[SIerを訪ねてvol.27]設計からAIまで!多彩な技術で自動車産業のニーズに応える/リョーエイ
300台以上の納入実績
リョーエイは専用設備だけではなくロボットシステムの製作も得意で、中でもダイカスト金型に離型剤を噴射するシステム「EcoShot(エコショット) パルススプレーシステム」は累計300台以上の納入実績を誇る。 ダイカスト製品を作る時は通常、成形品が金型に張り付かないように離型剤を塗布する必要がある。製造現場では従来、金型の冷却も兼ねてホースから大量の離型剤を放出する「ジャバ掛け」が主流だった。しかし、ジャバ掛けは冷却効果が悪く、金型の表面上に被膜を形成するのに大量の離型剤を消費しなければならない。しかも、エアブローをかけて余分な離型剤を吹き飛ばす必要もあり、作業効率も悪かった。 これに対し、同社は離型剤の噴霧とエアの吹き付けを高速で繰り返す「間欠スプレー方式」を採用したパルススプレーシステムを15年ほど前に独自開発した。 パルススプレーシステムはエアを吹き付けた時に金型の表面を効率的に冷却できるため、少量の離型剤でもしっかりと被膜を形成できるのが特徴だ。そのため、ジャバ掛けに比べて離型剤の消費量を大幅に削減できる上、エアブローの工程も不要でサイクルタイムの短縮も実現する。環境にも優しく、社会トレンドであるカーボンニュートラル(炭素中立)の達成にも貢献できる。
同社はロボットとパルススプレーシステムを組み合わせた一連の自動化システムとして、国内外の自動車産業の顧客に納めてきた。 営業部営業2課の野口吉敬係長は「平らな部分では速く動かし、凹凸の部分では動きを遅くするなど、ロボットを使えばダイカスト金型の形状に沿って動作スピードを自在に調整できる。スプレーノズルの配置やロボットの動作、噴霧と吹き付けのパターンなどをプログラミングできるシミュレーションソフトを使用し、顧客のダイカスト金型の形状に最適な自動化システムを提案できる」と強調する。 顧客からもシステムの性能や特徴が評価され、2014年度にはトヨタ自動車から技術開発賞も受賞した。パルススプレーシステムは大型ダイカスト金型がメインのターゲットだったが、リョーエイは顧客層を広げるため、今年6月には小型ダイカスト金型を対象とした「小型エコスプレーシステム」も発売した。
通い箱に特化した搬送システム
最近は、通い箱のパレタイジング(積み上げ)やデパレタイジング(荷下ろし)用のロボットシステムの提案にも力を注ぐ。 通い箱とは工場間・工程間で製品や部品を搬送するのに使われる樹脂製のコンテナのこと。製造現場では色やサイズが異なる通い箱が混在しており、従来は人が手作業で仕分けをしていた。こうした作業を自動化するため、リョーエイはトヨタ自動車九州(福岡県宮若市、永田理社長)と共同で、通い箱に特化したロボットシステムを開発した。 システムの構成はロボットや3Dビジョンセンサー、専用のロボットハンド、独自開発のプログラミングソフトなど。3Dビジョンセンサーで認識した通い箱の位置関係を基に、プログラミングソフトがピッキングする順番を判断してロボットを制御する仕組みだ。 通い箱は段ボール箱とは違って上面が空いているため、真空吸着ハンドを使って上から搬送することができない。そこで、同社は通い箱の縁をつかむハンドも内製した。ハンドにはサーボモーターが搭載されており、通い箱の形状やつかみ代に合わせてハンドの開閉や爪の位置をコントロールできるのが特徴だ。「つかみ代が異なる複数の通い箱でも1つのハンドで搬送できる。通い箱同士が密着していた場合でも、まずは片方の縁をつかんで通い箱をスライドさせて少し傾け、もう片方の爪が入るスペースを確保してからピッキングする」と西川取締役は説明する。
「まだ自動化できていない領域」を狙う
自動車産業は「100年に一度の大変革期」に直面し、電気自動車(EV)シフトなどへの対応を加速させている。そのためリョーエイも、今後はEVシフトを見越した専用設備の製作に注力する方針だ。 前述の小型エコスプレーシステムも実はその一環で、EV用の小型ダイカスト部品の需要増加を受けて市場投入したという。野口係長は「インバーターケースやコンバーターケース、モーターケースの付属部品などのEV用部品は比較的小型のダイカスト金型を使って成形される。こうした小型ダイカスト製品を手掛ける顧客のニーズに応えるためにも、低コストでコンパクトなスプレーシステムを新規で開発した」と述べる。 EVシフトへの対応と並行し、軟体物の組み付けや仕分け、目視検査など「まだ自動化できていない領域」を狙ったソリューションの開発にも挑む。 「軟体物の組み付け作業などは自動化が難しいからこそ、今もなお人手に依存している。こうした領域の自動化に貢献するのが次のテーマで、まだまだやるべきことは多い」と西川取締役は話す。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
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