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2019.06.13

連載

[注目製品PickUp!vol.14]リーズナブルな単軸・直交でここまでできる【前編】/アイエイアイ「ロボシリンダー」

ロボットダイジェスト編集部が注目する製品を紹介する連載企画「注目製品PickUp!」。今回はアイエイアイ(静岡市清水区、石田徹社長)の電動アクチュエーター「ロボシリンダー」を取り上げる。電動アクチュエーター(単軸ロボット)やそれを組み合わせた直交ロボットは動きがシンプルで、複雑な作業には適さないと思われがちだが、「組み合わせ次第で垂直多関節ロボットのようにも使えることを知ってもらえれば」と製造部の中村秀和次長は話す。

複数で直交ロボットにも

 アイエイアイは、直線運動をする電動アクチュエーターや、それを組み合わせた直交ロボットで国内5割のシェア(富士経済調べ)を持つトップメーカーだ。

 電動アクチュエーターには本体上面のスライダーが動くスライダータイプや、本体から出たロッドが伸縮するロッドタイプがある。単体で使って製造現場のちょっとした作業を手軽に自動化したり、機械装置に組み込み複雑な自動化システムを構築するなど、さまざまな使い方ができる。
 複数台を組み合わせて使えば、直交ロボットも構築可能だ。

安価で簡単に使える

スライダータイプの構造を説明する中村秀和次長

 同社の看板製品が、今回取り上げる電動アクチュエーター「ロボシリンダー」だ。電機や自動車、半導体産業で使われる他、医療機器製造、食品製造に至るさまざまな設備に組み込まれる。
 ロボシリンダーの主な構造は同社の他の電動アクチュエーターと変わらないが、簡単な操作とリーズナブルな価格を大きな特徴とする。

 従来の電動アクチュエーターを使うにはプログラミングなど複雑な設定が必要だったが、ロボシリンダーは最初に動作の開始位置、停止位置などの「ポジション」を設定。その後はそのポジションの番号を指定するだけで動かせる。スライダーを手で動かしてその位置を覚えさせるダイレクトティーチも可能だ。速度や加減速度の細かな設定もできるが、「スマートチューニング」機能を使えば、使用条件に合わせて、サイクルタイムを最短にする加減速度に自動設定してくれる。
 リーズナブルな価格は、ボールねじや直動ガイドなどを徹底的に内製化することで実現した。基幹部品の9割は自社で製造する。また、現在はサーボモーター仕様の製品もあるが、開発当時はサーボモーターが高価だったため安価なステッピングモーターを採用。角度変化を検出するセンサー(ロータリーエンコーダー)を組み込むことでサーボモーター同様の高精度な制御を可能にし、また、ステッピングモーターで発生する指令と実際の動作がずれる脱調という現象を解決した。

 ロボシリンダーを発売したのは1999年。「従来の電動アクチュエーターでは30万円かかるケースでも、ロボシリンダーなら10万円で済むなど当時の顧客にとって衝撃的な価格だった。ロボシリンダーはすぐに大ヒットし、品ぞろえを次々と増やすことで電動アクチュエーターの代名詞的な製品にまで育った。他メーカーの製品を間違って『ロボシリンダー』と呼ぶ人も少なくない」(中村次長)。

より簡単で安価な電動アクチュエーターも

安価で使いやすいエレシリンダー(写真は構造説明用のモデル)

 ロボシリンダーの系譜に連なる製品として、従来以上の簡単さを追求した電動アクチュエーター「エレシリンダー」も2年前に開発した。動作設定を始点と終点の2点に限定することで、電気制御の知識が全くないユーザーでも簡単に使える。
 コントローラーと本体を一体化し、メカ構造を見直すことで空圧式のエアシリンダーと同等の価格を実現した製品だ。また、エアシリンダーとは違い、加速度、減速度、速度を個別設定できるのでサイクルタイムの短縮ができ、チョコ停(トラブルによる短時間の稼働停止)も減らすことができる。

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