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2020.03.26

連載

[沖縄ウィークvol.4]連携プレーで県内企業を支援/内閣府沖縄総合事務局・沖縄県

沖縄県の自動化ニーズの現況を1週間にわたり紹介する「沖縄ウィーク」。4日目は、内閣府沖縄総合事務局(沖総局)と沖縄県をはじめとした行政機関の動向を取り上げる。共通項は「連携」で、両者とも業界団体などを巻き込んだ連携プレーで県内企業を支援する。今回はその取り組みに加え、2020年1月28日と29日の2日間にわたり沖縄県うるま市の沖縄県工業技術センターで開催された「沖縄モノづくり技術展2019」の概要も紹介する。

労働生産性は全国最下位

「生産性を高めるにはITだけではなく、ロボットの導入も必要」と語る沖総局の新崎治彦課長補佐

 内閣府沖縄総合事務局(沖総局)は、沖縄県が1972年に本土復帰したのを機に設立された国の出先機関だ。沖縄県の振興・開発を一元的、そして効率的に進めるため、沖総局には経済産業省や農林水産省、国土交通省など沖縄県の経済振興に関係する各省庁の地方支部分局が含まれ、その機能は広範にわたる。

 沖縄県が抱える問題の一つに、労働生産性の低さが挙げられる。総務省統計局が実施した「2016年経済センサス活動調査」によると、沖縄県の労働生産性は全国最下位だった。
 また、沖縄でも人手不足が進んでおり、沖総局経済産業部地域経済課の新崎(あらさき)治彦課長補佐は「製造業をはじめ、どこの企業に行っても『人がいない』と言われる」と現状を話す。この人手不足に対し、沖縄県では現在、IT技術を生かして業務の効率化や省人化を目指す動きが活発で、県内のIT産業の需要が拡大している。
 新崎課長補佐は「製造業などの生産性を高めるにはITだけではなく、ロボットの導入も必要」と認識する。

コンソーシアムで連携強化

「沖縄IT活用推進コンソーシアム」(仮称)の概要(沖総局提供)

 しかし、沖縄県の製造業などの企業は「ITシステムを導入したい」「ロボットを導入したい」と思っても、誰に相談すればいいのか分からないケースが多いという。また、沖縄県のIT産業は大都市圏の企業からの下請け、孫請けが基本となっており、元請けとして県内の仕事を受注することが少ないのも大きな課題だ。
 「IT産業は集積しているが、県内ではIT導入が進んでいない」と新崎課長補佐は分析する。
 
 沖総局では2017年から沖縄労働局や沖縄県、業界団体を巻き込み、「働き方改革・生産性推進運動」を推進する。ガイドブックを作成し、県内企業の労働生産性を高めるため、各種支援機関と一緒にIT技術の導入を支援する考えだ。各支援機関の専門家を合計すると、2000人を超える規模になる。

 その一環で、ITコンサルタントの業界団体「ITコーディネータ(ITC)沖縄」では、19年9月にNPO法人化したことを契機に、19年12月17日に県内の4つの金融機関と連携協定を結んだ。ITC沖縄とは、経済産業省が推進する民間資格「ITコーディネータ」を取得し、沖縄県内で活動するITコンサルタントが所属するNPO法人だ。
 「金融機関は企業の経営課題は把握しているが、それらがどのような手法で解決できるかを十分に理解できていない。ITC沖縄と金融機関が連携することで、課題解決の糸口としてIT導入を促進できる。さらに、金融機関とITC沖縄がプッシュ型で企業を支援することで、県内のIT産業が下請け構造から脱却する一助にもなる」と新崎課長補佐は説明する。

沖総局が作成を進める「連携主体リスト」(提供)

 沖総局は、IT技術の導入を皮切りに県内企業の労働生産性の向上を目指すが、ITだけでは解決できない課題を抱える企業も多い。そこで次のステップとして、金融機関とITC沖縄の連携の枠組みをさらに広げ、21年度から「沖縄IT活用推進コンソーシアム」(仮称)を立ち上げる計画だ。

 コンソーシアムでは、ITC沖縄をはじめ、IT技術などを駆使して産業振興を目指す団体「沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)」や県内の製造業を支援する団体「ものづくりネットワーク沖縄」などのさまざまな団体が連携し、ITだけではなくモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、ロボットなどの導入をプッシュ型で支援する。連携を通して、労働生産性の改善や人手不足の課題解決に取り組む考えだ。

 ロボットの導入に関しては、システムインテグレーター(SIer)や金融機関などの情報を一覧化した「連携主体リスト」の作成を進めている。
 新崎課長補佐は「沖縄県に営業所を持つSIerやロボット関連企業を少しでも増やしたい。沖縄県は市場が小さいが、例えばアジア市場を開拓する目的で地理的に近い沖縄県に拠点を設置してもらい、その中で県内の企業の自動化も支援してもらえれば」と話す。

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