[特別企画 密着! 高校生ロボットSIリーグvol.5]システム構想を煮詰め、トラブル対応に追われ/愛知総合工科高校
「第4回高校生ロボットシステムインテグレーション競技会(高校生ロボットSIリーグ)」が今年12月13日と14日の2日間、愛知県常滑市の展示会場「Aichi Sky Expo(アイチ・スカイ・エキスポ、愛知県国際展示場)」で開かれる。ロボットダイジェストでは「特別企画」として、前回大会のチャンピオン校(最優秀賞受賞校)である愛知総合工科高校が今年の第4回大会に挑む様子に密着する。現在進行中の取り組みを追いかけるため、結末は記者にも分からない。今回も課外授業に密着した。チームメンバーはシステム構想について検討したり、トラブルに対応したりと、慌ただしい雰囲気だった。
【前回までのあらすじ】
高校生ロボットSIリーグの競技課題に取り組む「課外授業」に初めて密着した。サポーターのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の説明を真剣に聞く6人のチームメンバーを間近で見て、記者は率直に「頼もしいな」と感心した。チームの目標も明確で、「連覇」を目指すという。
自然と実習室まで
夏本番を迎えた7月初旬。この日の課外授業もサポーターのSIerと顔を合わせると事前に聞いていたため、記者も愛知総合工科高校を訪問した。
前回同様、事務室で受け付けを済ませ、第4回大会で使用するロボットシステムが設置された実習室に向かう。これまでに何度か足を運んできたからか、誰かに案内されなくても自然と実習室までたどり着くようになっていた。
「今日は生徒一人一人ともっとコミュニケーションを取れるかな」などと考えながら実習室に入ると、サポーターを務めるTECHNO REACH(テクノリーチ、愛知県長久手市、加藤正己社長)と石川工機(名古屋市天白区、石川利行社長)の2社の関係者らが先に到着していた。「暑いですね」と軽く世間話をしながら、授業開始のチャイムを待った。
吸着ハンドを装着
今回の課外授業では6人のチームメンバーのうち、垣見勇我さん、加藤健真さん、白井覚基さん、田中優奈さんの4人がロボットシステムの設計を担当した。一方、チームのキャプテンを務める谷口斗絆さんと中村隼斗さんの2人は、ロボットシステムを制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)周りを担当した。PLC関連の講師は前回同様、愛知総合工科高校のOBでもあるテクノリーチの嶋本玲央茉さんが務めた。
課外授業が始まって早々、ロボットシステムの周囲が慌ただしくなった。設計チームの4人は「ペットボトルの搬送に吸着ハンドを使いたい」と考えたようで、ロボットに吸着ハンドを装着する必要があったのだ。
そのため、テクノリーチや石川工機の関係者らは吸着ハンドが使用できるよう、まずはロボットシステムの調整作業から取り掛かった。その間、4人はホワイトボードの前でシステム構想について議論していた。
彼らに話を聞き、現状のシステム構想については何となく把握できた。
傾斜を備えた専用の供給棚を作り、何らかの手段で金属ボトルとペットボトルを分別し、ペットボトルのみを一番下まで転がす。そのペットボトルをロボットが吸着して逆さにし、これまた何らかの手段でキャップを開け、飲料に見立てたビーズとキャップを真下に落とす。そして、指定の分別ボックスにペットボトルを入れることでポイントを稼ぐ作戦だという。
彼らは既に供給棚を段ボール箱で試作していた。また、ちょうど装着作業が完了したばかりの吸着ハンドを使って実際にペットボトルをつかみ、どうやってキャップを開けるかを模索していた。
記者「生徒たちの構想はプロの目から見ていかがですか?」
テクノリーチの水野隆宏取締役「ビジネス目線だと、リスク管理のために『現実的にできないこと』から先に考えがちです。しかし、彼らはそうではない。まだまだ課題はありますが、高校生ならではの自由な発想がとても面白いです」
表示器の画面がブラックアウト
だが、このトラブルを処理するのに時間を割かれ、本来やるべき作業が後手に回ってしまったという。「PLCのラダープログラムの作成は正直、前回の課外授業からあまり進んでいませんでした。トラブルがあったため仕方ない部分も多少ありますが、表示器を使わなくてもできることはあったはずです」(嶋本さん)と手厳しい。
記者もすっかり忘れていたが、チームメンバーの6人は7月下旬から夏休みに入る。学生の夏休みは長い(うらやましい…)ため、サポーターと次に顔を合わせるのは9月中旬になる予定だ。
彼らは夏休みも定期的に学校に来るそうだが、サポーターとの次の顔合わせまでにシステム構想をどこまで煮詰め、ラダープログラムの作成をどこまで進められるのか――。
――vol.6へ続く
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)