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2019.06.12

イベント

「私、重い部品も持てます」、力持ちなヒト型の双腕協働ロボット/東芝機械ソリューションフェア2019

東芝機械が双腕型の協働ロボットの開発を進めている。5月23日~25日に開催したプライベートショー「第17回東芝機械グループソリューションフェア2019」に開発中の双腕型協働ロボット2機種を参考出展し、大きな注目を集めた。双腕型の協働ロボットはロボットメーカー数社がすでに製品化しているが、東芝機械が開発するロボットは他の製品よりも可搬質量が大きい。製品化されれば、双腕型協働ロボットの新たな用途開拓につながりそうだ。

過去最多の昨年を1000人上回る来場者

大型の金属3Dプリンターにも人だかり(東芝機械提供)

 東芝機械は2009年以降、ソリューションフェアを毎年春に開催する。今年のテーマは「新たな未来への飛躍」。会場は静岡県沼津市の本社工場と同御殿場市の御殿場工場の2カ所で、3日間で過去最多の7983人が来場した。

 樹脂製品を生産する射出成形機や、鋳造機の一種であるダイカストマシン、金属を削る工作機械、産業用ロボットなど多数を展示した。
 総合機械メーカーとして幅広い製品群を持つ同社の中でも、「旺盛な自動化ニーズを背景に、産業用ロボットは注力分野の一つ」と八木正幸専務は明かす。

一つは“腰が折れる”ロボット

双腕型協働ロボットが注目を集めた(東芝機械提供)

 産業用ロボットで注目を集めたのが、2種類の双腕型協働ロボットだ。
 一つはヒト型で、人間で言う腰のあたりにも関節を持ち、前かがみの姿勢を取れる。片腕7軸ずつの14軸と腰の2軸を合わせ、全16軸の自由度を持つ。
 片腕6kg、両腕10kgと、双腕型としては大きい可搬質量が特徴だ。

腰のあたりにも関節があり、動作の自由度が高い(東芝機械提供)

 協働ロボットは人間の近くで作業をする前提のため、出力を高められず、可搬質量の小さな製品が多い。特に双腕型の協働ロボットは0.5~3kg可搬のものが大半で、小型の電子機器の組み立てなどに用途が限られていた。しかし、「より重い物が扱えればとのニーズはあった。そのため、可搬質量の大きな機種を開発している」(担当者)と言う。

 双腕型のため両手を駆使して、従来の垂直多関節ロボットよりも複雑な組み立て作業ができる。可搬質量が大きいため、金属部品も扱いやすい。
 動きの自由度が高い分、動作を入力するティーチングが難しくはなるが、作業者の負担を軽くするために直感的に扱える専用のソフトウエアも合わせて開発している。

もう一つはスカラをベースに

大型のスカラロボット2台を搭載したような見た目(東芝機械提供)

 もう一機種は、同社が得意な水平多関節(スカラ)ロボットをベースにした。大型のスカラロボット2台を搭載したような見た目。可動範囲は水平方向に300mm、垂直方向にも300mmと広い。
 ヒト型同様、片腕6kg、両腕10kg可搬と、双腕型協働ロボットの中では可搬重量が大きい。

 実演ではタブレット型パソコンを箱詰めし、運搬用のケースに入れる作業をした。ロボットハンドを付け替え、運搬用ケースの組み立てや、ケースをコンベヤーに載せる作業もこなす。

 現状では人の接近に反応してロボットの動作を止める人感センサーなどの安全装置を搭載しておらず、厳密には協働ロボットではない。またスカラロボットの良さである動作の速さと、人の近くで作業するための安全性の両立が難しく、今後の課題という。開発担当者は「来年のソリューションフェアには、参考出展ではなく『新製品』として展示できるよう開発を急ぐ」と意気込む。

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