[新春インタビュー]ロボットは“つながる”ことで飛躍的に進化する【前編】/ファナック稲葉善治会長兼CEO
新春企画の第2弾は、ファナックの稲葉善治会長兼最高経営責任者(CEO)への特別インタビュー。製造業の自動化を追求する同社は、工作機械用CNC(数値制御)装置および産業用ロボットでトップクラスのシェアを誇る世界的メーカーだ。CNC装置や産業用ロボットの他に、製造業向けのモノのインターネット(IoT)プラットフォーム「FIELD system(フィールドシステム)」も提供する。稲葉会長兼CEOに、同社のロボット事業やIoT戦略について語ってもらった。
大きな進化が始まった
――産業用ロボットの現状をどう見ていますか?
サービスロボットや介護ロボットなど、ロボットが使われる分野は拡大しています。ロボットに注目が集まることで研究者も増え、われわれの事業領域である産業用ロボットの進化も加速しています。アームやハンドなどのハードウエアも日々進歩していますが、いま急速に発展しているのが「知能化」に関する技術です。IoT技術が、知能化技術の発達を後押ししています。ロボットは自ら学習することで賢くなれます。ロボット単体だけでなく、他のロボット、工作機械、周辺機器など、さまざまなものと“つながる”ことでさらに高い効果が得られます。学習の成果を共有することができるためです。また人と違い、ロボットは一度学習したことを忘れないので、複数のロボットや機械が学習した成果を共有します。これは単体で学習させるよりもはるかに効率的です。単体のロボットが他のロボットや設備とつながって一つの生産システムになる、これは生物の歴史で言う「単細胞生物」から「多細胞生物」への進化に似ています。多細胞生物となることで、生物は飛躍的に進化しました。ロボットでも今まさにその大きな進化が始まったところだと考えています。
――進化の大きな転換点にあると?
人と道具の歴史を振り返ると、原始時代から人類は道具を発達させてきました。なんの道具も持たずに木の実を集めて食べていたような時代から、木や石の道具を使うようになり、やがて金属製の道具を生み出して農業などが発展し、生産性はさらに上がりました。かんなのような精緻に加工する道具で、建築などの文化も発展しました。次の段階で、道具に動力を与えました。これが第一次産業革命です。回転や往復などの単純な動きでしたが、一気に社会は豊かになり、人の労働時間は減りました。その後、初歩的なプログラムで制御ができるようになりました。センサーなどで「こういった場合はこうする」というのもできますが、基本的にはプログラム通りに動くものです。従来の産業用ロボットや、数値制御(NC)工作機械などがこれに当たります。ここへきて、人工知能(AI)技術によって道具に「考える力」を与えようとの動きが始まりました。「動力」と「制御」に加えて「考える力」が加わることで、今後はロボットなどの道具が自ら考え、何もないところから何かを生み出すことさえ可能になります。
ロボットは道具であり、頼れる相棒
――AI技術が発達してロボットが自ら考えて動くようになると、人間に反乱を起こすのではと懸念する人もいます。
現実にその心配ないでしょう。ロボットは人と違って、欲がありません。おいしいものが食べたいとも思わないし、おしゃれな服が着たいとも思わない。AIは人が与えた目的に対して、それが実現できるよう自律的に判断できるだけ。疑似的に欲望を持っているかのように振る舞わせることはできますが、「あれをしたい、これをしたい」との発想がそもそもありません。もちろん、悪意のある人が使えば便利な道具も危険なものになりますが、それは道具が危険なのではなく、その人が危険なのです。どれほど進化してもロボットは人の道具でしかありません。
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