「単純作業の自動化」を使命に、取り出しロボから物流、そしてSIerへ【前編】/スター精機
ロボット全体がターゲット
取り出しロボットだけにとどまらず、ロボットの先端に搭載するハンドの製作を事業化したのも同社の大きな特徴だ。ロボットハンドそのものや、「チャッキングパーツ」と呼ばれるハンドの要素部品を設計製作する専門の部署として、アインツ事業部を2007年に立ち上げた。約30人がアインツ事業部に在籍する。 現在はハンド用の部品を1400種類そろえ、特注対応なども含め全世界で年間3000点のロボットハンドを製作する。 「取り出しロボットとチャッキングパーツでは単価が圧倒的に違う。売り上げばかりを追うと、どうしても取り出しロボットの営業が優先され、チャッキングパーツのビジネスが育たない。そう判断し、チャッキングパーツの専門部署を組織した」と塩谷社長は振り返る。
アインツ事業部では、取り出しロボットだけではなく垂直多関節ロボット向けのチャッキングパーツも手掛ける。例えば、「ツールチェンジャー OX」と呼ばれる、ロボットハンドを短時間で簡単に交換できる構成部品。取り出しロボット向けの角形と垂直多関節ロボット向けの丸形をラインアップするが、特に垂直多関節ロボット向けの丸形ツールチェンジャーの需要が年々拡大しているという。 塩谷社長は「取り出しロボットは射出成形機がターゲットだが、チャッキングパーツはロボット全体がターゲット。ロボットの需要は増減を繰り返しながらも確実に増加しているので、チャッキングパーツもそれに合わせ伸びている」と強調する。今では垂直多関節ロボット向けが、アインツ事業部の売り上げ全体の2割近くを占めるという。 また、ネット販売にも力を入れる。最近は、顧客がハンドを自作するための部品である丸パイプフレーム「ジャングルジムシリーズ」などを購入し、自社でハンドを作るケースも増えた。
コア技術生かして新しい領域を開拓
ここまでは、取り出しロボットとチャッキングパーツの2つの事業の概要や特徴を解説した。 後編では、今後の事業の方向性などを紹介する。塩谷社長は「取り出しロボットで培ったコア技術を生かして新しい市場を開拓する」と意気込む。 その新しい市場とは物流だ。同社はこのほど、物流現場で段ボール箱などをパレット(荷台)に積むパレタイジングの工程を自動化する直交型のパレタイジングロボットを開発した。
――後編につづく (ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
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