2025.08.18
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[SIerを訪ねて vol.59]インドネシアで培った技術を逆輸入/千代田興業

今から15年ほど前、千代田興業(大阪市北区、瀬田川哲也社長)はインドネシアでシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としての第一歩を踏み出した。「今ではインドネシアの現地法人CHIYODA KOGYO INDONESIA(チヨダ・コウギョウ・インドネシア)がSIerとして非常に高い知名度を誇る」とFASS事業部の山本雅基事業部長は胸を張る。2019年には日本でのFA事業の拠点も開設し、自動車業界から始まり今では幅広く自動化システムの導入事例を積み重ねる。

理想は人とロボットの共存

 千代田興業はコア(高機能フィルムの巻き芯)、リテーナー(ベアリングの保持器)などの樹脂製品やその他資材を取り扱う商社だ。それに次ぐ新たな事業の柱として、自動化設備の設計から製造までを行う工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)事業をおよそ15年前にスタートさせた。自動車産業への自動化システムの納入実績が多く、これまでにプレス機間のワーク(加工対象物)搬送やパレタイズ(荷積み)、デパレタイズ(荷降ろし)、溶接などさまざまな自動化システムの構築を手掛けてきた。

 「人がやるまでもない単純作業や人にかかる負荷が大きい作業を自動化し、人に価値のある作業を任せられる環境を作るのが理想的。安易に人を減らすのでなく、人とロボットが共存できる社会づくりに貢献したい」と山本事業部長は強調する。

始まりはインドネシア

インドネシアにおけるFA事業の拠点であるCHIYODA KOGYO INDONESIA

 同社が他のSIerと比べて異色な点は、自動化システム構築のノウハウをインドネシアで培ったことだ。2000年ごろに日本企業がインドネシアに製造拠点を置く流れが始まった。その流れに先駆けて、千代田興業は日本国内向けのリテーナーの新たな製造拠点として現地法人チヨダ・コウギョウ・インドネシアを1997年に設立した。

 リテーナーの製造に加え金属加工業も行っていた中、インドネシアに拠点を置く日本企業から工場の自動化に関する相談を受けるようになり、2010年ごろに探り探りでFA事業をスタートした。「日本では人手不足を理由に自動化に取り組み始める企業が多いが、インドネシアでは賃金の高騰を受けて自動化にかじを切る企業が多かった」という。
 現在ではインドネシアの現地法人の従業員数は200人に達し、一大組織へと成長した。

金属加工向けのノウハウを蓄積

FA事業の拠点である尼崎FA工場

 直近でインドネシアでは自動車メーカーや空調設備メーカー向けのプレス間搬送システムの納入実績が多い。インドネシアに製造拠点を構える日本企業の中でも、自動車メーカーから自動化の相談を受けることが多く、金属加工に関する自動化のノウハウが特に蓄積された。

 また、金属加工分野の他にもパラレルリンクロボットなどを使った食品のピッキングロボットシステムのような食品分野向けの自動化システムの構築も得意とする。

 FA事業の立ち上げ当初は拠点がインドネシアだけだったが、19年に大阪市淀川区に日本でのFA事業の拠点を構えた。22年には事業規模拡大のため、兵庫県尼崎市に尼崎FA工場を開設し、拠点を移した。インドネシアの現地法人から技術者を尼崎FA工場に出向させて、これまでに培ったノウハウを日本の拠点にも展開する。

「日本におけるパートナー企業を増やしたい」とFASS事業部の山本雅基事業部長

 インドネシアでは金属加工や食品向けで実績があり、日本でも自動車向けの案件が増えているが、これまでの実績に縛られることなくさまざまな業界をターゲットとする。日本での直近の案件として、3Dビジョンカメラでワークを積載するパレットを認識し、6軸垂直多関節ロボットでワークをパレットに設置するシステムや、ロボットのエンドエフェクターに搭載した超音波融着機でワーク同士を融着するシステムなどを構築した。

 他にも、「日本においてFA事業は始めたばかりのため、企業間の横のつながりがまだ乏しい状態。日本各地の同業者や協業できるパートナーを増やしてネットワークを広げ、日本での実績を増やしたい」と山本事業部長は意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

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