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2021.01.26
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[注目製品PickUp!vol.33]重労働の研削作業を遠隔操縦ロボットで【後編】/川崎重工業「Successor-G」

5Gでより遠くから遠隔操縦

長谷川省吾理事は「5Gならスペック的には4K画質の映像も伝送できる」と言う

 播磨工場の匠塾に置かれたサクセサーGは、ロボットとコミュニケーターを安全柵で隔てただけの近距離で操縦している。しかし、離れた場所から操縦できることこそ、遠隔操縦の真価だ。  明るく清潔で空調の効いた別室からでも、現場にいるのと変わらず作業できれば、作業者にとっては理想的だろう。  サクセサーGの開発段階で、播磨工場内の別棟にコミュニケーターを置き社内ネットワーク接続で遠隔操縦を試みたところ、ロボットの操作自体はほぼ遅延なくできたが、高精細な映像は通信遅延が大きく、うまく届かなかった。  そこで着目したのが5Gの通信技術だ。5Gは従来の移動体通信技術に比べ圧倒的に高速かつ低遅延で、工場など限定的なエリア内で独自に構築するローカル5Gならばセキュリティー性も高い。川崎重工は今年11月、電機通信事業を手掛けるオプテージ(大阪市中央区、荒木誠社長)と協力して播磨工場にローカル5Gを構築し、サクセサーGの高精細な4K映像伝送を検証した。  長谷川理事は「検証ではローカル5Gで高精細な映像をきわめて低遅延で伝送できた。ローカル5Gにより、十分な視覚情報を得ながら遠隔操縦できることがわかった」と今後の発展について期待を寄せる。

総合ロボットメーカーへ飛躍図る

遠隔操縦システムはいろいろな用途に展開できる可能性を秘める

 今後サクセサーGの遠隔操縦システムが期待通りに進歩すれば、工場内の環境のより良い場所にいながら安全に作業できるだけでなく、別拠点や自宅でも作業できる可能性が広がる。新型コロナウイルス感染症の拡大が心配される昨今のように外出を自粛しなければならない時や、働き方改革の一環で在宅勤務をする場合に役立つ。  また、重いグラインダーを持ち続けるため従来は男性が担っていた作業だが、サクセサーを使うことで負荷をコントロールできるため、高齢者や女性でもできる作業になる。作業者の条件が緩くなることで、人手不足の解消にも貢献するだろう。  サクセサーは同社の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)サージカルロボットシステム」とも一部の技術を共有している。いずれの製品も、事業部門間を横断する本社の技術開発本部の下で、各事業部門が技術を提供し合った。  サクセサーGは、作業内容に合わせて最適なロボット本体を選定しコミュニケーターを実装して、ロボットハンドなどのエンドエフェクターを付け替えれば研削以外のさまざまな作業に適用できる。  サクセサーは、過酷な製造現場から3K(きつい・汚い・危険)作業を無くし、安全で安心な作業環境に変革できるシステムだ。「さらに、遠隔操作やリモートによる新しい価値を創出し、新しい働き方を提案する。もはやロボット化を図るのは研削だけでなく、製造業だけでもない。あらゆる領域でロボットの適用を進め、産業用ロボットメーカーから総合ロボットメーカーへ飛躍を図る」と長谷川理事は力を込める。

――おわり (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

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