、グリスは3年、ケーブルは4年ごとの交換を推奨しており、台数が多ければこの交換作業も現場の負担になります。製造業の企業に話を聞くと「保全部門が特に人材不足で困っている」との声が多く、メンテナンスフリー設計のこのシリーズには非常に大きな反響をいただきました。製造業が集積する中部地方のニーズにも合致する製品だと思います。
――その他にはどんなシステムを展示予定ですか。
ロボットの遠隔操作システムも展示します。手元の小さいロボットを手で動かすと、遠隔地の大型のロボットが同じ動きをします。鋳造現場で溶けた金属の中の不純物を除去する「ノロかき」など、危険が伴う作業も安全にできます。これは自動化ではありませんが、快適な環境で安全に作業ができれば、人手を確保しやすくなります。
AIはさらに進化
――AIが大きな話題になっていますが、AI関連の展示はありますか?
もちろんあります。フィジカルAIは今回特に力を入れる展示の一つです。ファナックでは米国NVIDIA(エヌビディア)のシミュレーションプラットフォーム「Isaac Sim(アイザックシム)」に自社のロボットシミュレーション「ROBOGUIDE(ロボガイド)」を連携させるなど、フィジカルAIの取り組みを推進しており、その一端を会場で紹介します。
――ロボットの実機をAIで制御するデモシステムの展示はありますか。
生成AIを使ってロボットを動作させるシステムを展示します。AI技術を応用したシステムはiREXでも展示しましたが、RTJではさらに進化したAIロボットシステムを皆さまにお見せしたいと考えています。iREXからの改良ではなく、全く新しいシステムも展示しますので、ぜひ会場でご覧ください。
――注目度の高い最新の展示システムが勢ぞろいですね。
愛知県をはじめとする中部地方は製造業の中心地ですから、力を入れた展示で来場される皆さまをお迎えできればと考えています。中部には大企業から小規模企業まで幅広い製造企業が拠点を構え、われわれにとってのパートナーであるシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)も集積しています。来場者の中には長年自動化に取り組むプロもいれば、これから自動化に取り組み始める方もいると思います。多様なお客さまそれぞれのお役に立てるよう、豊富なソリューションをそろえて会場で皆さまをお待ちしています。
略歴:山口 賢治(やまぐち・けんじ)氏
1993年東京大学大学院修士課程修了、ファナック入社。2003年MT本部長、07年本社工場長、08年専務取締役(工場総統括)、12年副社長、16年社長兼最高執行責任者(COO)FA事業本部長、19年4月から現職。福島県出身。1968年生まれの57歳。
同じ企業の記事
>>Googleと協業しフィジカルAIロボットシステムの普及を加速/ファナック
>>船体の塗膜除去システムを提案/ファナック
>>本社地区に中央TC竣工、ゼロエネルギー認証も取得/ファナック
>>米国で工場・物流センターに143億円投資、AI自動化需要にも対応/ファナック
>>[特集2025国際ロボット展vol.11]幅広い知見で困り事を解決
>>大型ロボットがメンテナンスフリーに、協働型には3kg可搬も/ファナック
>>新製品が目白押し、鉄を切削加工できるロボットも登場/ファナック
>>ロボットの遠隔操作システムを開発/ファナック
>>[人事]6月に稲葉善治会長が特別顧問に/ファナック
>>既存ラインを変えずに協働ロボットを導入/ファナック 山口賢治 社長兼CEOインタビュー
>>教示操作盤を17年ぶりに刷新、ギガキャスト対応の大型ロボットも開発/ファナック
>>戦略的投資の一環で、米国ミシガン州に新拠点を竣工/ファナック
>>スペインの拠点を拡張、欧州事業を強化/ファナック
>>最新技術が一堂に!富士山麓の本社で自社展開催/ファナック
>>協働型で最大50kgまで対応可能に/ファナック
>>3年ぶりの自社展で多数の新提案/ファナック
>>[国際ロボット展 特別リポートvol.2]新型協働ロボをフルラインアップ/ファナック
>>大小のハンドリングロボットを発売/ファナック
>>ウェブ展で多数の新製品を発表/ファナック
>>ロボット大賞経済産業大臣賞を受賞/ファナック
>>QRコードを使ったスマホ問い合わせサービス開始/ファナック
>>技術情報をウェブで発信、専用サイト「FANUC DXCE」開設/ファナック
>>[特集 国際ロボット展vol.3]AIやIoTを実装、使いやすさ意識の高度な技術/ファナック
>>「高度な技術を使いやすく」、新製品を多数発表/ファナック
>>[新春インタビュー]ロボットは“つながる”ことで飛躍的に進化する【後編】/ファナック稲葉善治会長兼CEO
>>[新春インタビュー]ロボットは“つながる”ことで飛躍的に進化する【前編】/ファナック稲葉善治会長兼CEO

