たわみやねじれも正確に! ケーブルに特化したビジョンセンサー【前編】/クラボウ
きっかけはタオル
同社は繊維製品で広く知られるが、ウレタンをはじめとした化成品に加え、染料の色を識別するカラーマッチングシステム、基板やシートなどの外観検査装置、写真の3D計測装置など、多岐にわたる事業を展開する。 では、ロボット用の3Dビジョンセンサーを開発した理由は何か? そもそものきっかけはある顧客からの「タオルを検査装置まで運ぶのにロボットを使えないか」との相談だった。 「最初は簡単につかめると思ったが、タオルのような柔軟物を認識するビジョンセンサーがなく、ロボットでタオルをつかむのは非常に難しいと分かった」と北井課長補佐は述べる。
柔軟物をつかむ作業を自動化できれば、新たな市場ニーズを開拓できる――。 そう考えた同社は、外観検査装置の事業で培った画像処理技術や3D計測技術を生かし、柔軟物を認識する3Dビジョンセンサーの開発に2016年度から着手した。 柔軟物と一口に言ってもケーブルやシート、リネン(シーツや布団カバー、枕カバー、浴衣、 タオルなど)、食品と多岐にわたる。 当初はTシャツを畳むロボットシステムなども開発したが、ケーブル関係の相談が特に多かったことから、ケーブルに焦点を絞って3Dビジョンセンサーの開発を進めた。そして、20年4月に満を持してクラセンスを発売した。
自動化システムにして提供
クラセンスの主なターゲット市場は、自動車や電子デバイスの組み立て工程など。従来は人手でやっていた、各種ケーブルやコネクターの挿入作業の自動化を提案していく。 同社はクラセンスを単品で販売するのではなく、ロボットなども含めた自動化システムの形にして顧客に提供する考えだ。システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として、システム一式を請け負う。 今後は、各種ケーブルや光ファイバー、コネクター付きコードなどのさまざまな線状物に対応したロボットシステムの開発に取り組む。それに当たり、ロボットメーカーとのパイプの強化が重要な課題の一つに挙げられるが、北井課長補佐は「メーカーごとに得意な領域は違う。顧客の業種やつかむ対象物に合わせたロボットシステムを提案できるよう、さまざまなメーカーと付き合いたい」と話す。
その第一弾として、クラセンスの特徴を生かした「フラットケーブル高速挿入ロボットシステム」をセイコーエプソンと協力して開発。20年10月19日から受注を開始した。 クラセンスとエプソンの小型ロボット、力覚センサーなどを組み合わせたシステムで、複数の細いケーブルを平面上に束ねたフラットケーブルの挿入作業を自動化する。 後編では、エプソン側の開発担当者の話も交えながら、システムの特徴を詳しく解説する。両社の出会いの場は19年に開催された「2019国際ロボット展」で、北井課長補佐は「お互いの技術を補完できそう、と直感的に思った」と当時を振り返る。
――後編に続く (ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
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