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2021.01.20

たわみやねじれも正確に! ケーブルに特化したビジョンセンサー【前編】/クラボウ

繊維製品で有名なクラボウは2020年4月、3次元(D)ビジョンセンサー「KURASENSE(クラセンス)」を発売し、産業用ロボットの市場に参入した。一般的な3Dビジョンセンサーでは形状の認識が難しい各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードなどに特化しており、たわみやねじれ、曲がりも含めてケーブルの形状を瞬時に認識できる。前編では、こうしたクラセンスの特徴や開発の経緯を詳しく紹介する。

自動化が進んでいない作業

クラセンスの紹介動画(提供)

 クラボウが開発したクラセンスは各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードの形状の認識に特化した3Dビジョンセンサーだ。

 3Dビジョンセンサーは、トレーやケースの中にばらばらに置かれた金属部品や樹脂部品の形状を認識するのに使われることが多い。
 金属部品や樹脂部品は形状が変わらない「定形物」だが、クラセンスが得意とする各種ケーブルや光ファイバーなどは「線状物」と呼ばれ、柔らかく形状が一定ではない。たわんだり、ねじれたり、曲がったりするため、一般的な3Dビジョンセンサーでは正確に認識できず、今までロボットでハンドリングするのが困難だった。

 開発を担当した環境メカトロニクス事業部技術開発部商品開発課の北井基善課長補佐は「ケーブルの配線作業は人なら簡単にできるがロボットには難しく、自動化がほとんど進んでいないのが現状」と説明する。

輪郭形状をベクトルで表現

ケーブルの輪郭の形状を認識する「Kurasense-C100」

 クラセンスの最大の特徴は、ケーブルなどのたわみやねじれ、曲がり具合を高速で、そして正確に認識するスキャン技術だ。
 一般的な3Dビジョンセンサーは物体の全体の形状を膨大な点群の集まりとして認識し、あらかじめ用意した3DCAD(設計用ソフトウエア)データと照らし合わせる「パターンマッチング」と呼ばれる方式を採用することが多い。
 「数万から数千万にも上る点群データの中からCADデータに合う形状を探す必要があり、計算量が膨大になる」と北井課長補佐は語る。

 これに対し、クラセンスは0.1mmの間隔で並んだ点と点を結び、ケーブルの輪郭の形状だけをベクトル(大きさと方向を持った量)で表現する「線分ベクトル認識」という手法を取った。点の一つ一つが座標になっており、つかむ位置をクラセンスが座標値として算出し、ロボットに指示する仕組みだ。

パターンマッチングが不要な独自の「線分ベクトル認識」方式(提供)

 輪郭の形状だけなので、全体の形状を点群で表現するパターンマッチング方式と比べ、データの処理速度を大幅に向上できる。そのため、たわみやねじれも含めたケーブルの形状を瞬時にスキャンできる。北井課長補佐は「ケーブルに特化したからこそ、高速処理が実現できた」と胸を張る。

 高速スキャンの技術により、ケーブルの形状を「見たままに」認識できるため、パターンマッチング方式とは違って事前に3DCADデータを用意する必要もない。
 また、カラーセンサーも搭載しており、ケーブルの色も見分けられる。複数の色のケーブルの中から、特定の色のケーブルを識別してつかむことも可能だ。

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