製造業の専門展で見たロボット提案の今/名古屋ものづくりワールド2019
ロボットそのもの展示も
周辺機器だけではなく、ロボットそのものの展示も目立った。 THKは、カワダロボティクス(東京都台東区、川田忠裕社長)製の双腕型の協働ロボット「ネクステージ」の改良版を中部地区で初めて披露した。 ネクステージの改良版が発表されたのは2018年。片腕当たりの最大可搬質量は従来の1.5kgから3kgへと倍増し、動作スピードも向上した。担当者は「より人に近い作業ができるようになった」と語る。 小間では、自動車部品のOリングを両手で器用に組み立てるデモを披露し、来場者の注目を集めた。 ドイツの樹脂部品メーカー、イグスの日本法人(東京都墨田区、北川邦彦社長)は、樹脂製のロボット「ロボリンクDC」を展示し、低コストの自動化提案に力を注いだ。 ロボリンクDCは、ロボットアームなど多くの部品が樹脂でできている。そのため、一般的な金属製の産業用ロボットと同じ要領で使うのは難しいが、樹脂製ゆえに導入コストを低く抑えられる。軽作業の自動化に向くロボットだ。
単軸ロボットなどを製造販売するアイエイアイ(IAI、静岡市清水区、石田徹社長)は、電動タイプのシリンダー「エレシリンダー」をアピールし、従来の空圧式シリンダーからの置き換えを積極的に提案した。 エレシリンダーの最大の特徴は使いやすさ。始点と終点の位置を付属のタッチパネルに入力するだけで動作プログラムを簡単に生成できる。 担当者は「電動シリンダーには高くて扱いにくいとのイメージがある。確かに空圧式シリンダーに比べイニシャルコストは高いが、ランニングコストは安い。エレシリンダーのランニングコストの優位性と使いやすさを武器に、こうしたイメージを払しょくしたい」と意気込む。小間にはエレシリンダーの体験コーナーも設け、簡単に扱えることを大勢の来場者にPRした。 この他、高速動作に強みを持つスカラロボット「IXAシリーズ」も展示した。19年発売予定の最大可搬質量1kgの小型スカラロボットも参考出展した。
ティーチングレスでばら積みピッキング
M-テック名古屋では、ロボットシステムの構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)や商社も小間を構え、独自の自動化技術を提案した。 ロボット商社の三明(静岡市清水区、笠井茂社長)は、協働ロボットと無人搬送車(AGV)に独自開発の制御装置「WISEBOX(ワイズボックス)」を組み合わせたAGVロボット「AGBOT(エジボット)」を披露した。 エジボットは①AGVに搭載したセンサーで周囲の位置情報を収集し②センサーで集めた情報を基にワイズボックスがロボットのプログラムを補正する――機能を持ち、AGVの停止位置が多少ずれてもロボットを正確に動かせるのが特徴だ。 小間では、デクシス(千葉県船橋市、関忠男社長)の双腕ロボットを使った外観検査装置「外観けんた君」とエジボットを組み合わせて、部品の供給から検査、排出までの一連の動作を自動化するデモを披露した。定期的にデモのプレゼンテーションを実施し、大勢の来場者の関心を集めた。
SIerのトキワシステムテクノロジーズ(名古屋市中区、今井嘉之社長)は、3次元(D)カメラを使ってばらばらに積まれたボルト形状の部品をティーチング(ロボットに動作を覚えさせること)レスでピッキングするロボットシステムを展示した。 担当者は「今はボルト形状だけだが、今後は立方体などにも対応できるようにしたい」と意気込む。 また、SIerのトライエンジニアリング(名古屋市守山区、片山誠二社長)は、ロボットの先端に研磨用ツールを取り付けた研磨自動化システム「ロボットポリッシングシステム」を出展した。研磨用ツールには位置や速度を精密に制御できるサーボモーターを搭載しており、一定の圧力で研磨用ツールを動かせるのが特徴だ。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)