[特集FOOMA JAPAN2021 vol.7] 搬送システムを包装や充てんのラインに/ベッコフオートメーション
自動化や個別包装のニーズ
ベッコフオートメーションはパソコンベースの制御技術を得意とし、産業用パソコン(IPC)やサーボドライブシステム、リアルタイム制御ソフトウエア「TwinCAT(ツインキャット)」、高速搬送システムなどの多種多様な製品を開発、製造、販売する。
また、トヨタ自動車が2016年に全面採用を決めた産業用オープンネットワーク「EtherCAT(イーサキャット)」の開発元としても知られる。
食品業界向けでは特に、高速搬送システムの提案に力を注ぐ。主に食品を包装するラインや、ペットボトルなどに液体を充てんするラインに組み込むシステムだ。
日本法人の川野社長は「食品工場内での新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、食品業界では全世界で自動化ニーズが急速に拡大している。また、日本では昔から『個別包装』が重視されてきたが、コロナ禍で食品衛生に対する認識が高まり、最近は全世界で個別包装の需要も増加した」と足元の動向を語る。
6自由度の「空飛ぶじゅうたん」
こうした自動化や個別包装のニーズに応える旗艦商品が、13年に発売したリニア搬送システム「XTS」だ。コイルが敷かれた搬送用のガイドレールと、磁石板が埋め込まれた可動子(ムーバー)で構成され、磁気浮上の原理によってムーバーは宙に浮いた状態でガイドレール上を移動する。
最大の特徴は、ガイドレール上を周回する複数のムーバーを個別に制御できること。
川野社長は「従来の搬送システムは1つのモーターだけで制御するため、モーターを高速で回転させればシステム全体も加速し、モーターの回転が止まればシステム全体の稼働もストップする。一方、XTSはそれぞれのムーバーをゆっくり動かしたり高速移動させたりでき、非常に柔軟性の高いラインを構築できる」と強調する。
包装や充てんのラインでは通常、搬送システムが包装エリアや充てんノズルまで対象物を運び、包装や液体の充てんをして、搬送システムが次工程に対象物を移動させる。包装や充てんをする間は、搬送システムが停止していることが多い。
これに対し、同社のXTSは包装や充てんの速度に合わせて個々のムーバーの動きを制御できるため、搬送システムを止めることなく包装や充てんができ、生産効率を高められる。また、充てん機のノズルの一部がもし壊れても、XTSを使えば故障したノズルだけを避ける形でペットボトルやビンを搬送でき、修理復旧のためにラインを停めなくても生産を持続できる。
XTSは柔軟性に優れたラインを構築できるのが強みだが、それでもムーバーはガイドレールの軌道上しか動けなかった。
そこで同社は、XTSからさらに自由度を高めた次世代のガイドレス浮遊搬送システムとして「エクスプラナー」を開発し、20年に発売した。日本では今年販売を始めたばかりで、食品業界への本格的な提案はこれからだ。
エクスプラナーはコイルが敷かれたタイルと、永久磁石が埋め込まれたムーバーで構成される。XTSと同じく磁気浮上の原理を採用し、ムーバーがタイル上を「空飛ぶじゅうたん」のように自由自在に動き回る。
XTSとの最大の違いは自由度の高さにある。ムーバーは6自由度を持つため、平面や上下方向の移動に加え、回転や傾斜も可能。また、導入先の現場に合わせてタイルを配置でき、搬送システムのレイアウトも柔軟に構築できる。XTSでは分岐点を作らないとできなかった、ムーバーの追い越しや待機、退避がどこでも可能となった。