[iREX2025リポートvol.12] 中国メーカーのヒューマノイドが存在感を発揮
「2025国際ロボット展(iREX2025)」の会場で、ひときわ強い存在感を放っていたのが、中国メーカーのヒューマノイド(ヒト型)ロボットだ。二足歩行の完全なヒト型から、上半身はヒト型で下半身は自律走行型搬送ロボット(AMR)という構成まで、多彩なヒューマノイドが披露された。ここでは、製造業や物流業をはじめとする幅広い分野での活用を強く意識した中国メーカーのヒューマノイドを紹介する。
日本市場にイノベーションを
中国政府はヒューマノイドを「最先端技術(フロンティアテクノロジー)」と位置づけ、人工知能(AI)やスマート製造との技術融合を含めて国家主導で開発を加速させる方針を打ち出している。背景には複数の要因が考えられるが、その一つが「一人っ子政策」の影響などによる労働力不足への強い危機感だ。人間と同じ身体構造を持つヒューマノイドは、産業用ロボットと比べてより幅広い用途で活用できる可能性を秘めている。そのため、労働力を補う存在として大きな期待が寄せられている。
実際、中国のヒューマノイドメーカーは既に110社を超え、世界全体の約半数を占める。そうした中国メーカーが日本市場に照準を合わせる理由は明確だ。日本は製造業を中心に幅広い分野で自動化需要が高く、部品の組み付けといった繊細な作業などヒューマノイドが活躍できる土壌が整っている。また、技術評価のハードルが高く、日本で性能を認められれば、それは世界に通用する証となる。ある中国の業界関係者は「iREXは自社の技術的立ち位置を証明する最適な舞台」と語る。このように中国メーカーにとって、今回展は自社のヒューマノイドの技術力を世界に示す、またとない機会だった。
中国の上海に本社を置くAGIBOT(アギボット)が披露した商用導入が可能なフルサイズ型のヒューマノイド「AgiBot A2」はそうした期待に正面から応えた。
AgiBot A2は全高が169cmで本体質量は69kg。全身に40以上の自由度を備え、人間らしい自然で滑らかな動きを再現できる。案内業務や飲み物の提供といった接客用途に加え、ダンスや書道といったパフォーマンスも可能で、エンターテインメントや商業イベントでも活用できる。同社がヒューマノイドを幅広い分野に導入しようとしている姿勢がうかがえた。
同社のキュウ・コウ最高マーケティング責任者(CMO)も「わが社は2025年に日本市場に新規参入すると発表した。日本は製造業や物流業、サービス業など多彩な分野でヒューマノイドが活躍できる可能性を秘めている。今後は日本企業へのヒューマノイドの導入を通じて、日本市場にイノベーションを起こしたい」と意気込む。
下半身がAMRのロボットも
二足歩行に固執せず、AMRで移動するロボットもあった。中国の北京に本社を置く協働ロボットメーカーの日本法人REALMAN ROBOTICS(リアルマンロボティクス、東京都江東区、易峰代表)は、新開発のヒューマノイド「RealBOT(リアルボット)」を展示した。同社は24年から上半身が双腕のヒト型、下半身がAMRのロボット「RMC-AIDAL」を販売してきたが、今回開発したリアルボットでは、さらに腰部の稼働が可能となり、より人間に近い動作を可能にした。
会場では本社のある北京からリアルボットを遠隔操作し、ボルトをピッキングするデモを披露した。易峰代表は「二足歩行は歩行の安定性や消費電力の面で課題が多い。一方、AMRであれば工場や店舗内で十分な移動性能を確保できる」と説明する。また、同社はロボットの要素部品から自社開発しており、関節の減速機などを小型・薄型化して、協働ロボットの大幅な軽量化を実現する。リアルボットに搭載するロボットアームも片腕の可搬質量が5kg、アーム質量7.2kgと軽量のため、稼働時の振動が少なく、食品の盛り付けや部品の組み付けといった繊細な作業にも向くという。
中国のビジョンシステムメーカー、Mech-Mind(メックマインド)ロボティクスの日本法人メックマインド(東京都港区、楊培社長)は、自社の高精度3Dカメラ「Mech-Eye Focus(アイ・フォックス)X」やAIのディープラーニングを使った画像処理ソフトウエア「Mech-Vision(ビジョン)」、ロボットハンドを搭載した、下半身がAMRのロボットを展示した。
会場では小売店での無人販売を想定したデモを実演。来場者がタブレットから商品を指定すると、その指示に従ってロボットが棚まで移動する。その後、頭部に搭載された3Dカメラとソフトを使い、商品の種類と位置を認識。5本指のロボットハンドで商品を把持し、受け取り場所まで運ぶ流れを披露した。
営業総合サポート部の佐野健太マーケティングマネージャーは「ビジョンシステムメーカーとして培ってきたノウハウをヒューマノイドに応用した。今後はレジカウンターを含む小売業の無人化を一層加速させたい」と意気込む。
AI学習用データを収集/DOBOT
中国メーカーのヒューマノイド開発を支えているのが、大規模なAI学習用データの収集体制だ。先述したアギボットは中国上海にデータ収集工場を設け、100台以上のロボットを稼働させて1日数万件のAI学習用データを取得・蓄積している。また、リアルマンロボティクスも100台以上のロボットを備えたデータ収集工場を保有している。中国メーカーはこうして膨大に蓄積されたデータをAIに学習させ、ヒューマノイドが実行可能な作業を段階的に拡張している。
中国の深センに本社を置くDOBOT Robotics(ドゥーボットロボティクス)の日本法人であるDOBOT JAPAN(ドゥーボットジャパン、東京都港区、ロウ・ジュリン代表)のブースでは、その一端が垣間見えた。DOBOTの一次代理店を務めるアスカがDOBOT製ヒューマノイド「ATOM(アトム)」を披露。アトムは全高165cm、質量62kgで、直立二足歩行で移動できる。ロボットのティーチング(動作を覚えさせること)だけでなく、収集したAI学習用データを基にロボット自らが見て考えて動く「AI推論モデル」による制御も可能だ。
会場では、仮想現実(VR)ヘッドセットを使ったAI用学習用データ収集の実演が行われ、その成果を活用してアトムが対象物の形状と色を同時に認識し、仕分けする作業が披露された。
説明員は「今回は100件の学習データを使用しているが、1000件、1万件と数を増やすことで、より正確な動作が可能になる」と語る。
同じ企業の記事
>>[iREX2025展示リポートvol.1]フィジカルAIやヒューマノイドが脚光浴びる
>>[iREX2025展示リポートvol.2]「組み合わせ」で魅するSIer・商社
>>[iREX2025リポートvol.3]ロボットハンドも着々と進化
>>[iREX2025リポートvol.7]新興勢も独自技術で存在感示す
>>[iREX2025リポートvol.8]要素部品の新製品や新たな使い方が続々
>>[iREX2025リポートvol.6]金属加工の自動化・ロボット化を提案
>>[iREX2025リポートvol.5]ユニークな協働ロボットなど新たな製品やアプリケーションが続々
>>[iREX2025リポートvol.9]周辺機器の使用イメージや使い心地を分かりやすく提案
>>[iREX2025リポートvol.4]最新のデジタルツイン工場をブースに再現

