[ショールーム探訪vol.39]新技術を体験できる場所/アスカ「UNI-LAB」
ロボットダイジェストの記者が読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第39回は、自動車部品事業、分電盤事業、ロボットシステム事業を手掛けるアスカが愛知県刈谷市に新設したショールーム「UNI-LAB(ユニラボ)」を訪問した。主力の協働ロボットシステムを常時約10台展示する他、ヒューマノイド(ヒト型ロボット)をはじめとした先端技術も紹介する。営業本部の安藤正人副本部長は「協働ロボットと最新の周辺機器を組み合わせて、導入イメージが湧きやすいシステムを展示している」と語る。
自動車産業の集積地に
愛知県中部に位置する刈谷市。大手自動車メーカーのグループ企業の拠点や生産工場が集積する、言わずと知れた自動車産業の集積地だ。中心駅である刈谷駅から名古屋駅までは約20分の距離でアクセス性が高い。アスカはそんな産業都市の一画に本社を構える。刈谷駅からはタクシーで北に7分ほど乗車すれば到着する。
同社は10月9日、本社ビル1階にユニラボをオープンした。展示面積は約200㎡で、常時約10台のロボットシステムを展示する。ホームページから見学の申し込みができ、入場は無料。全国の自動車産業の関係者をターゲットに据える。
協働ロボットのパッケージシステムや周辺機器などを「UNI-ROBO(ユニロボ)」ブランドとして展開する。2022年から中国のロボットメーカー、DOBOT(ドゥーボット)の一次代理店を務める。これまで、DOBOTの協働ロボットを使った自動化システムを中心に、展示会やプライベートショーで最新技術を発表してきた。
安藤副本部長は「協働ロボットシステム事業に本格的に取り組み始めたのは約3年前。当時は自動車の製造現場で協働ロボットを使うという発想が定着していなかったが、わが社は他社に先駆けて自動車業界にロボットシステムを提案してきた。ユニラボではその知見を生かした展示を目指す」と語る。
ヒューマノイドに会える
ユニラボに足を踏み入れてまず目に飛び込むのは、DOBOTが今年発売したヒューマイド「ATOM(アトム)」だ。アトムは身長165cm、重量65kgで41個の関節を持ち、直立二足歩行で移動できる。スムーズな歩行や細かい手作業など、人間の動きを高精度に再現する。ロボットに動作を教える「ティーチング」だけでなく、ロボット自身が見て考えて動く「人工知能(AI)推論モデル」による制御が可能だ。
ユニラボでは来場者の要望を受けてアトムの歩行デモや複合現実(MR)ゴーグルを使った遠隔操作デモンストレーションを実施する。ヒューマノイドを間近で見られるショールームは全国でもまだ珍しいことから、アスカはアトムを目的とした来場に期待する。
また、来場者が導入イメージを持ちやすいような展示にこだわった。ロボットだけでなく周辺機器と組み合わせた具体的な展示に加え、AI技術を搭載した機器と組み合わせた最新ソリューションも積極的に提案する。
中国のアクチュエーターメーカー、DH-Robotics(ロボティクス)の電動グリッパーを使ったデモでは、マイクに向かって欲しい飲み物を指示すると、5本指のロボットハンドが器用にペットボトルをつかんで渡す。タブレットによる操作も可能なため、製造現場の環境に応じて選択できる。
英国のCambrian(カンブリアン)のビジョンシステムを組み合わせたシステムは、ワークをフックに引っかける作業を自動化できる。AIを搭載した3Dビジョンシステムで従来は識別が難しかった光沢のある加工対象物(ワーク)や、ワーク同士の重なりを認識する。自動車部品の塗装工程は人手がかかる作業が多く自動化のニーズが多いという。
安藤副本部長は「ロボットや周辺機器をただ並べるのではなく、ロボットハンドやカメラ、AI技術などと組み合わせた具体的なシステムの展示を心掛けている。特に昨今のキーワードにAIがあり、これからはロボットが知能を持って作業をこなす時代が来る。ユニラボはそうした新しい技術を紹介する場にしたい」と力を込める
アトムの動作を試せる“体験の場“も
ユニラボの2階にアトム専用のテストルームを設け、アスカの社員による講習を開催したり来場者が自由にアトムの動作を試したりできる場として提供する。
「われわれはロボットのレンタルに対応しているが、ヒューマノイドはシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のサポートなしでは操作が難しく、安全面でのリスクも考えられる。そこで、ユニラボのテストルームを有償で貸し出し、お客さまがアトムの動作を試せる“体験の場“にしようと考えた」と安藤副本部長は強調する。
アスカは今後、自動車産業以外にも協働ロボットシステムの販路を広げる考えだ。現在はパートナー企業の開拓に本腰を入れており、ユニラボも併せて活用する。
安藤副本部長は「わが社の拠点は愛知県。地方に拠点を持ち、わが社とは異なる産業向けの自動化提案に強みを持つSIerとの連携を模索している。例えば、パートナー企業が地方で展示会に出た場合、ユニラボで扱うロボットシステムを貸し出すことができる。これで、今まで接点がなかった全国のお客さまにもわが社のシステムを提案できる」と意気込む。
(ロボットダイジェスト編集部 平川一理)
〔担当記者より〕
ユニラボでは他社のロボットショールームに先駆けて、ヒューマノイドの歩行デモの見学や動作テストができる。安藤副本部長は「現状ではヒューマノイドに見て触れて体験できるショールームはあまりない」と胸を張る。記者もアトムのデモを間近で見学して、その一挙一動に思わず見入ってしまった。ヒューマノイドの活用方法はまだまだ未知数だ。今後導入を検討している人も、まずは見てみたいと思う人もぜひユニラボを訪ねてみてほしい。

