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2022.02.10

連載

[ショールーム探訪vol.4]弱点を打破した、始まりの場所【後編】/ オフィスエフエイ・コム「スマートファクトリー・コンダクター・ラボ(スマラボ)小山」

磁石式ハンド

電磁石を使ったロボットハンドで金属部品を持ち上げる

 「自動車・機械ゾーン」では、主に金属加工の現場で使えるシステムを展示する。
 例えば、乱雑に置かれた金属部品を1つずつ取り出すシステムだ。カメラで部品を認識して、電磁石のついたロボットハンドで固定し、1つずつ持ち上げる。

 ただし、出っ張りなどがある面は電磁石での固定に向かない。そこで、部品の形状を認識して、固定しやすい面が上向きになるまで、部品をひっくり返す。まるで人が遠隔操作していると感じるほど器用な動きだったが、事前のプログラムで動作させている。

デジタルツインのシミュレーション画面

 この展示では、デジタル空間上にロボットや周辺空間を再現してシミュレーションする「デジタルツイン」も取り入れた。
 ロボットの稼働状況や連携するシステムの動き、全体の処理能力を事前に予測でき、システム全体の最適化に向く。また、シミュレーションによりトラブルを予見でき、現実での発生を未然に防げる。
 展示では、ロボットの先に工作機械があり、連携する想定でシステムを運用していた。

 この他にも、モノのインターネット(IoT)技術とロボットを連携させた「IoTゾーン」もある。IoTを使って、複数のロボットや機器のデータを取得しながら、連動するシステムが並ぶ。

工夫と苦労が見える

 最後は「食品ゾーン」だ。
 飯野社長は「これまでは自動車部品など金属加工向けが多かったが、新たな産業に挑戦することで自社の技術やノウハウの幅が広がる」と同分野にも注力している。
 食品向けの展示で印象的だったのは、ロボットハンドの形状だ。食品はつかむ対象物が不定形。それでも、つかみ上げる安定度を増すために、同社が何度も試行錯誤した様子がうかがえる。人が使うトングやフォークを応用したロボットハンドもあった。

 ロボットハンドは物を扱う(物理的に)最先端の機器。ロボットを制御するソフトウエアからロボット本体や周辺機器、最先端のロボットハンドまで、全てを突き詰める同社の総合力をショールームから感じ取った。

  • 爪の部分が長いロボットハンドで梅干しをつかむ

  • 爪の多いロボットハンドでサトイモをつかむ

  • トングを使ったロボットハンド(=左)やフォークを使ったものも

「見せるロボット」の原点

多くの人でにぎわうプライベートショー

 飯野社長は 「SIerは、自社の技術力を具体的に見せる場がない。顧客の設備を公開できない。技術を惜しみなく披露し、SIer自身も学ぶための施設が要る」と感じ、スマラボ小山を開設した。
 開所以来、プライベートショーなども実施し、日々の見学も合わせて年間で平均500人が訪れるほど好評を得る施設になった。そのような経験を通じて、飯野社長は「わが社としても、スマラボ小山はSIerがロボットを実演で見せる大切さを実感した原点」との思いを抱く。

 その後は、より発展した「技術を見せる展示場」を次々に開設した。
 2020年には、多品種少量生産の現場でデジタルツインを活用するイメージを実演する展示場「スマラボ東京(東京都千代田区)」を設けた。さらに昨年には、福島県南相馬市にショールームを併設しながら自社の部品加工工場としてデジタルツインを実践する「ロボコム・アンド・エフエイコム(東京都港区、天野真也社長)南相馬工場」と「スマラボ南相馬」を立ち上げた。

 それらの潮流の原点。スマラボ小山では、ソフトからハンドまで手がける同社の総合力と、試行錯誤の痕跡を垣間見た。

[取材記者から]

運がなく、いくつかの展示は調整中で見られなかったが、それも含めて試行錯誤の跡に感じた。南相馬市にあるデジタルツインの実践工場までに至る、始まりの場所。ここから順に「スマラボ巡り」をしたい。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)




施設概要
名称:スマートファクトリー・コンダクター・ラボ小山
所在地:栃木県小山市東間々田3-23-23
予約連絡先:特設ホームページから


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