[新春インタビュー]ロボットは“つながる”ことで飛躍的に進化する【後編】/ファナック稲葉善治会長兼CEO
新春企画の第2弾は、ファナックの稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)への特別インタビュー。工作機械用CNC(数値制御)装置および産業用ロボットの世界的なメーカーとして知られるファナック。同社はCNC装置や産業用ロボットの他に、製造業向けのモノのインターネット(IoT)プラットフォーム「FIELD system(フィールドシステム)」を提供している。前編では稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)に、ロボット産業の現状などを聞いた。後編では、ファナックの具体的な取り組みや展望を語ってもらった。
「エッジヘビー」でタイムラグを最小に
――前編ではロボットが他のロボットや機械と“つながる”ことが大きな意味を持つとのことでした。
経済産業省でもIoT技術を活用した「コネクテッドインダストリーズ」を推進していますが、これからの製造業で“つながる”ことはとても重要です。当社でもIoTプラットフォーム「FIELD system(フィールドシステム)」に力を入れています。FIELD systemのパートナー企業は400社を超え、2018年11月に開催された「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」では当社のFIELD systemと共にパートナー企業が提供するさまざまなアプリケーションが展示され、大きな反響を呼びました。今後、ますますアプリケーションが充実することを期待しています。
――FIELD systemの特徴や今後の期待は?
FIELD systemは製造現場に近い領域でデータを処理する「エッジヘビー」と呼ばれる考え方を採用しています。これによって、安全確保と生産性向上の両立なども将来的に可能になるでしょう。例えば、人が近付くと速度を落とし、さらに近付くと停止するロボットシステムでは、距離に応じて無条件に速度ダウンや停止をします。しかし、稼働範囲や作業内容によっては、必ずしも危険ではないかもしれません。システムの周囲をビジョンセンサーで監視し、危険はないかAIで常に一歩先を予測しながら判断していれば、将来的には無用な速度低下や停止を減らせる可能性があります。場合によっては1000分の1秒単位での制御が必要で、データの取得から制御までのタイムラグを最小にできるエッジヘビーなFIELD systemならではの使い方です。
日本に続き米国でも運用開始
――FIELD systemは日本では2017年10月に運用開始しましたが、海外での状況は?
今年、いよいよ米国でも運用を開始します。米国は巨大な市場でIoTへの抵抗感もそれほどないため、期待しています。欧州では19年9月の国際金属加工見本市「EMOハノーバー2019」で披露し、運用開始はその後になります。欧州は欧州連合(EU)としてまとまってはいても一つの国ではありませんから、準備に時間がかかります。日本のお客さまは産業用ロボットの導入には積極的ですが、IoTシステムの普及はこれからです。欧州はその逆で、「インダストリー4.0」などIoTには積極的ですが、ロボットに抵抗のある方も少なくありません。米国はその中間で、ロボットにもIoTにも抵抗感はなさそうです。
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