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2026.01.21
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[ショールーム探訪vol.42]SIerならではの強みを体現/メカトロニクス「高山ロボットセンター」

ロボットダイジェストの記者が読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第42回は、産業機械の設計・製作やロボットのシステムインテグレーション(SI)を手掛けるメカトロニクス(岐阜県飛騨市、駒卓弥社長)が岐阜県高山市に設立したショールーム「高山ロボットセンター」を訪ねた。多様なロボットメーカーのロボットを使ったシステムを設置することで、顧客の要望に合わせて最適なロボットを選定し提案できる強みを体現した。

平川一理:ロボットダイジェスト編集部

国内を代表する家具の町

高山ロボットセンターの外観(提供)

 岐阜県飛騨地方の中心都市、高山市。歴史的な町並みが現存し、国内外から観光客が訪れる。森林資源が豊富な飛騨地方では古くから家具作りが盛んで、日本を代表する家具の町としても知られる。

 そんな高山市にある高山ロボットセンターへは車の利用が便利だ。名古屋からは東海北陸自動車道に乗り、高山西インターチェンジを降りて北西に約5分進めば到着する。記者が訪問した11月中旬は山々の紅葉がちょうど見頃を迎えていた。「こんなにも自然豊かでのどかな場所にロボットのショールームがあるのだろうか」と戸惑いながらもカーナビ通りに向かった。

 1400㎡の広大な建屋には展示スペースの他に会議室や応接室を備え、産業用ロボットに関する特別教育を受けられるロボットスクールを定期的に開催している。周辺エリアに限らず全国各地から来場者が訪れる。見学は予約制で、同センターの公式サイトや電話から申し込める。

電気設計が得意

幅広いメーカーのロボットを展示している高山ロボットセンター

 同センターでは現在、ファナックや安川電機、三菱電機、不二越、ヤマハ発動機、中国の産業用ロボットメーカーのROKAE(ロッケー)など、幅広いロボットメーカーのロボットを使った自動化システムを8つ設置している。一つ一つがゆとりをもって並べられているため、気になったシステムをじっくりと見学できる。

 駒社長は「当センターを設立した2018年当時はロボットメーカーが運営するショールームの比率が高かった。わが社はロボットのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としてあらゆるメーカーのロボットに対応してきた実績があるため、顧客の要望に合わせて最適なロボットを選定し提案できる強みを展示で体現した」と胸を張る。

ヤマハ発動機の「リニアコンベアモジュール」を使ったシステムは主に食品産業に向けて提案する

 メカトロニクスがロボットSIerとして武器とするのは電気設計力だ。中でもコンベヤーとロボットを連携させて高精度に制御する「コンベヤートラッキング」を得意とする。

 ロボットを使った自動化システムは現場の判断で最終的にシステムを調整する「現場合わせ」の比重が特に高く、電気設計の技術力が高いほど据え付けにかかる時間を短縮してすぐに生産に入れるメリットがあるという。

 ショールームにもこうした技術力を生かしたハンドリングシステムやピッキングシステムなどを設置している。

伝統産業にも自動化を

 駒社長に一押しのシステムを尋ねたところ、一風変わった設備を紹介された。木製の椅子の座板加工を自動化するもので、材料の木材を搬入口から投入するとロボットが指定の形に座板を切り抜き、自動でツールを替えて細部に切削加工を施す。さらにツールを持ち替えて磨き工程に進み、全ての加工が終わると搬出口まで搬送する。

 これは飛騨地方の伝統産業である木工産業の中でも特に重労働が伴う家具作りの現場を省力化するために構築したシステムで、自動化が進んでいない伝統産業に向けて今後提案を強めたいという。

  駒社長は「このエリアでSI事業を展開している以上、木工・家具産業の自動化やロボット化は注力したい事項の一つ。椅子を構成する部品の中で座板の加工に最も労力がかかる。特に仕上げの磨き加工は重労働のため、ロボットに7割ほど任せられれば自動化の意義がある」と話す。

搬入出口に座板の材料をセットすると仕上げ加工まで自動化できる
ファナックのロボットがツールを持ち替え、座板の切り抜きから細部の切削加工、磨き加工までこなす

ロボット人材の育成が使命

「SIerの担い手を増やす環境作りに一役買いたい」と話す駒卓弥社長

 もともとはモーターの修理や販売を担う会社として創業した同社。その後はモーター事業で培ったノウハウを基に産業機械の設計・製作、環境プラントのエンジニアリング事業を手掛けるようになった。2005年にアルミダイカスト部品を製造するグループ企業、飛騨ダイカスト(岐阜県飛騨市、渡邉正憲社長)を設立したタイミングでロボットSI事業に本格参入した。

 同社では製造現場の人手不足が深刻化する中、自動化やロボット化の必要性にかねてより着目していた。そこでまずは飛騨ダイカストの製造現場の自動化やロボット化から着手し、アルミダイカスト業界を中心に実績を積み重ね、18年に高山ロボットセンターの開設に至った。現在は自動車産業を中心に、食品や医薬品産業などからの受注が増えている。

協働ロボットのアームを直接動かして教示する「ダイレクトティーチング」に記者も初挑戦

 駒社長は同センターを開設した目的の一つに次世代を担うロボット人材の育成を掲げる。「私たちSIerは世の中にないものを作り上げるリスクと責任を背負って日々仕事に取り組んでいる。SIerの仕事の付加価値は非常に高く、こうした人材を育成できる場が地域に必要だと考えた」と力を込める。

 これまで飛騨地方にロボットショールームやロボット教育が受けられる環境はほとんどなかった。同センターでは職場体験や見学会も予約制で随時受け入れており、地元の工業高校の生徒は毎年の恒例イベントとして足を運ぶそうだ。

 「わが社は比較的早い時期からロボットSIerとして活動し始めたため、気軽にロボットに触れられる学びの場を提供できるのはわれわれしかいないという思いで高山ロボットセンターを設立した。SIerの担い手を増やす環境作りに一役買いたい」と駒社長は意気込む。

[取材記者より]
製造現場の自動化を進めるに当たって最初にぶつかる壁は、「どこのメーカーのどのロボットを採用すべきか」ではないだろうか。高山ロボットセンターでは経験豊富なSIerが設立したロボットショールームであることを強みに、さまざまなメーカーのロボットを組み込んだ自動化システムを展示している。駒社長も「お客さまが望むシステムに対して最適なロボットを選定して提案できるのが強み」と胸を張る。同センターを訪れれば、自社にぴったりの自動化システムのヒントを得られるかもしれない。

施設概要
名称:高山ロボットセンター
所在地:岐阜県高山市清見町牧ヶ洞4409-147
見学予約については高山ロボットセンターのホームページから

 

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