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2021.02.24

[特集 物流機器は新世代へvol.3]群雄割拠のAGV・搬送ロボット【前編】

提案の幅を広げる国内ベンチャー

AIソフトウエアなどを手掛けるグラウンドが開発したピア

 GROUND(グラウンド、東京都江東区、宮田啓友社長)はメーカーではなく、自社の物流向け人工知能(AI)ソフトウエアや他社の機器を組み合わせて物流ソリューションを提案する企業だが、ピッキングを補助する搬送ロボット「PEER(ピア)」を開発。自社システムに組み込んで提供する。集荷の対象物がある棚の前に自動で移動するタイプの製品だ。

 台車型のAGV「CarriRo(キャリロ)」などを販売するZMP(東京都文京区、谷口恒社長)は20年8月、「ハイブリッドSLAM搭載キャリロAD+(プラス)」を発売した。
 キャリロは従来、ビーコン(発信機)を付けた人や搬送車の後ろを付いて回る追従式と、床面に貼ったテープの記号を読み取って自動で動く2つの方式で制御していたが、オプションでSLAM方式にも対応した。

 また、SLAM方式ではないがDoog(ドーグ、茨城県つくば市、大島章社長)も20年10月、追従式に加えて新たな誘導方式に対応した製品を発売した。
 「サウザー」シリーズの新製品、「サウザーベーシック」では、記憶させた経路を自動走行する「メモリトレース」機能を新たに搭載した。自動走行させたいルートを手動操作で通ることで周囲の風景などを記憶し、自動走行のためのデータを生成する。設定が容易で、現場の作業者がルート変更に対応できる。

  • SLAMモードで人を自動で避けるZMPのキャリロ+

  • メモリトレース機能を新たに搭載したドーグのサウザーベーシック

高可搬がトレンド

オムロンのモバイルロボットHD-1500は最大可搬質量1.5tを誇る

 高可搬化もAGVのトレンドの一つ。荷物を載せた荷役台(パレット)や棚、台車を運んだり、自動車のような重量物を運ぶAGVには大きな可搬質量が求められる。フォークリフトや構内運搬車・けん引車からの置き換えだ。

 海外メーカーに加え、この1年で最大可搬質量1t以上のAGVを出す国内メーカーが増えた。
 例えばオムロンは20年7月、従来は可搬質量60、90、250kgだったAGV「モバイルロボットLDシリーズ」に、最大可搬質量1.5tを誇る「モバイルロボットHD-1500」を追加した。
 SLAM式の製品で、周囲に6つのレーザーセンサーを搭載し、全周360度をリアルタイムでモニタリングして、スムーズな動作と安全性を確保する。同社の制御システムでは搬送ロボットを最大100台まで1つのシステムで制御できるため、最適な配車を計算して、AGV同士の渋滞をなくせる。

トヨタL&Fのキーカート1000kg可搬モデルは基本タイプとけん引専用ショートタイプの2種類

 トヨタL&Fは9月、エントリーモデルのAGV「キーカート」のラインアップを拡充した。これまで最大可搬質量500kgだった同シリーズに、1000kgまで運べるモデルを新たに追加。全国40社の取扱店で販売を開始した。
 キーカートはシンプルな構造や簡単な設定、低価格などをコンセプトに14年から販売する磁気テープ誘導方式のAGV。台車などによる搬送を自動化し、幅広い業種で導入実績を持つ。1000kg可搬モデルは、磁気テープがなくても最大で3m走行できる「プログラムステアリング」機能などを備える。基本タイプの「ATBE07」とけん引専用のショートタイプ「ATBS07」の2種類を用意する。

 大手も国内外ベンチャー企業もこぞって新製品を開発し、シェア争いを繰り広げるAGVは、それだけ今後の普及拡大が期待できる機器とも言える。今回紹介した他にも、AGVを開発、販売する企業は多い。
 AGV市場はまさに群雄割拠の様相を呈すが、メーカーとしてAGVを製造・販売する以外の方法でアプローチする企業もある。後編では、AGVの要素技術や、新たなビジネスモデルを取り上げる。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)



特設ページ:特集 物流機器は新世代へ vol.1~7

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