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2019.10.16

水に強いロボットを開発! 機内設置で自社商品の競争力高める/スギノマシン

スギノマシン(富山県魚津市、杉野良暁社長)は2019年10月、独自開発の産業用ロボット「スイングアーム式コラムロボット」の新商品を発売した。防水性を高め、自社製の洗浄機や工作機械の機内に設置できるようにしたのが最大の特徴だ。杉野岳副社長は「わが社の既存商品にロボットを組み込み、一つのパッケージ商品として提案する。これによりロボットだけではなく、わが社の既存商品の競争力も高めていく」と強調する。

垂直形と水平形の2タイプを用意

スギノマシンが開発した「スイングアーム式コラムロボット」の基本タイプ

 スギノマシンは洗浄機やマシニングセンタ(MC)と呼ばれる工作機械など多種多様な産業機械を手掛け、独自の産業用ロボット「スイングアーム式コラムロボット」も製造、販売する。最近は、自社商品とコラムロボットを組み合わせた自動化ソリューションの提案にも力を注ぐ。
 
 コラムロボットは6軸のロボットだが、一般的に広く普及する多関節ロボットとは見た目が違う。コラムと呼ばれる棒状のボディーでロボットアームを支える独自の構造を採用する。
 2016年に東京で開催された工作機械見本市「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」で初披露し、翌年の17年には現行モデルである基本タイプを発売した。
 それから2年後の19年10月には新商品を発売し、ラインアップを拡充した。コラムが地面に対し垂直な「垂直形」と、その派生形でコラムが水平な「水平形」の2タイプの新商品を用意した。20年9月までに20台の販売を目指す。

 19年10月23日~26日の4日間、名古屋市内で開催される工作機械見本市「メカトロテックジャパン(MECT)2019」にも新商品を出展する。基本タイプと含め、計3タイプのロボットを展示する計画だ。

  • コラムロボットの新商品の垂直形

  • 水平形

防水のノウハウをロボットに

新商品は防水性が高く、水がかかる環境でも稼働する

 コラムロボットの特徴は狭いスペースでも稼働できること。基本タイプは幅と奥行きが500mmあれば設置できる。

 新商品はそのコンパクトさを踏襲したうえで、軸の配置などを見直して防水性も高めた。
 一般的な仕様の多関節ロボットは水や粉じんが苦手で、湿気や粉じんの多い環境には向かない。だが、杉野岳副社長は「わが社は高圧洗浄機やウォータジェット加工機(高い水圧を利用して材料を切断する機械)を製造しており、防水機構への知見がある。そのノウハウをロボットに応用した」と語る。

 全軸防水仕様の垂直形では、防水性や防じん性を表す保護等級で見ると、ロボットアームの部分でIP67(完全防じんで、水深1mの水中に30分沈めても内部に浸水しない)相当、コラムはIP55(若干の粉じんが侵入しても動作に支障をきたさず、あらゆる方向から水を噴射しても有害な影響を受けない)相当を保証する。

NC装置でロボットを操作

「ロボットだけではなく、わが社の既存商品の競争力も高める」と語る杉野岳副社長

 では、防水性を高めたことでどのようなメリットがあるのか?
 杉野副社長は「洗浄機や工作機械の機内に設置できる」と説明する。

 洗浄機でもMCでも、洗浄エリアや加工エリアは洗浄液や切削油が飛散しており、非常に湿気の多い環境だ。それだけに、ロボットを使う場合は機械の外に据え付けるケースが多い。
 一方、同社の新商品は防水性が高いため機械の室内に組み込んでも問題なく稼働でき、省スペースな自動化システムを構築できるのが特徴だ。部品の搬送や洗浄などを主な用途に想定する。
 「機械の室内にロボットを組み込んでも、既存の洗浄エリアや加工エリアにほぼ影響を与えない」と杉野副社長は語る。

 また、洗浄機やMCを動かすための数値制御(NC)装置をそのまま使って、ロボットを操作できるのも大きなポイントだ。
 多関節ロボットはティーチング(動作を覚えさせること)をして動作プログラムを作る必要があるが、ティーチングは難しく時間がかかる。だが、NC装置を使ってロボットを操作できれば、ロボットに不慣れな人でも洗浄機や工作機械と同じ要領で扱える。

洗浄機やMCに組み込み、部品の搬送や洗浄などを担う

 杉野副社長は「洗浄機やMCなどの既存商品にロボットを組み込み、一つのパッケージ商品として提案する。これによりロボットだけではなく、わが社の既存商品の競争力も高めていく」と強調する。

 今後は顧客のニーズに合わせ、機外設置型の基本タイプと機内設置型の新商品を使い分けて提案する考えだ。

 同社の洗浄機やMCは自動車産業向けに強みを持つ。これらの機械とセットで提案するだけに、コラムロボットの新商品も自動車産業が主なターゲット市場だ。
 だが、杉野副社長は「建築現場や農作業の現場など、防水性が課題でこれまでロボットが使えなかった環境でも使えるだろう」と新市場の開拓も視野に入れる。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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