2026.01.08
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【年頭所感】日本物流システム機器協会 村田大介 会長

 明けましておめでとうございます。
 2026年の年頭に際し、会員の皆さまに謹んでご挨拶を申し上げます。

 昨年を振り返りますと、年初からのいわゆる「トランプ関税」を契機に、世界経済が大きく揺れ動いた一年であったと言えるでしょう。米国が長年にわたり担ってきた自由貿易体制の維持や国際秩序といったグローバル公共財の提供を見直す動きは、今年の中間選挙のような一時的な政治日程に左右されながらも、中長期的には継続していくと受け止めるべきものと思われます。こうしたトレンドの中で、サプライチェーンの分断や再編が常態化し、調達・生産・物流を一体で見直す必要性が、改めて浮き彫りになったと理解しています。

 多極化の進展と、軍事転用も可能な情報技術の急速な発達は、東欧や中東で続く戦争のみならず、我が国を取り巻く東アジアの安全保障環境にも影響を及ぼしています。経済安全保障の観点からも、特定地域や特定企業への過度な依存を避け、レジリエントな物流・供給体制を構築することの重要性が高まっています。

 そのような不確実性の高い国際環境の中で昨年開催された大阪・関西万博は、日本が世界とどのように向き合い、どのような価値を提供していくのかを考える好機となりました。国内の短期的な政局にとどまらず、世界の現実を直視し、技術力や現場力を通じて存在感を示していくこと、そして包括的な安全保障を自らの力で支える産業基盤を強化することが、新たな女性リーダーの下での日本に強く求められていると感じます。

 一方、インフレもまた、長らくデフレに慣れ親しんできた我が国にとって大きな転換点となっています。総務省の統計でも、消費者物価指数はここ数年で年率2~3%台の上昇が続いており、企業活動や家計に着実な影響を与えています。物価や賃金の緩やかな上昇と過度に高くない金利は、経済成長にとって望ましいものですが、それを安定的に維持することは決して容易ではありません。現在は政府支出を伴う支援策が物価高対策として講じられていますが、同時にインフレ圧力を高める側面もあります。今後、インフレが適正水準を超える局面では、対症療法ではなく、構造的な要因への対応が不可欠となるでしょう。

 現在の日本の物価上昇は、深刻な人手不足や円安を背景とした資材・エネルギー価格の上昇など、供給側の制約に起因する部分が大きいと考えられます。実際、物流分野における有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る水準で推移しており、2024年問題以降、現場の負荷は一段と高まっています。こうした課題への対応において、私たち産業界、とりわけ物流システム業界が果たし得る役割は極めて大きいものがあります。サプライサイドの生産性を高める上で、物流の省力化、自動化、デジタル化は不可欠であり、それは社会全体のコスト構造の改善にも直結します。

 新たな技術の急速な発達と、物流自動化への幅広い需要は、日本に限らず世界共通の潮流です。EC市場の拡大を背景に、世界の物流関連投資は堅調に推移しており、欧州や中国のスタートアップ企業が、斬新な発想や低コストのソリューションによって市場で存在感を高めてきたことも、昨年の大きな特徴でした。国内外の展示会に足を運ぶたびに新しい企業や技術と出会い、当協会の会員にも新たな仲間が加わっています。長らく「縁の下の力持ち」として、互いに顔の見える関係の中で社会を支えてきた当業界にとって、新たな競争環境への戸惑いがある一方で、それは同時に新しい可能性への期待でもあります。

 市場環境や技術がこれほど大きく変化する時代において、一社単独で全てに対応することには限界があります。オープンで実務に根ざした業界団体として、会員企業同士の情報共有や連携、標準化や人材育成といった分野で、JIMHが前向きな貢献を果たしていけることを心から願っております。本年も皆さまとともに、物流システム業界の持続的な発展に取り組んでまいりましょう。

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