生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.10.07

連載

[SIerを訪ねてvol.17]おいしさを生む自動化/なんつね

全国のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)を紹介する本連載。今回取材したなんつね(大阪府藤井寺市、南常之社長)は、三品(食品、医薬品、化粧品)産業の一角、食品業界で自動化を提案するSIerだ。祖業は食品加工機械の製造だが、食品の加工法や機械に関するノウハウを生かし、エンジニアリング事業にも力を入れる。直交3軸を制御してものをつかんだり、運んだりする装置を広くロボットと捉え、従来人手に頼ることの多かった食品工場の省人化や無人化に貢献する。南社長は「単純な生産性だけでなく、おいしさという数値化できない側面を求められるのが、食品業界の面白さであり難しいところ」と話す。

エンジニアリング事業に注力

 なんつねは、食品加工機械の開発、製造を含むテクノロジー事業と、食品工場のエンジニアリングをするエンジニアリング事業、小売店などの食品加工を支援するコンサルティング事業の3事業を展開する。
 同社ではエンジニアリング事業部門がSIer機能を担う。R&D本部が開発する機械の要素技術をベースに、テクノロジー事業で培った食品加工機械の開発技術や食品加工のノウハウも生かし、食品工場のエンジニアリングをラインや工場単位で請け負う。

「将来的にはエンジニアリング事業の海外展開にも力を入れたい」と話す南社長

 「本当に顧客が求めているのは、機械そのものではなく、商品を作るために必要な手段だ」と語る南常之社長。商品から逆算して工場やライン、機械を提供すべきと考え、事業を立ち上げた。
 「エンジニアリング事業は、主力のテクノロジー事業やコンサルティング事業を発展させるハブの役割になると、大いに期待している」と話す。

大阪府藤井寺市にある本社工場

 顧客の商品を起点に設備を検討するには、商品の作り方や工場について深い知識が必要だ。そのためエンジニアリング事業に直接携わる6人の技術者の中には、工場長クラスの人材が複数いる。
 「彼らはお客さまと意気投合することも多い。最近まで食品工場に勤めていた人が機械やエンジニアリングの知見を得て、お客さまに提案しているのだから当然と言えば当然。今は、彼らベテランが活躍しつつ、若手を指導する構図になっている」と南社長。

 「今ある現場を改善するだけのエンジニアリングではなく、常識を根本から覆すぐらいの発想を持たなければならない。そのためにも、若手社員にはお客さまの現場を深く知ってほしい」と力を込める。

ミートスライサーで業界屈指のメーカーに

 同社を1925年に設立した南常治郎初代社長は、腕利きの刃物職人だった。その技術を生かし、29年に食肉を薄切りするミートスライサーの製造、販売を開始した。以来、ミートスライサーは同社の主力製品として進化し、定量で切るタイプや冷凍肉用、ハムなどの加工肉用など、ラインアップを拡充してきた。

 ミートスライサーを始め、刃物へのこだわりは製品の強みの一つだ。とはいえ、ミートスライサー単品で使う顧客は少なく、多くの場合は加熱処理やパック詰めなどの工程がある。同社には、そういった前後のラインを手掛けてきた実績がノウハウとして蓄積されている。そこには、食品を搬送するコンベヤーやからくり、ロボットも含まれる。

 同社では産業用ロボットメーカーの製品だけでなく、自社開発した直交3軸制御の自動化装置もロボットと定義する。R&D本部が開発し、機械内部や周辺設備で活用を進めている。

  • 毎分最大320枚の処理能力を持つミートスライサー

  • 本社には歴代のミートスライサーの展示室もある

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