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2019.09.25

イベント

国際シンポジウムで国内外の研究者・技術者が発表/ハーモニック・ドライブ・システムズ

減速機メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズは8月29日と30日の2日間、東京都江東区の東京国際交流館プラザ平成で「ハーモニックドライブ国際シンポジウム2019」を開いた。1991年以降、約5年おきに開催するイベントで、国内外の研究者、技術者による最新研究の紹介や、ユーザー企業による同社製減速機「ハーモニックドライブ」の使用事例など、2日間合計で20件の発表があった。

講演、発表が20件

 今回の国際シンポジウムでは、13の招待講演と、2つの記念講演が開かれた。ハーモニックドライブの研究発表も3件あり、海外関連会社による発表も2件あった。国際シンポジウムと銘打つ通り、登壇者の約半分は国内だが、残り半分は米国やフランス、英国、ドイツ、中国など世界各地から集まった。

 シンポジウムの開会に先立ち、長井啓社長が登壇。「ハーモニックドライブ減速機は当初用途が少なく、1980年代に工作機械に次ぐ用途として産業用ロボットに一抹の光が見え始めたが、今後どのように進化させるべきかなど分かっていなかった。この黎明(れいめい)期に、性能面での可能性や、顧客の潜在ニーズをどこまで具現化できるかなどを追求するためにこのシンポジウムは始まった。今回は当社の製品や技術に限定せず、動く物の制御に関連する幅広いテーマで20の講演を用意した。皆さまの課題解決の一助となれば」と述べた。

  • 「皆さまの課題解決に役立てば」と話す長井啓社長

  • 研究者や技術者が多数登壇したシンポジウム

巨大なヒト型ロボットを開発

 ユーザー企業による減速機の使用事例では、BRAVE ROBOTICS(ブレーブロボティクス、東京都千代田区)の石田賢司社長が登壇。人が搭乗したまま車型からヒト型に変形できる約4mのロボット「ジェイダイト・ライド」を紹介した。遊園地などのアミューズメント向けで、車として走ることも、ロボットとして歩行することもできる。
 ハーモニックドライブ減速機を組み込んだ独自のアクチュエーター(エネルギーを動力に変換する機械要素)を関節部に使っており、今後は屋外移動型サービスロボット向けとしてそのアクチュエーターの外販も目指す。
 「ハーモニックドライブ減速機は強い力がかかった時に、歯車のかみ合いがずれるラチェッティングと呼ばれる現象が起こるが、その分歯が折れたり、歯のかみ込みで動かなくなる心配は少ない。たとえ道で自動車とぶつかっても、その場で動けなくなるのではなく、安全な場所まで退避できる」と石田社長は採用のメリットを語った。

ハーモニックドライブの技術者も最新研究を発表

 また本田技術研究所(埼玉県和光市、三部敏宏社長)先進技術研究所の秋元一志主任研究員は、新たに開発した静止状態でも自立する二輪車の構造について解説した。
 その他、国内企業では日産自動車やヤマハ発動機、海外からは二足歩行ロボットで知られる米国のアジリティー・ロボティクスなどが自社の製品や技術を紹介。ヒト型ロボットの研究などで知られる早稲田大学理工学術院の菅野重樹教授など、研究者も多数登壇した。

 記念講演では、コンピュータービジョンやロボット研究の大家である米国カーネギーメロン大学の金出武雄ワイタカー冠全学教授など、海外から著名な研究者が来日し、自身の研究の一端を披露した。

  • ロビーには同社製品を使ったロボットの展示も

  • 製品展示に集まる人々

(編集デスク 曽根勇也)

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