2019.07.29
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塗装ロボットが熟練工の技をまねる、日本市場のさらなる開拓へ/ABB

業界初の塗装機で機器状態を把握

新製品のベル型塗装機「RB1000i-WSC」

 「IoT機能を持った塗装機は業界初」――中島事業部長はそう話す。

 内側から塗料を噴き出すベル型塗装機「RB1000i-WSC」は、振動や加速度のセンサー、ノズルやモーターなど主要部品に、非接触でデータを読み書きできるタグ「RFID」を搭載し、ロボットの塗装データと連携できる。また塗装機器の状態も把握できるため、部品の交換時期などが分かる。

 会場では自動車ボディーの内板と外板の塗装を実演。塗装機先端部に付着した塗料の洗浄機能をアピールし、さらに外部洗浄装置「ベルクリーナー」で塗装に影響するノズル穴の洗浄効果も披露した。

水性塗装機「RB1000-CE」と「RB1000i-WSC」で自動車塗装の実演
2つのロボットを組み合わせて外板、内板の塗装をする
実演では先端のベル部分の洗浄機能をアピールした
RB1000i-WSCの塗装

日本一面倒見がいい会社に

協働型双腕ロボット「YuMi(ユーミィ)」

 ABBの強みはロボットだけでなく、塗装機も製品ラインアップにあることだという。

 「塗装用ロボットを開発する企業はいるが、塗装機もセットでできる企業は少ない。さらに塗装の工程まで詳しく話せて、求める機能を設備に反映しメンテナンスまでできる企業はうちだけではないか」と中島事業部長は自信を見せる。「もちろん塗装だけでなく、プレスや溶接の工程でも同じことが言える」とも付け加える。

 現在は①設計のしやすさ、使いやすさなど追求する「シンプル」②人とロボットがスペースを共有でき、人の隣でロボットが働ける「コラボレーション」③さまざまな作業のデータを収集し、過去の蓄積したデータから作業を最適化する「デジタリゼーション」――の3つのキーワードをもとに、業務の改善ができるロボットシステムの開発に取り組む。「そんなことできない」と諦めていたことや、「こんなことをやってみたい」といった顧客の思いを実現できるシステムやサービスを提供するという。

 そのためにも初期の検討段階から据え付け、ロボットシステムの立ち上げ、メンテナンス、持続的な改善まで、最初から最後まで関わる企業を目指す。「日本で一番の面倒見のいいロボットメーカーを意識して接したい」と中島事業部長は強調する。

送配電の事業売却でロボットへさらに注力

「これからは三品産業などにも挑戦したい」と中島秀一郎ロボティクス事業部長

 ABBのロボット事業部は世界中にある。その中でも日本はシステムの開発や製造、サポートの全てをそろえる数少ない拠点の一つだ。

 充実した拠点機能やサービス体制、さまざまな作業に対応できる豊富なアプリケーション(使い方のノウハウ)を持つことで、外資系企業ではあるが国内メーカーにも引けを取らない顧客への対応を可能にする。

 

 「日本市場はABBにとって重要な位置付けにある」と中島事業部長は説明する。ロボット導入の対象となる業界は増えつつあり、以前は自動車向けがほとんどだったが、14年からは食品、医療、化粧品の三品産業にも参入。昨年からは工作機械で加工する部品の運搬や荷役作業をするマテリアルハンドリング(マテハン)も手掛ける。

 昨年12月にABBは世界中で展開する送配電事業を日立製作所に売却することを決め、代わりにロボット事業部に力を注ぐ方針を示した。「売却によってロボット事業の比重が高まり、その要の一つであるABB日本法人、そして日本市場の重要性も高まった」と中島事業部長。

 国内に競合するロボットメーカーが多いが、同社が得意とする塗装分野で最新の製品やシステムを提案、さらには三品産業などの新しい分野にも注力することで、国内市場の開拓を図る。

 

――終わり

(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

 

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