生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.08.02

インタビュー

トータルソリューションを「当たり前」に【前編】/デンソーウェーブ相良隆義社長

産業用ロボット、自動認識機器、制御機器メーカーのデンソーウェーブ(愛知県阿久比町)の社長に相良隆義氏が就任した。相良氏はロボットユーザーとしての経験を生かし、「ユーザー目線での製品開発を強化し、顧客の生産性向上をトータルで支援したい」と意気込む。ロボット事業では人工知能(AI)や3次元(D)ビジョンシステムの分野を強化し、自動化できていない領域の自動化に貢献する考えだ。また、今後は事業部間の連携も推進し、ロボットや自動認識機器など社内のリソースを組み合わせたトータルソリューションの開発にも注力する。

AIや3Dビジョンシステムに注力

――今年4月1日に社長に就任しました。
 私は1990年に日本電装(現デンソー)に入社し、直近では工機部長として電装系部品の専用機や生産ラインの構築に携わっていました。これまで長い間、デンソーウェーブのロボットのユーザーでしたが、今年1月にデンソーウェーブに移り、4月に社長に就任しました。わが社はロボットだけではなく、QRコードや電子タグ(RFID)といった自動認識機器や制御機器、最近注力しているモノのインターネット(IoT)技術など、幅広い事業を展開しています。製造現場や社会を広く支えている会社のかじ取りを担うことになり、身が引き締まる思いです。

――抱負をお願いします。
 企業理念の「社会の生産性向上に深く、広く寄与し、人々の幸福に貢献する。」に共感しました。この理念に即した形で、顧客の困り事や多様なニーズにしっかりと解決策を提案できる会社にしたいです。ロボットユーザーの立場だった私がメーカーの社長になったからには、ユーザー目線での製品開発をこれまで以上に強化し、顧客の生産性向上をトータルで支援します。

プログラミングが難しい作業の自動化に役立つ「AI模倣学習」(提供)

――ロボット事業の戦略は?
 製造現場には、「技術的に難しい」「場所の制約がある」といった理由で自動化できていない領域がまだまだ数多く残されています。今後はこうした領域の自動化を進めながら、中長期的には少子化問題による人手不足やカーボンニュートラル(炭素中立)といった社会課題の解決にも貢献したいです。ロボットだけでは解決できない問題に対しても、自動認識機器など他の事業部のリソースと組み合わせたトータルソリューションを提案したいと考えています。

――「自動化できていない領域」にどう挑みますか。
 例えば、熟練技能者の作業は人の手の感覚に強く依存しているため、なかなかロボットに置き換えにくく、自動化がしにくいです。わが社のロボットは「より速く、より正確に動く」のが特徴ですが、今後はそれに加え、熟練技能者のように自ら考え、自ら動く「自律化」も実現したいです。その要素技術として、最近はAIや3Dビジョンシステムの分野を強化しています。今年4月には汎用的なAIソフトウエア「AI模倣学習」の出荷を始めました。粉末の秤量(ひょうりょう、はかりで重さを量ること)やばら積みピッキングなど、プログラミングが難しい作業の自動化に役立ちます。また、6月からは中国のMech Mind(メックマインド)製の3Dビジョンシステム「Mech-Eye(メックアイ)シリーズ」の受注も開始しました。認識対象物のCAD(コンピューター設計支援)データがなくてもターゲットを正確に認識できるのが特徴です。

  • AI模倣学習でばら積みピッキングを自動化する

  • CADデータなしで対象物を認識できる「Mech-Eyeシリーズ」

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