生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.01.08

イベント

[特集 国際ロボット展vol.15]ロボットの可能性を広げる関連技術や周辺機器

開催前の出展概要の紹介から、開催後の展示リポートまで約1カ月にわたり掲載してきた「特集 国際ロボット展」。最後を締めくくるこの記事では、ロボットの要素部品や人工知能(AI)などの関連技術、ロボットの機能を拡張する周辺機器などの展示を取り上げる。大手ロボットメーカーと比べればブースは小さいが、各社とも熱を込めて工夫を凝らした新製品などをアピールした。

協業によりAIを提案

 近年ロボット業界で大きな注目を集めるのがAI技術だ。昨年12月に都内で開かれた「2019国際ロボット展(iREX2019)」では、AIに関する新たな取り組みを発表する企業もあった。

 会期初日の12月18日、オムロンとゲームソフト開発会社のスクウェア・エニックスが協業を発表した。オムロンのセンシング技術とスクウェア・エニックスがゲーム開発で培った人工知能(AI)「メタAI」を組み合わせ、「人のモチベーションを高めるAI」を共同研究する。メタAIはゲームなどでプレーヤーの心情を察知し、ゲームの難易度や対応を柔軟に変化させるAI。
 メタAIを搭載するのは、人と卓球のラリーをするオムロンの卓球ロボット「フォルフェウス」。次世代機では、退屈ではない適度な難易度で返球し、プレーヤーのモチベーションを高め成長を促す。

 近藤製作所(愛知県蒲郡市、近藤茂充社長)は産業用カメラや画像処理機器を取り扱うPhoxter(フォクスター、大阪府豊中市、西村智典最高経営責任者<CEO>)と協力し、AIを駆使した画像認識システムを提案する。カメラで対象物を撮影して傷の状態を把握し、あらかじめ作業者が決めた許容値に基づいて良・不良を判断する。
 「加工現場の省人化は進むが、その先、検査工程はまだ人の手、目を使うところが多い。そこの省力化システムを提案したい」と近藤茂充社長は強調する。

  • 2019国際ロボット展に出展された第5世代フォルフェウス

  • AIを使った良否判定を提案する近藤製作所の近藤茂充社長(左)とフォクスター担当員

ロボットの用途を広げ、性能を高める

ジクサーを取り付けたロボットと田名網克周Fプロジェクトリーダー

 新東工業は、独自の産業用ロボット向け6軸力覚センサー「ZYXer(ジクサー)」をロボットのハンド部分に取り付け、実用性をアピールした。
 ジクサーをロボットの手首とハンドの間に組み込めば、ロボットが持った物の重量や重心を検出できる。搬送作業中に重量を計測できるため、これまで計測台へ運んでいた工程を省ける。「回転や押し付けの力の大きさも分かるため、ねじ締めや圧着作業にも活躍する」と新規事PJ推進の田名網克周Fプロジェクトリーダーは話す。

 クラッチやブレーキ部品を得意とする小倉クラッチは、新開発のトルクセンサーを参考出展した。トルクセンサーは、回転の強さを計測するもの。新開発の製品は、より分解能が高く、小さな力まで敏感に感じ取れる。このトルクセンサーをロボットの関節に組み込み、力の大きさをフィードバックすることで、より繊細な作業が可能になる。

 減速機メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズは、従来品よりも軽量で薄型の減速機「CSF超軽量・偏平ユニットタイプ」を参考出展した。2020年3月までに正式発売する。例えば、最大径が170mmの型番では、重量を従来比半分以下の約300g、厚さを同4割減の約30mmにした。ロボットの先端の方の関節に搭載される小型の減速機が軽くなると、その分早く動ける。

  • 小倉クラッチはトルクセンサーでスポンジをつかむハンドを製作

  • ハーモニック・ドライブ・システムズの「CSF超軽量・偏平ユニットタイプ」(右)

TOP