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2019.09.10

インタビュー

組織は人で成り立つ、商品に誇りを/ファナック山口賢治社長兼CEO

FA、ロボット、ロボマシンの3本柱と、モノのインターネット(IoT)基盤の「FIELD(フィールド)システム」で事業展開するファナック。今年4月に社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した山口賢治氏は「組織は人で成り立っているとつくづく感じる」「商品に誇りを持てる社員でなければ、いいものは作れない」と言い、社内環境の整備に力を注ぐ。

ロボット市場は国内堅調、中国は投資先送り

――各事業の景況をお願いします。
 工作機械向け数値制御装置(CNC)が中心のFA(ファクトリーオートメーション)事業ですが、国内向けは下がっています。ただ、海外市場に比べればまだ堅調と言えるでしょう。メーカー別、市場別でも濃淡があると感じます。海外では、中国市場が低迷しており、現地メーカーは厳しい状況です。台湾も中国の景況感に引きずられる形で落ち込んでいますし、韓国はそもそも国内市場が良くない。欧州は「悪い」というほどではありませんが、日本と同じような感じですね。インドは、これまでの期待感とは裏腹にぱっとしません。自動車が売れなくなっているのと、排ガスの規制強化策が影響しているようです。

――ロボット市場はいかがですか。
 ピーク時ほどではありませんが国内は堅調です。北米は車体プロジェクトの合間にあり低迷しています。次の立ち上がりが秋以降か来年になるか、といった状況です。欧州はやや低調です。中国は、投資意欲は感じるのですが、先送りされている状況です。ただ、ロボットはFAと比べて全体的に落ち込みが少ないです。

――ロボマシン事業はいかがですか
 小型マシニングセンタのロボドリルは、IT向けの市場が低迷しており、当面はあまり期待できません。射出成形機のロボショットは、他事業比で下落率が低く、精密レンズ向けなどが活発です。放電加工機のロボカットもやや落ちています。

――中期的な市場見通しをお願いします。
 FAもロボットも、中期的には戻るでしょう。ただ、数カ月以内の反転上昇は難しいとみています。人によっては2~3年かかるとの意見もあるので、たとえ2~3年厳しい時期が続いても耐えられるよう準備しています。ただ、5年前、10年前に比べて生産の変動が激しく、一度需要が回復すると大きく動くと予想されるため、重要部品は在庫を多めに持つなど、対策を講じています。

――IoT基盤のフィールドシステムは。
 自動車メーカーの工場などで活用され始めていますが、本格普及には時間がかかるとみています。わが社では従来、商品を自社工場で徹底的に使い込むとの考え方があり、今は各工場にある約1000台の設備機械をフィールドシステムでつないで「見える化」を図り、データの活用に取り組んでいます。また、現場作業者の気付きを促す効果も大きいです。最終的には「自律的に考えて動かす」を目指していますが、その前の段階でも有効に使えます。

仕事を任せ、組織を回す

「景気のいい悪いに関係なく、販売と開発を強化する」と話す山口社長

――開発、生産、販売の戦略をお願いします。
 まず、販売と開発は「景気のいい悪いに関係なく強化する」と決めています。今のような減速期こそシェアの拡大や商品競争力の強化に取り組みます。商品開発では、使いやすさを重視します。私もエンジニアなので「世界最高」や「世界最速」が大好きですが、使いにくいと商品は普及しません。特にソフト開発は、多様化し細分化すると発想が縦割りになりがちです。ですから開発者には、自社の工場に行き、現場でヒアリングしたり自分で機械を使ったりしながら、ユーザーの視点で開発するよう促しています。また、ソフトウエア開発に横串を刺せるエンジニアも必要と考え、少人数の部署を設けました。一方、生産戦略ですが、工場は常に高品質の商品を1円でも安く作るのが課題で、これは変わりません。この数年は工場建屋を増やしてきましたが、現在取り組んでいる分で一段落します。もちろん、工場内設備の増強や更新は順次続けます。

――ご自身のキャリアのターニングポイントは。
 1993年の入社以来ずっとロボット開発に携わり、2000年に数人の開発チームのリーダーになりました。私以外は入社3年〜5年の優秀な若手でしたが、なかなか彼らに仕事を任せられず苦労しました。全部自分でやりたくなってしまうんです。「結局は任せなければダメなんだ」と思えるまで少し時間がかかりました。

――人に仕事を任せるのは難しいです。
 ロボット開発を離れ、生産技術本部長になった経験も大きかったです。当時、ロボットのことなら多少は分かると思っていましたが、逆にロボット以外を知らない。生産技術本部ではCNCもサーボモーターもアンプも、ロボマシンも作らねばならないし、機械加工も詳しくは知りませんでした。要するに、本部長とはいえ、生産技術の仕事が細かい所までは分からないわけです。一方、生産技術本部は入社以来ずっとその仕事に携わってきた専門家の集団。彼らとの仕事がかみ合うまで少し時間がかかりました。専門知識が劣る分、彼らの言いたいこと、やりたいことを理解して、後押ししてやらないといけないんですね。「協力してもらわないと組織は回らないんだな」と痛感しました。

――社長兼CEOとしてファナックをどうしたいですか。
 強い企業体質を維持しつつ持続的に成長できる会社にしたいです。しかし、人的資源は限られるので、事業の絞り込みが重要です。そして、やる以上はその分野ではどこにも負けない、そんな会社にしたいです。

――それを実現するには。
 社員がやる気を持って仕事に取り組める環境作りが必要です。わが社には優秀な社員が集まってくれていると自負しています。それだけに、経営陣は人材を生かし切らねばなりません。組織ってやっぱり人で成り立っているとつくづく思います。商品に誇りを持てる社員でなければ、いいものは作れませんから。 

(聞き手・編集長 八角秀)

山口賢治(やまぐち・けんじ)
1993年東京大学大学院修士課程修了、ファナック入社。2000年ロボット研究所一部一課長、03年MT本部長、07年本社工場長、08年工場総統括、専務、12年副社長、16年社長兼最高執行責任者(COO)、FA事業本部長。19年4月から現職。福島県出身。1968年生まれの51歳。

※この記事の再編集版は「月刊生産財マーケティング」2019年9月号でもお読みいただけます。FA業界英文ニュースサイト「SEISANZAI Japan」には英語版を掲載しています。

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