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2022.03.15

[国際ロボット展 特別リポートvol.6]工作機械の自動化も進化/シチズンマシナリー、KUKAジャパン、シュンク・ジャパン

まん延防止等重点措置が実施される中でも約6万2400人の来場者を集めた「2022国際ロボット展(iREX2022)」。Vol.3ではユニバーサルロボットによる工作機械の自動化提案を取り上げたが、他にも工作機械向けの自動化を提案する企業は多かった。各社工夫を凝らし、新たなソリューションをアピールする。ひと口に工作機械向けと言っても、その提案内容は幅広い。

ガントリーに産ロボを/KUKAジャパン

KUKAジャパンはガントリー式のロボットシステムを展示

 KUKA(クカ)ジャパン(横浜市保土ヶ谷区、アラン・ファム社長)は、搬送装置「ガントリーローダー」に産業用ロボットを取り付けた自動化システムを出展した。自動化装置メーカーの技研(石川県能美市、宮本秀一社長)と共同で開発した。

 ガントリーローダーは、工作機械への加工対象物(ワーク)の付け外しやワーク搬送をするための門型の装置。一般的なものは、水平と垂直の直交軸だけで構成される。展示したシステムでは、垂直方向の動作軸をKUKAの垂直多関節ロボットに置き換えた。受注生産のため、可搬質量や可動範囲、搭載するロボットの台数はカスタマイズできる。

 技研の前波将副社長は「通常のガントリーローダーでは、ワークを持ち上げる際、垂直軸が上方向に長く突き出る形になるため、天井まで十分な高さが必要だった。垂直軸の代わりにロボットを使うと、関節を曲げて持ち上げる動作となるため、上方向への突き出しをなくせる。例えば、従来は4.5mの天井高が必要だった装置でも3mほどで済む」と話す。
 今後は、搬送以外の用途にも応用を検討する。今回展の反響も踏まえながらロボットの汎用性を生かした用途を開発する計画だ。

工作機械の横で黙々と測定/シチズンマシナリー

シチズンマシナリーは「計測セルドッキング」を出展

 国際ロボット展と一体で開かれた同時開催イベント「グッドファクトリーショップ」には、工作機械メーカーのシチズンマシナリー(長野県御代田町、中島圭一社長)が出展した。工作機械の一種の旋盤で作ったワークを検査するロボットセルシステム「計測セルドッキング」を展示した。

 同システムは同社が展開するロボットシステム「FAフレンドリー」の一つ。ユニバーサルロボット製の協働ロボットと検査するワークを置くパレット、ワークの内径検査や外径検査、長さ検査、外観検査用のユニットを組み合わせた。
 外観検査装置には、グループ会社のシチズンファインデバイス(山梨県河口湖町、篠原浩社長)の光学ユニットを使うなど、グループ内連携の強みも生かした。

 担当者は「一般的に専用の検査室で測定するが、簡易的な検査を生産現場ですぐに実施するニーズはある。協働ロボットを使ったことで、人が行き交いやすい工作機械の横で、コンパクトに4種の測定をできるのが特徴」と胸を張る。

ハンド、電磁弁、ノズルを一つのパッケージに/シュンク・ジャパン

モジュール型グリッパー MTBを使ったデモと、シュンク・ジャパンの星野泰宏社長

 ドイツのロボットハンドメーカー、シュンクの日本法人のシュンク・ジャパン(東京都品川区、星野泰宏社長)は「モジュール型グリッパー MTB」を初披露した。工作機械への部品供給に最適な新製品で、協働ロボット用ハンドや電磁弁、切りくず除去用のエアブローノズルを一つのパッケージにまとめた。
 同社はチャックと呼ばれる工作機械の周辺機器なども手掛けており、現在はMTBとチャックのセット提案に力を入れる。小間ではMTBを搭載したファナックの協働ロボット「CRXシリーズ」と自社製チャックを使い、部品供給の自動化のデモを披露した。
 
 この他、バリ(加工物の縁などにできる小さな突起物)取り用ユニットや研磨用ユニットなどのさまざまな製品も展示する。星野社長は「幅広いアプリケーション(使い方)を提案したい」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史、西塚将喜)



[2022国際ロボット展(iREX2022)特別リポート]


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[国際ロボット展 特別リポートvol.11]THKが見据える、自動化普及の「次の段階」
[国際ロボット展 特別リポートvol.12]先進技術で全体最適を提案/三菱電機


国際ロボット展(iREX2022)直前特集 vol.1~vol.6はこちらから
(vol.1~vol.6の記事一覧ページが開きます)


国際ロボット展(iREX2022)直前特集 vol.7~vol.10はこちらから
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