生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2019.10.10

SIer2社が合弁会社を設立、相模原で生まれた新たな連携の形【前編】/トランセンド(JET、永進テクノ)

相模原市は産業用ロボットの導入支援、普及支援策が手厚い自治体として知られ、ロボットシステムを構築するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)も少なくない。その相模原で、新しい形のSIer連携に取り組むのが、JET(相模原市中央区、遠藤法男社長)と永進テクノ(相模原市緑区、鈴木道雄社長)だ。両社とも単独でもSIer事業を営むが、2016年に共同出資でトランセンド(相模原市中央区、遠藤法男社長)というSIerを設立した。

それぞれが独立したSIer

コア技術としてロボット活用に取り組むJETの遠藤法男社長

 JETと永進テクノは、それぞれ単独でもSIer事業を営む。

 JETは元々は精密加工を得意とする部品加工会社で、約15年前から設計や組み立ても手掛けるようになった。製造する専用機の中には産業用ロボットを組み込んだものもあり、SIerとしてのノウハウを身に着けた。
 当初は単なる「ロボットが使える専用機メーカー」だったが、ある時期から戦略的に会社のコア技術としてロボット活用に取り組み、食品や光学系、半導体関連の企業などにロボットを組み込んだ自動化システムを提供する。

工作機械の周辺機器メーカーでもある永進テクノの鈴木道雄社長

 永進テクノは、工作機械の切削液中の浮上油を回収する装置「ECO EiT(エコイット」を製造販売するメーカーでもあり、ロボットシステムも含めた工場設備の設置、施工を得意とするSIerでもある。
 大手重工メーカーなどに溶接ロボットシステムなどを納入してきた実績がある。

NEDOの助成事業をきっかけに協業

NEDOの事業で食品工場向けのロボットシステムを開発

 両社の社長が知り合ったのは13年ごろ。地元の事業者が集まる会合でのことで、懇親会で同じ大学の出身と分かり、親しくなった。

 その後、15年に永進テクノが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」への応募を検討した際、単独では難しいとJETに協業を提案。17年までの3カ年で、「食品工場のコンビニ向け配送仕分けロボット」を共同開発した。

 永進テクノの鈴木社長は「JETはさまざまな分野の幅広い設備を、ソフトウエアまで含めて開発してきた実績があり、その開発力はパートナーとしてとても魅力的だった。わが社は重工メーカー向けの溶接ロボットシステムなどの実績は多いが、開発力ではかなわない」と協業相手にJETを選んだ理由を話す。

 JETの遠藤社長は、「永進テクノは浮上油回収装置のメーカーとして多くの企業と取り引きがあり、顔の広さや情報収集能力がわが社とは比較にならない。現場での施工力も高く、アフターサービスの体制などもしっかりしている」と永進テクノの魅力を語る。

TOP