[注目製品PickUp!vol32]汎用性・拡張性で差別化! 高把持力タイプ発売【後編】/シナノケンシ「ARH350A」
ASPINA(アスピナ)ブランドで展開するシナノケンシ(長野県上田市、金子元昭社長)は2021年1月7日、3爪電動ロボットハンド「ARH350A」を発売した。汎用性や拡張性を重視して開発したロボットハンドで、19年末に発売した「ARH305A」と比べ、把持力を10倍に向上させた。「350Aと305Aではそれぞれ得意な作業が異なり、この2製品で幅広いニーズに対応できる」とALビジネスユニットRT開発課の佐々木岳課長は語る。
使い分ける2製品
前編(その記事はこちらから)で紹介したように、シナノケンシが19年末に発売したロボットハンドの第1弾「ARH305A」と、21年1月7日に発売した第2弾「ARH350A」との間には、コンセプトや特徴など共通点が多い。 しかし、「構造や、得意な作業はそれぞれ異なる」と開発担当者の佐々木課長は言う。 305Aは特殊なカムを使って爪を開閉する。一方、350Aでは歯車の組み合わせでモーターの回転を開閉動作に変換する。
プラグ&プレーに対応
シナノケンシのロボットハンドARH350AとARH305Aは、安全柵なしで稼動させられる協働ロボットと親和性が高いという。 「単純な動作速度で比べれば、これまで一般的だった従来品には及ばないが、汎用性が高く柔軟に運用できる。これは、わが社のロボットハンドと協働ロボットに共通する特徴」と佐々木課長は言う。 そこで、ハンドを協働ロボットに取り付ければ自動で認識され、すぐに使える状態になる「Plug&Play(プラグ&プレー)」機能を搭載した。 305Aは協働ロボット最大手のユニバーサルロボット(UR)のみへの対応だったが、350AではURの他に、台湾のテックマンロボットや、ファナックの新型協働ロボット「CRXシリーズ」に対応。その他複数のメーカーの協働ロボットにも対応予定だ。 また、350Aではオプション取り付け用のねじ穴なども充実しており、今後は組み込みが容易な純正オプションなどもラインアップする計画だ。
トータルコストで訴求
シナノケンシのロボットハンド350Aと305Aはどちらも、1台でさまざまな物をつかむことを狙って開発された製品だ。 ARHシリーズは海外メーカー製の協働ロボット用ハンドと比べれば安価だが、エア駆動で単純な開閉動作のみをするロボットハンドと比べれば価格が高い。「しかし、従来型のロボットハンドで複数種類の物に対応しようと思ったら、複数のハンドと、ハンドを付け替える自動ツールチェンジャーが必要。ハンド1台で済めば、トータルで見れば費用を抑えられ、ハンド交換の時間も削減できる」と佐々木課長は言う。 今回、繊細な作業が得意な305Aに加え、把持力の強い350Aをラインアップしたことで、幅広い産業を狙える体制が整った。 「ロボットハンドのメーカーとしては後発だが、モーターメーカーならではの競争力のある製品がそろった。展示会などでの反応もよく、引き合いも多い。3年後には両製品合計で年間1000台を目指す」と佐々木課長は展望を語る。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)