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2022.02.17

「RI事業部」発足、ロボットを中核にトータル提案/スギノマシン

産業機械メーカーのスギノマシン(富山県魚津市、杉野良暁社長)は、グループの商品や技術を生かしたトータルソリューション提案を強化する。その一環で、産業用ロボットやモノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)技術などの開発を担う「RI事業部」を立ち上げた。既存の事業本部の商品の競争力強化に貢献しながら、単体でも4年後には単年黒字化を目指す。

既存商品の競争力を強化

杉野岳副社長(右)とRI事業部長の大西武夫執行役員

 スギノマシンが昨年12月1日付で発足したRI事業部は、独自の産業用ロボット「スイングアーム式コラムロボット」などを開発、製造、販売するRI部と、IoTやAI技術を開発して製造現場の効率化を図る生産革新部の2部門から成る。

 RIとは「Innovation with Robotics and IoT/ICT/AI」を表す。Rは「Robotics(ロボティクス)」を指し、Iには「“I”nnovation(革新)」「“I”oT」「“I”CT(情報通信技術)」「A“I”」とさまざまな意味を込めた。
 発足時点のメンバーはRI部が10人、生産革新部が11人。RI事業部長には、大西武夫執行役員が就任した。

 同社は洗浄機や工作機械、ウォータジェット加工機、コラムロボットなど幅広い商品ラインアップを持つ。大西執行役員は「IoTやAIを生かした知能化技術を開発してコラムロボットを含めた既存商品に適用し、競争力強化につなげたい」と話す。
 また、RI事業部の開設を機に、コラムロボットとグループの商品を組み合わせたトータルソリューションの提案も強化する考えだ。

グループの存亡を左右

スギノマシングループが提案するトータルソリューションのイメージ

 杉野岳副社長は、RI事業部を「グループの存亡を左右する部門」と位置付ける。
 同社は創業から80年以上にわたり、メカを中心に技術を磨いてきた。だが、今後はメカだけではなく、ソフトウエアや制御技術が差別化の鍵を握ると杉野副社長はみる。「トータルソリューションの提案こそが機械メーカーの生き残る道」とも語る。

 こうした未来を見据えた杉野副社長は、自らが旗振り役となって5年前から種をまいてきた。まずは新規事業の一環として2016年にコラムロボットを開発。同年11月に開かれた工作機械展「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」で初披露した。その翌年の17年には現行モデルに改良した。
 コラムロボットの現行モデルは15kg可搬の6軸ロボットだが、一般的に普及する多関節ロボットとは見た目が違う。コラムと呼ばれる棒状のボディーでロボットアームを支える独自の構造を採用しており、省スペースな上に剛性(変形のしにくさ)も高いのが特徴だ。
 19年10月には防水タイプのコラムロボット、20年11月には7kg可搬の4軸水平タイプのコラムロボット、昨年10月には20kg可搬の4軸水平タイプのコラムロボットと50kg可搬の6軸垂直タイプのコラムロボットを開発し、商品ラインアップを広げた。

  • 展示会では「一貫生産ライン」と称してトータルソリューションを提案した。中央がコラムロボット(18年11月撮影)

  • 洗浄機や工作機械に組み込める防水タイプのコラムロボットも開発(19年10月撮影)

独自開発したIoTシステム。生産進ちょくなどを可視化した

 コラムロボットの開発だけではない。19年には生産革新部を発足し、独自開発したIoTシステムを全事業所に導入して社内のIoT化を進めた。
 トータルソリューションを提供する体制を5年間で整えた同社は、次のステップとして新規開発部の一事業だったコラムロボットの部門と生産革新部を合併してRI事業部を立ち上げた。「工作機械や洗浄機などの装置単体ではなく、ロボットを中核としてIoTやICTを駆使したビジネスモデルでも収益を上げる意思を内外に示すため、新規開発部から独立させた」と杉野副社長は強調する。

 RI事業部は既存の事業本部の商品の競争力強化に貢献しながら、単体でも4年後には単年黒字化を目指す。「まずは自社商品の競争力を高めるため、コラムロボットのさらなる改良やシステム開発を進めていく。ソフト人材の育成も大きな課題で、AIや知能化技術の専門的な知識を持った人材も並行して育成したい」と大西執行役員は展望を語る。
 今後3年以内に事業部の基盤を確立したい考えで、特にAI開発では外部機関との協業も視野に入れるという。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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