2025.12.05
★お気に入り登録

板金加工の自動化提案を本格化/スギノマシン

スギノマシン(富山県滑川市、杉野岳社長)が、板金加工の自動化提案を本格化する。加工対象物(ワーク)のばらつきや位置ずれを認識し、ロボットの動作補正をする自動化システムを通じて、これまで困難だった工程の自動化を実現する。杉野社長は「ロボットの動作制御をはじめわが社の技術を駆使し、製造業の発展に貢献したい」と語る。

現段階での到達点

「カエリ取りロボットシステム」などを通じて板金加工の自動化を提案

 スギノマシンが板金加工の自動化提案を本格化する。板金加工の工程にはブランク(抜き)や切断、曲げ、溶接、後処理などがあり、同社が特に力を入れるのが溶接と後処理だ。「これらの工程はワークごとの微調整が必要で、ブランクや切断、曲げなどと比べて自動化が遅れている」と杉野社長は話す。

 そこで同社は溶接を自動化する「溶接ロボットシステム」と、板材の加工時に生じるカエリ(突起物)を除去する「カエリ取りロボットシステム」を提案する。いずれもパッケージ化したロボットシステムで、同社製の産業用ロボット「CRbシリーズ」やシミュレーションソフトウエア「CROROROS(クロロロス)」に周辺機器、架台などを組み合わせた。

ワークを認識し、ロボットの動作に補正を加える

 大きな特徴は、ワークのばらつきや位置ずれなどに対し、ロボットの動作を補正できる機能にある。カエリ取りロボットシステムでは、ビジョンセンサーでワークを認識する。ワークの位置に合わせてロボットが動作するように補正をかけられるため、作業者はワークを厳密な場所にセットする必要がない。
 溶接ロボットシステムでもセンサーやビジョンセンサーを使い、同様の補正を加えられる。

 杉野社長は「ロボットの動作制御やビジョンセンサーとの連携など、わが社のあらゆる技術を融合して開発した。人手不足の対策になり、製造業の発展につながる技術として、カエリ取りロボットシステムは現段階で一つの到達点」と自信を見せる。

3年後までに50台を販売

マキノが導入したカエリ取りロボットシステム

 今年10月には、板金加工業のマキノ(東京都府中市、牧野拳一郎社長)がカエリ取りロボットシステムを導入した。マキノは1日の生産量が300個ほどで、そのうち1種類当たりの生産量は10個ほど。牧野社長は「まさに少量多品種で、段取り替えの頻度が高い。切断や曲げなどの自動化を進めてきた一方、後処理を手作業でしていることが課題だった」と話す。後処理でカエリを除去する際、ワークの種類ごとに品質の基準が異なるため自動化しづらく、また作業者が習熟するまでにも3年ほどかかるという。

 そこでスギノマシンに後処理の自動化について相談し、カエリ取りロボットシステムの導入に至った。基本的には標準仕様と同じだが、マキノの環境に合わせて架台を通常より長くする、ロボットの先端にベルトグラインダーを搭載するなどのカスタマイズも加えた。

 またマキノの要望を受けて、ロボットの動作中でもワークの段取り替えをできるようにした。ロボットが架台の右側か左側で動作している間、作業者はその反対側でワークの設置や取り外しができる。作業者が侵入して良いタイミングは、架台のライトを緑に点灯して知らせる。こうすることで、ロボットの動作中に次のワークを準備できるようになり、生産性を高められた。架台の中央にはエリアセンサーを設置し、ロボットが誤作動でその範囲を越えた場合や、人が誤ってロボットの動作エリアに入ってしまった場合は、即座にロボットを停止するようにしてあり、安全対策も十分だ。
 牧野社長は「わが社で加工するワークのうち8割ほどの後処理を自動化できた。ロボットの動作設定もクロロロスで簡単にでき、加工品質も安定している」と語る。

 スギノマシンはマキノでの導入を皮切りに、今後も板金加工向けの提案を強める方針だ。カエリ取りロボットシステムの年間販売目標を10台、溶接ロボットシステムも含めた3年後までの販売目標を50台と定め、板金加工のさらなる自動化を支援する。

(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)

同じ企業の記事

>>[注目製品PickUp! vol.9]設置面積は座布団以下!? 500mm四方に収まるコンパクトなロボット【前編】/スギノマシン「スイングアーム式コラムロボット」

>>[注目製品PickUp! vol.9]設置面積は座布団以下!? 500mm四方に収まるコンパクトなロボット【後編】/スギノマシン「スイングアーム式コラムロボット」

>>水に強いロボットを開発! 機内設置で自社商品の競争力高める/スギノマシン

>>原発の廃炉作業向けロボットを開発/スギノマシン

>>スイングアーム式ロボットの小型・軽量版を開発/スギノマシン

>>洗浄や塗膜剝離などの作業負荷を大幅軽減/スギノマシン

>>ロボットやAIを活用する新事業部を設立/スギノマシン

>>「RI事業部」発足、ロボットを中核にトータル提案/スギノマシン

>>自動化コンサルティングサービスを開始/スギノマシン

>>3Dシミュレーションソフトを発売/スギノマシン

>>ドリリング・タッピングユニットの自動工具交換オプション発売/スギノマシン

>>サービスが競争力の源泉に/スギノマシン

>>ロボットでの切削加工を可能にするエンドエフェクターを開発/スギノマシン

>>板金向けに2種類のパッケージシステムを開発/スギノマシン

>>「自動溶接は難しい」との先入観をくつがえすロボットシステム/スギノマシン

>>[活躍するロボジョvol.40]バリ取りの課題をロボットで解決/スギノマシン 荻野みなみさん

★お気に入り登録

BASIC KNOWLEDGE