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2023.06.13

連載

[注目製品PickUp! vol.55]触れたら止まる、協働ロボ用の安全カバー/太田廣「MIONER」

ロボットダイジェスト編集部が注目したロボット関連製品を紹介する連載企画「注目製品PickUp!」。第55回は、工業用ゴムや樹脂製品などを取り扱う商社の太田廣(名古屋市中川区、太田直実社長)が今年5月に発売した自社ブランド製品「MIONER(ミオナー)」を取り上げる。ミオナーは協働ロボット専用の衝撃吸収型接触検知外装カバーで、人と接触した時に素早く安全に協働ロボットの動作を停止できるのが特徴だ。協働ロボットシステムの効率性と安全性を両立するのに役立つ。

シンプルで安価な構造

 太田廣が今年5月に発売したミオナーは、デンマークのユニバーサルロボット(UR)の協働ロボット用の衝撃吸収型接触検知外装カバーだ。軟質発泡ウレタン製の軟らかいロボットカバーに接触検知センサーが内蔵されており、人と接触した時に素早く安全に協働ロボットを停止できる。
 接触検知には一般的に、外力を測定するひずみゲージや、人の手などから発生する静電容量の変化を検知する静電容量センサーなどが広く採用される。一方、ミオナーはこうしたセンサーを使わず、たった1個の素子だけで広範囲を検出するため、シンプルで安価な構造を実現できるのが特徴だ。
 取り付けも簡単で、専用工具は一切使わない。「カバーをかぶせてマジックテープで固定するだけ。後は専用のコードをカバーの溝にはわせてロボットコントローラーやプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)に差し込めば、通信接続も完了する」と企画開発部の加藤信彦部長は語る。

効率性と安全性を両立

三重ロボット外装技術研究所の技術を生かして開発したミオナー

 ミオナーを装着できるのは最大可搬質量が5kgの「UR5e」、同10kgの「UR10e」、同16kgの「UR16e」の3機種だ。現状はロボットのエルボーの部分に当たる4軸目のカバーをラインアップしており、固定用のマジックテープを調整すれば最大可搬質量が異なる3機種全てに搭載できる。
 加藤部長は「エルボー部はロボットの軸の中でも外側に突き出る可能性が特に高く、安全対策のニーズが大きい。そのため、エルボー部のカバーを最初に用意した」と説明する。

 ミオナーの開発元は、接触検知機能付きのロボット用安全カバーの研究開発を手掛ける三重ロボット外装技術研究所(三重県四日市市、森大介社長)。独自の衝撃吸収型接触検知外装カバー「YaWaRaKa(ヤワラカ)ロボD」に関する複数の特許技術を生かし、URのエルボー部の構造に合わせて軟質発泡ウレタンを成形してミオナーを製作した。

URの協働ロボットのエルボー部のカバーを用意(太田廣提供)

 同社はロボット関連企業に自社の特許技術を供与し、そのライセンス料で収益を得るビジネスモデルを展開する。人との接触が特に多いサービスロボット分野の安全カバーの実績が豊富で、経済産業省の「新市場創造型標準化制度」の採択を受けてサービスロボット用安全カバーの性能試験方法に関する日本産業企画(JIS)の規格「JIS B8451-1:2023」の策定にも携わった。

 産業用ロボットの分野で、同社の技術が適用された安全カバーが商品化されたのは太田廣のミオナーが初だという。森社長は「高可搬化や高速化が協働ロボットの最近の技術トレンドだが、これらは安全性とはトレードオフの関係にある。ミオナーを使えばこうしたトレードオフを解消でき、協働ロボットシステムの効率性と安全性の両立を実現できる」と大きな期待を寄せる。

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