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2021.05.25

[特集FOOMA JAPAN2021 vol.4]包装での産ロボの用途が、10年で一変/大森機械工業

食品や日用品、医薬品などを包装する各種自動包装機を製造、販売する大森機械工業(埼玉県越谷市、大森利夫社長)は、包装工程全体のシステム構築も手掛ける。産業用ロボットを駆使した包装ラインの構築実績も豊富だ。R&D推進室でロボットシステムの開発を担う山中幸弘チーフは「最終工程で使われることが多かったロボットが、だんだんと前の工程で使われるようになった」と、食品業界の最近の傾向を明かす。その背景とは。

自動化案件の大半はロボット必須に

埼玉県越谷市にある本社

 大森機械工業は包装機械業界で国内屈指の事業規模と技術力を持つ。食品などを袋詰めするピロー包装機や真空パックで包装する真空包装機から、一度包装した物を容器や小箱、段ボールに詰める機械、段ボールを搬送する機械まで幅広く手掛ける。
 同社は機械の豊富なラインアップを背景に、包装工程の全体システムの提案を最も得意とする。包装の実作業を担う包装機だけでなく、その間で対象物を搬送するコンベヤーなども組み合わせて、一貫した包装ラインを数多く構築してきた。

 包装工程では以前から、単純作業の低減や作業品質の安定などの観点で自動化や省人化のニーズが高かった。ただ、この10年ほどで顧客の要求が変わりつつある。

この10年で、産業用ロボットの使い方が大きく変わった」と話すR&D推進室の山中幸弘チーフ

 従来、メンテナンス作業への不安などから、顧客はロボットを使わない包装ラインを好んだ。同社は、重力や慣性を使ったからくり装置や、モーター制御で稼働する機器を駆使したラインを提案した。
 それが、世間一般にロボットの活用が広がり、食品業界の顧客にもロボットの知識が広まったことで一変。最近ではロボットを使う前提の案件が増えている。

 山中チーフは「10年前は『自動化ライン』と称するものでも、ロボットを組み込んだシステムは1割にも満たなかった。今では本当に多くの案件でロボットを使う」と明かす。

FOOMA JAPANでは、自社開発のロボットを展示

パレタイズ用ロボット「キューブパレタイザー」

 今回のFOOMA JAPAN(国際食品工業展)では、食品工場ならではの課題に対応した自社開発のロボット「キューブパレタイザー」を展示する。段ボールを荷役台(パレット)に載せるパレタイズ作業に特化したロボットだ。

 食品業界は中小規模のメーカーも多く、工場内のスペースが限られる。包装工程の最後のパレタイズ作業で使えるスペースはわずか。パレタイズは単純で力の要る作業にも関わらず、顧客は設置スペースの問題で産業用ロボットを導入できないことが多かった。また、ロボット関連の知識を持つオペレーターの少なさも課題だ。
 そこで、設置スペースを抑えられる箱型のロボットを開発した。パレット上部に直交軸を配置して段ボールを搬送する。部品点数を減らし、汎用的な直交軸などの要素部品を使うことで、ロボットの扱いに不慣れな人でもメンテナンスをしやすい構造にした。

加工食品は多品種少量生産に

包装された対象物を5つまとめて小箱に納めるロボットシステム

 今回のFOOMA JAPANでも自動化を提案するパレタイズ作業は包装作業全体で見ると、最終盤の工程にあたる。同作業では、従来からロボットを使う例が多かった。

 以前はそれ以外の作業でロボットを使うことは多くなかったが、今では状況が変わったという。「産業用ロボットの用途が多様化している。工程内の作業の大半で、何かしらの形でロボットを使うようになった」(山中チーフ)。
 一度包装した複数の対象物をまとめて、その上から二度目の包装をしたり、箱詰めする例は少なくない。食品そのものをロボットで扱う案件も増えている。

 その背景には、食品業界のトレンドの変化がある。
 社会やライフスタイルの変化で、加工食品の市場が拡大している。食品メーカーは個人の趣味や好みに合うように製品開発に注力し、種類が増えた。包装作業で扱う製品の種類は増えたが、一種類あたりの生産数は減少。加工食品は、少量多品種生産へと移り変わった。

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