• 連載
2025.07.07
★お気に入り登録

[ショールーム探訪vol.38]理解を深めてもらう場所に/Mujin「愛知ロボットイノベーションセンター」

ロボットダイジェストの記者が読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第38回は、ロボット制御ソフトウエアベンチャー企業のMujin(ムジン、東京都江東区、滝野一征最高経営責任者<CEO>)が愛知県岡崎市に構えるショールーム「愛知ロボットイノベーションセンター」を訪問した。営業拠点の岡崎事業所に併設されたショールームで、昨年12月に名古屋市内の名古屋事業所から拡張移転した。実機の展示から勉強会の開催まで、来場者に自動化ソリューションへの理解を深めてもらうための体制強化を図った。

気軽に立ち寄れる

イメージカラーのオレンジ色が映えるショールーム

 江戸幕府を開いた武将、徳川家康生誕の地とされる愛知県岡崎市。2023年に放送されたNHKの大河ドラマ「どうする家康」のロケ地の一つにもなった。人気Youtuber(ユーチューバー)の拠点として若者からの認知度も高く、全国から幅広い年齢層の観光客が訪れる。

 愛知ロボットイノベーションセンターがあるのはそんな岡崎市の中心部「東岡崎エリア」だ。最寄りの名鉄東岡崎駅からはタクシーを使えば約5~6分で到着する。東名高速道路の岡崎ICから程近く、自動車でのアクセスに優れる。

 

 同センターがオープンしたのは昨年12月。もともと名古屋市内にあった事業所を拡張移転した。敷地面積は移転前と比べて約8倍の約1600㎡。オープンから半年足らずで来場者は1000人を超え、最大30人の団体でも受け入れられる。見学は原則予約制で、同社のホームページから申し込める。

 営業本部の木全洋一郎部長は「お客さまが気軽に立ち寄れるように、自動車産業の工場が集積する三河地域にショールームを移転した」と話す。

コア技術を体感

AGVやロボットハンドなどの保守部品を在庫するエリア

 ショールームでは無人搬送車(AGV)をはじめ、独自開発したコア技術の人工知能(AI)「Mujin Machine Intelligence(マシンインテリジェンス、MI)」を活用した自動化デモを見学できる。もちろん、来場者が対象物(ワーク)を持ち込めば、テストにも対応する。

 

 また、AGVやロボットハンドなどの保守部品を在庫するのも同センターの大きな特徴だ。木全部長は「すぐに修理に出向けない場合はAGVの貸し出しにも対応する。お客さまの生産を止めないようにサポート体制を整えている」と強調する。

MujinMIを活用した高度な事前シミュレーションが可能。システム構築にかかる時間を大幅に削減できる

 通い箱をパレタイジング(積み付け)やデパレタイジング(荷降ろし)する自動化デモでは、MujinMIを存分に体感できる。

 MujinMIを使えばティーチング(教示作業)によるプログラミングが不要で、リアルタイムで最適な動作経路を導き出せる。同社はこのMujinMIを搭載したロボットコントローラー「Mujinコントローラ」を使い、ロボットハンドやビジョンセンサーなどを一括制御できるのを強みとする。

 通い箱のパレタイジング/デパレタイジングシステムは同社が開発する汎用型のロボットハンド「Mujinハンド」や3Dビジョンセンサー「Mujin3Dビジョン」などで構成される。Mujinハンドにはセンサーが20個以上搭載され、通い箱のL字の2面を把持して正確かつ高速に通い箱を運ぶ。

 木全部長は「Mujinハンドは通い箱の色やサイズ、ふたの有無などに関わらず一つで約60種類のタイプに対応できる。汎用型ハンドを導入することで、予備部品を共通化できるメリットもある」と説明する。

新しい技術だからこそ

「ショールームを拡張する構想がある」と話す営業本部の木全洋一郎部長

 「わが社の自動化ソリューションへの理解を深めてもらえるようなショールームにしたい」と木全部長は力を込める。

 来場者は自動化ソリューションに対する納得感を得られるまで何度でも訪問できるため、リピーターが多いという。

 同社では「生技向け物流改革サポート」と称する生産技術担当者向けのコンサルティングサービスにも注力し、ショールームで定期的に勉強会を開催している。

 

 こうした取り組みに励む背景には理由がある。Mujinコントローラを使えば、プログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)を使わずにロボットやビジョンカメラ、ハンドなどを一括で制御できる。PLCレスでロボットシステムを構築できる手軽さの一方、自動化に知見が深い製造業者が多い三河地域ならではの訴求の難しさがあるという。

 

 木全部長は「この地域で求められるのは土台がしっかり固まった技術。われわれが扱うのは比較的新しい技術だからこそ、ショールームの見学や勉強会を通じて理解を深めてもらう必要がある。この場を活用してわが社の製品を提案するのはもちろん、お客さまのニーズにも耳を傾けるようにしたい」と思いを明かす。

 

 同センターでは今後、ショールームの拡張を検討する。木全部長は「自動化システムのセットアップ用スペースを拡充して、お客さまに迅速に製品を提供できる体制を強化したい」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 平川一理)

〔担当記者より〕

印象的だったのは「ショールームでAGVを分解するお客さまがいる。それで納得感が得られるならOK」と木全部長が話していたことだ。自動化ソリューションへの理解を深めてほしいという同社の本気度が垣間見えた。また、勉強会はトヨタグループの物流現場特有のルールを熟知した社員が講師を務めるなど、同グループに自動化システムを多数納めるMujinならではの手厚いサポート体制も整える。三河地域の読者もそれ以外の読者も、愛知ロボットイノベーションセンターを一度訪ねてみてほしい。ここならきっと、自動化ソリューションに対する疑問や不安をとことん解消できるはずだ。

 

施設概要

名称:愛知ロボットイノベーションセンター

所在地:愛知県岡崎市大平町小欠21-1 西側2階

見学予約についてはMujinのホームページから

 〇ショールーム探訪:記事一覧

★お気に入り登録

BASIC KNOWLEDGE