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2022.06.27

[特集 ロボットテクノロジージャパンvol.6]工機到来! 見どころは「ロボ×工作機械」

RTJ2022ならではの特徴に、数多くの工作機械メーカーが出展することが挙げられる。産業用ロボットと工作機械が融合した自動化システムが、今回展の見どころの一つになるだろう。機械加工分野向けのロボットの出荷額は、工作機械の長納期化などを受けて足元では減少傾向にあるが、製造現場の自動化ニーズは依然として大きい。会場でも自動化を求める来場者と、自動化提案に注力する工作機械メーカーとの間で熱い商談が期待できそうだ。

18年以降は違った動き

 産業用ロボットの需要は金属加工の現場でも着実に高まっている。

 日本ロボット工業会が発表した会員ベースの機械加工分野向けのロボット出荷額と、日本工作機械工業会の工作機械受注額の推移を下のグラフにまとめた。機械加工分野は「ロード・アンロード」「機械的切断」「研磨・バリ取り」「その他機械加工」の4つで構成される。全体の出荷額の2%~3%程度しか占めないが、ロボット業界全体の成長と合わせて機械加工分野の需要も右肩上がりで拡大した。
 機械加工分野向けのロボットの出荷額はリーマン・ショックで景気が低迷した2009年を境に増加に転じ、15年には150億円、17年には200億円を突破した。工作機械の受注額も17年まではおおむね似た傾向で推移しており、08年~17年だけを見れば両者の相関係数は0.86と極めて高い。

 だが、機械加工分野向けのロボットの出荷額も工作機械の受注額も、18年以降は違った動きを見せた。19年には米国と中国の貿易摩擦問題、20年には新型コロナウイルス禍の影響で、受注額は2年連続で大幅に減少。とはいえ、製造現場の自動化の需要は依然として大きく、コロナ禍で非接触化のニーズも高まったことから、出荷額は200億円台を維持した。

 また、受注額は18年や21年に極めて高い水準を記録したのに対し、出荷額は両方とも前年割れとなったのも大きな違いだ。その要因の一つに、工作機械の長納期化の問題があるとみられる。機械加工分野でのロボットの主な用途はワーク(被加工物)の脱着作業で、ロボットは工作機械とセットアップされた状態で出荷されるケースが多い。そのため、工作機械の受注が好調でも要素部品や半導体の需給がひっ迫して納期が延びれば、その分ロボットの出荷も遅れる。
 最近は半導体不足の影響が尾を引き、工作機械の生産が伸び悩む。自動化の需要の高さとは裏腹に、21年の出荷額が前年を下回ったのも、こうした背景があるからだと考えられる。

協働ロボットに注目

 工作機械の受注が好調で、製造現場の自動化ニーズも高い事業環境下で初開催されるRTJ2022。ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)だけではなく、工作機械メーカーも数多く出展するのがRTJならではの特徴だ。
 工作機械メーカー各社は最近、工作機械とロボットを組み合わせた自動化システムの提案に力を入れており、今回展でもさまざまな自動化ソリューションが見られるだろう。来場者と出展者との間で、自動化を切り口とした熱い商談が期待できる。

 中でも注目を集めそうなのが、協働ロボットシステムだ。協働ロボットは安全柵なしで稼働でき、取り扱いも簡単なことから、金属加工の現場では多品種少量生産や変種変量生産の自動化に力を発揮する。
 DMG森精機(D-53)は協働ロボットを使ったワーク・ハンドリング・システム「MATRIS Light(マトリスライト)」を出展する。手押し台車に協働ロボットが搭載されており、専用工具を使わなくても短時間でセットアップができる。移設も簡単で、使わない時にはすぐにシステムを工作機械から取り外せる。

 ヤマザキマザック(C-69)は協働ロボット自動化セルの新製品「Ez LOADER(イージーローダー)20」を披露する。約15分で移設ができる上、シンプルな操作で動作設定が完了するため、簡単にシステムを立ち上げられる。空圧式の大型ロボットハンドを搭載し、最大10kgまでのワークを搬送できる。
 
 コンパクトで汎用性が高い協働ロボットシステム「TR-10W」を提案するのは滝澤鉄工所(C-22)。独自のティーチングレスシステムを搭載しており、ロボットの専門知識がなくてもセッティングが可能。手押し台車方式を取り入れ、作業者一人でも簡単に移設できる。

 シチズンマシナリー(長野県御代田町、中島圭一社長、D - 5 5 )はロボットシステム「F A Friendly(フレンドリー)」を展示する。洗浄や計測などの機能モジュールと協働ロボットをカートの上に組み込んだ「オンカートタイプ」や、自動盤の機上に協働ロボットを搭載する「オンマシンタイプ」などを披露する。

脱着作業を切り口に

 前述の通り、機械加工の分野では主にワークの脱着作業の自動化にロボットが使われる。今回展でも、脱着作業の自動化を切り口とした展示が数多く見られそうだ。
 シギヤ精機製作所(広島県福山市、鴫谷憲和社長、C-29)は、高速CNC偏心ピン研削盤「GPEL-30B.25」と協働ロボットを組み合わせた自動化システムを展示する。同機はエアコンのコンプレッサーや減速機の偏心部品の量産加工に力を発揮する。

 ホーコス(広島県福山市、菅田雅夫社長、C-64)も、摩擦撹拌(かくはん)接合(FSW)機能付き複合加工機「NS70 FSW」や独自のセミドライ加工技術「iMQL」、協働ロボットを生かした自動化システムを出展。協働ロボットがワークの脱着や、FSW後のワークのリークテスト(漏れ検査)などを担う。

 ブラザー工業(C-52)は小型マシニングセンタ(MC)「SPEEDIO(スピーディオ)」専用のローディングシステム「BV7-870」を展示する。ワークの脱着に特化したことで軸数を4軸に抑え、外部のSIerに頼らなくてもユーザー自身で簡単にティーチング(動作を覚えさせること)ができるようにした。

 高松機械工業(D-26)はロボットシステム「ServoROT(サーボロット)-01」を披露。垂直多関節ロボットとトレーチェンジャーを一体化したパッケージ製品で、畳一畳分のスペースさえあれば既存機にも後付けできる。既設機に搭載できる点をPRするため、10年前のCNC旋盤とセットで展示する予定だ。

 ワークの脱着作業を自動化する手段はロボットだけではない。量産加工には昔からローダーが使われており、今回展でもローダーを通じた自動化提案に注目が集まるだろう。
 村田機械(京都市伏見区、村田大介社長、C-57)は、新開発の次世代ガントリーローダーシステム「FLEX EZ LOADER LOPROSS(フレックス・イージー・ローダー・ロプロス)」を搭載した平行2主軸旋盤「MW120Ⅱ」を提案する。チャック(複数の爪でワークを固定する補助器具)の爪のストロークが長いため、爪交換をしなくても多品種のワークを搬送できる。
 
 独自開発の機内搬送装置「E-Loader(イーローダー)」の拡販に注力するエンシュウ(D-12)は、立形MC「GE30V」と組み合わせて「Easy Automation(簡単な自動化)」を提案する。最大可搬質量は50kgで大型ワークの搬送も可能だ。周辺装置にパレット・ストッカー・システムも加え、多品種生産のニーズにも応える。

機内か、機上か?

 工作機械とロボットを組み合わせる場合、工作機械の前面にロボットを据え付けるケースが多い。だが、最近は工作機械の「中」や「上」にロボットを配置し、ワーク脱着の自動化を実現するソリューション提案も増えた。
 オークマ(D-65)は複合加工機やCNC旋盤の機内で稼働するビルトインロボット「ARMROID(アームロイド)」のPRに力を注ぐ。小間では、アームロイドを搭載した複合加工機「MULTUS(マルタス) B250Ⅱ」などを展示し、多品種少量生産の自動化から量産の自動化まで幅広いニーズに応える構えだ。

 トーヨーエイテック(広島市南区、早野祐一社長、C-61)も立形内面研削盤「TVG-15CA」の機内に垂直多関節ロボットを配置し、内面研削加工の自動化需要を狙う。同機は外気やクーラント、研削熱の影響を抑える機械構造を採用しており、長時間の安定加工を実現する。また、ロボットは砥石の自動交換などを担う。

 CNC精密円筒研削盤「G18-Ⅱ SB」の上にロボットを置き、低コストで省スペースな自動化を提案するのはツガミ(C-44)。小物ワークの高精度外径研削の自動化需要に応える。機上のロボットがワークの脱着から姿勢変更、搬送、整列までの複数の作業を1台でこなす。

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