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2022.07.12

イベント

大手ロボットメーカー幹部が未来を語る【後編】/RTJ2022「スペシャルセッション」

ロボット業界のフロントランナーが顔をそろえたスペシャルセッションは来場者の関心が高く、立ち見客も多くいた。登壇者自身にとっても業界の動向を知る機会であり、他の登壇者の発言時にメモを取る様子も見られた。「これからのロボットの使い方」とのメインテーマに基づく3つのお題のうち、後編では「ロボットの活用領域は広がる?」と「未来に向けたロードマップ」について、登壇者それぞれの主張を要約して紹介する。

テーマ2「ロボットの活用領域は広がる?」

司会を務めたロボットダイジェスト編集長の八角秀

――二つ目のお題はロボットの活用領域が広がるか否かです。これまでロボットがあまり使われなかった分野でも、導入が始まったり、あるいは今後は使えるのでないかとの機運が高まっています。皆さんの注目の分野についてお聞かせください。

神谷孝二氏 ロボットの活用領域は、広げなくてはならないと思っています。
ロボット導入のニーズが高く、ブレークスルーがあれば今後大きく普及するのではないかと期待する三品(食品、医薬品、化粧品)産業や農業についてお話しします。

 まず食品分野では人手不足が深刻で、衛生管理の面からも機械化のニーズがあり、トレーサビリティーの要求も厳しいため、ロボットがフィットすると感じています。また医薬品や化粧品の研究開発は、研究者が研究に専念できるよう単純作業を自動化し、異物の混入を防ぐなど、ロボット導入のメリットが大きい領域です。
 農業分野では、スマート農業の進展に期待しています。わが社でも、苗を植えたり収穫する作業のロボット化に挑戦したい。

 こういった新しい分野で最も知見を持っているのは、ユーザー自身やその分野に特化した設備メーカーです。その知見を統合できるような拡張性の高いロボットを開発することが必要だと考えています。

中島秀一郎氏 ロボットの活用領域は今まで製造業が主でしたが、この2、3年の間に製造業以外での活用が増えてきました。わが社が経験したのは建設や医療、ヘルスケア、物流、小売りなどの業界です。

 建設業界で典型的なのは、3Dプリンターへの活用です。ロボットの先端にプリントヘッドを取り付けることで1~2mまで造形できます。特に欧米で事例が先行しており、住宅や橋などの建設に活用されています。
 既存の現場にロボットを適用しようと考えがちな製造業に対し、建設業界ではロボットの動きに合わせて環境や現場を作ろうとの考えが先行しています。
 医療やヘルスケア業界では、研究者を単純作業やデモ品の製造から解放し、研究に集中できる環境作りが求められます。
 物流や小売り業界では製造業同様、搬送システムと融合し、物をピッキングして現場に運ぶ配膳作業を自動化するニーズが高いです。

 また、労働人口の減少は長期的にも支配的な要因です。農業や漁業、林業はとても重要な産業ですが、今の産業用ロボットがそのまま使われるとは思っていません。広い意味での自動化やロボット化に興味があり、注目しています。

  • デンソーウェーブの神谷孝二執行役員FAプロダクト事業部長

  • スイスに本社を置くABBの日本法人の中島秀一郎社長兼ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部長

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