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2019.06.18

インタビュー

満を持して登場!三菱電機が協働専用ロボ、2019iREX出展後に発売も【後編】/三菱電機 武原純二ロボット製造部長

三菱電機が満を持して、「人との協働専用ロボット」を発売する。現在開発中の人協働専用ロボットでは、人が触れるのを前提にロボット本体をデザインし、指や手が挟まれないよう工夫した。アームに取り付けたボタンを押しながら手で直接アームを動かして動作を覚えさせられるなど、協働ロボとしての完成度をより高めた。LEDライトの色で、ロボットが「動作中」なのか「待機中」なのかも判別できる。今年12月に東京で開催される「2019国際ロボット展(iREX)」に出展し、2019年度後半に発売する予定だ。前回に続き、三菱電機でロボットを製造する名古屋製作所で武原純二ロボット製造部長に話を聞いた。

名古屋製作所ならではの技術

三菱電機が開発中の「協働専用ロボット」の試作機(三菱電機提供)

――三菱電機が発表する協働ロボットの特徴は?
 基本コンセプトは、17年の国際ロボット展に出展した試作機と変わりません。人が触るのを前提に、とがっていない丸みを帯びたデザインにし、手や腕が挟まれないよう関節周りにすき間を持たせた構造にしています。ロボットがどんな状態なのか? 電源が入っているか? 自動運転中なのかどうか、LEDライトの色で識別できるようにしています。ロボットに動作を覚えさせるティーチング作業も簡単で、アームに取り付けたティーチボタンを押して、ロボットを直接動かして「ティーチ」とすれば位置を覚えます。今までロボットが使われていない所でいかに使いやすくするか、導入しやすくするか、そして現場の人が使えるのをポイントにしました。

――製品化に至る難しさは何ですか?
 基本的に、ロボットにつきものなのはユーザーの安全性の確保です。安全対策を規定するISO10218や他の規格にも適合するかどうかを検証する作業です。人と接触した時に力はどのぐらいかかるか、力加減をいかにコントロールするかなどが技術的なポイントです。ロボットを製造する三菱電機名古屋製作所はサーボモーターも作っています。サーボモーターの制御でいかに感度良く、人との接触を検知するか。名古屋製作所ならではの技術です。

技術者でなくても、誰でも簡単に

「人手不足を解消したい、単純作業を自動化したいと考える全ての人が手軽に使えるよう導入の障壁を下げたい」と話す武原純二ロボット製造部長

――他社製の協働ロボットとの違い、あるいは強みは何ですか?
 当社の協働専用ロボットでは、ペンダントという操作盤を使う代わりに、人がアームを持って直接操作して動作を教え込むことができます。もしロボットが停止した場合でも、直接ロボットを持ちあげて移動して退避させることもできるなど、現場で直接ロボットを扱えます。ロボットについて学んだ技術者でなくても、誰でも簡単に操作したい、もっと省スペースで簡単に設置したいとのニーズが高まっています。ティーチング作業もスマートフォンを操作するように、例えばロボットハンドを開く、閉じるなどの動作がアイコンにあり、直感的で感覚的に意味が分かり、使えるような要素を入れてあります。

――協働ロボット市場の高まりは感じますか?
 今までロボットを使ったことがない、食品や医薬品など、自動化が進んでいなかった業界がロボットを求めるようになったと思います。最近は農業でも需要があります。急速ではありませんが、ロボットが世間に知れ渡るうちに、需要は徐々に高くなってきた印象です。

――一般の人にはロボットが一体どんなもので、どう使えるのかが理解されていないと?
 大手の製造業なら、会社にいる生産技術部門の技術者が対応してくれますが、技術者が少ない中小企業では、なかなか導入しづらい。ロボットの操作やティーチングの作業、安全対策などを含めたリスクアセスメント(危険性や有害性の特定)の難しさなどが導入の障壁になっていると思います。「簡単で」「安全で」とのニーズに応えられるのが協働ロボットです。人海戦術で対応している中小企業の現場でも導入しやすく、導入したいとのニーズもあると確信しています。ロボットを導入して人手不足を解消したい、単純作業を自動化したいと考える全ての人が手軽に使えるよう、導入の障壁を下げたいと考えます。

――これまで産業用ロボットを使わなかった人が使い始める。ロボットメーカーにデメリットはありませんか?
 今までロボットを使っていない現場での、比較的シンプルな作業をさせるのを前提にして、プログラム方法も簡単にしています。最終的に顧客がもっと細かい作業や、もっと高度な作業、もっと素早い動作を求めるようになれば、協働ロボットの機能や性能を高める必要が出てくるかもしれません。顧客が求める最終ニーズと、どこまで合致できるか? 協働ロボットは、まだまだ導入期です。われわれの開発も、ユーザーのニーズを探りながら進めています。

――終わり
(聞き手・ロボットダイジェスト編集部 長谷川仁)



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