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2021.05.26

[特集FOOMA JAPAN2021 vol.5]システムに食品ならではのノウハウ、新製品3つを出展の目玉に/オーエムシー

オーエムシー(OMC、名古屋市中区、尾上稔社長)は今回のFOOMA JAPAN(国際食品工業展)2021で、ロボットを使った開袋(かいたい)機とドラム缶ハンド、一斗(と)缶吸引システムの3つの新製品を出展の目玉に据える。分解洗浄のしやすさや、異物混入リスクの低減など、食品向けシステムならではのノウハウを盛り込み、人海戦術に頼りがちだった作業の自動化を提案する。

なぜ今も人海戦術?

 開袋機とは、セメント袋のような紙製の袋やコーヒー豆などを入れる麻袋など、袋物を切断して開封し、中身を取り出し次工程に送る機械。食品業界ではこうした袋や、ドラム缶や一斗缶のような容器に入れた原材料が食品メーカーに納入される。

 原材料が入った袋や容器から製造ラインに投入するのは、これまで人の手に頼ることが多かった。なぜ今も人海戦術なのか?

「食品の原材料の袋や容器は規格がバラバラ」と説明する野村英人部長

 「原材料、あるいはメーカーによって、袋や容器の規格がバラバラだからです」

 こう語るのは同社ファシリティ事業部の野村英人部長だ。これまで誰もが知る大手の食品や飲料メーカーの他、医薬品メーカーの工場などでも産業用ロボットを使った自動化の実績を持つ。

 野村部長は「業界間の商慣行や力関係によるところも大きい」と話す。大量の原材料を製造するメーカーにとり、誰もが知る大手食品メーカーでさえ数ある取引先の1つ。知名度の高い食品メーカーでさえ、原材料メーカーに対し「容器の規格統一を」と要望できる関係ではないという。

原材料ごとに違う袋や缶

ロボットを使った新開発の開袋機

 このためOMCは、ロボットを使った開袋機とドラム缶ハンド、一斗缶などの小型容器の内容物吸引システムの3つの新製品を展示の目玉に据えた。

 例えば袋入りの原材料の場合、原材料ごとに袋の大きさや重量が違う。さらに、投入する原材料が変わるたびに、使用する機器や容器の洗浄、乾燥やふき取り作業が求められる。機構が複雑な専用機では、洗い残しや乾燥不良が起き、雑菌の発生や増殖の恐れがあるため自動化が進まなかった。

 OMCは、開袋機へのハンドリングに産業用ロボットを採用した。ロボットが袋の両端をつかんで開袋機の上に運ぶ。両端をつかんだまま、上向きに固定した包丁のような固定刃や回転刃の上に、袋をゆっくりと下げていく。袋の重みで刃物が袋の中央部を開封すると、中の原材料が製造ラインなどに投入される仕組みだ。中身を出した空の袋は、廃棄する工程に回す。ロボットを使えば、ハンドの交換だけで、別の原材料の開袋作業に移れる。原材料を受けるホッパー部分などにも改良を加え、開袋作業後はふたをして洗浄もできる。

3つの新製品を目玉にしたOMCの展示ブース

 ドラム缶ハンドや一斗缶吸引システムも同様だ。原材料ごとに、ドラム缶や一斗缶の規格が違う。ドラム缶の厚みは、国内ならJIS(日本工業規格)で統一されているが、海外で製造された輸入品の場合は規格が違ったり、規格があってもその通りになっていない場合すらある。

 「JIS規格品のドラム缶と同じ力でロボットハンドでつかめば、缶をゆがめて変形させ、缶をつぶしてしまう可能性もある。最悪の場合は、食品への異物混入を招く恐れも」(野村部長)という。
 
 ロボットを導入すれば、原材料ごとに違う缶の種類を見極め、缶に合わせた力でハンドリング作業をさせられる。缶の外観が違えば、缶に取り付けられた穴やキャップの位置もさまざま。吸引システムにロボットを導入すれば、視覚センサーで缶ごとに違う穴の位置を見極め、穴にノズルを差し込んで、中身の原料を吸引できる。

安全性を最重視

 食品業界特有の難しさは、清潔さを保つこと。ロボット本体やロボットハンドなどの周辺機器の清潔さはもちろん、定期的な分解洗浄も必要なため、洗浄性の高さも求められる。

「安全性を重視する」と野村英人部長

 洗いやすくするため、全ての機器の端や角の部分はRを付けた曲面に仕上がっている。レンチ1本、もしくは工具レスで全てを分解し、洗浄、乾燥させた後、素早く組み立てられなくてはならない。異物混入を防ぐため、もし部品やネジが緩んだとしても、落下しない工夫もされている。
 機器の設計には、そうした細やかな配慮が求められる。

 また、原材料入りの容器と、原料を流し込む製造ライン側の容器が直接触れないよう、すき間を開けて原材料を注ぎ込むなど、自動化システムには食品業界ならではのノウハウが盛り込まれている。

 容器同士が触れるのは、容器自体の変形や、容器に取り付けられた部品やその破片などが、製造ラインに混入するリスクを意味する。その場合、食品業界では全量回収しなければ、メーカーの安全責任が問われることになる。

 「スピードはもちろん、安全性を最重視したい」(野村部長)という。

(ロボットダイジェスト編集部 長谷川 仁)


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